2027年度を目処に日本の国家試験である情報処理技術者試験が大きく再編される見通しです。
特に応用情報技術者試験(AP)と現行の高度区分試験(高度情報処理技術者試験)を統合し、従来の8区分あった高度試験を「マネジメント・監査」「データ・AI」「システム」という3つの大領域に再編する案が提示されています。
結論から言えば、提案されている新しい試験体系に移行しても、学習すべき中核内容は劇的には変わらないと考えられます。
特に「マネジメント・監査領域」については、これまで培ってきたプロジェクト管理・サービス管理やITガバナンス・監査といった知識が引き続き重視される見込みであり、現在の学習戦略をそのまま継続して問題ありません。
本記事では、この制度改革の概要と狙い、新しい3区分フレームワークの詳細、そして受験者への影響と対策について解説します。
特にマネジメント・監査領域に焦点を当て、IT業界のプロの視点から「核心となる学びは今後も不変」である理由を示し、どう学習を進めればよいかを指南します。
また記事の最後では、この領域の学習に役立つ当サイトの関連記事もご紹介しますので、ぜひ今後の学習計画にお役立てください。
提案された改革の背景と目的:なぜ試験制度を見直すのか?
まずは今回の大改革が検討されるに至った背景と目的を押さえておきましょう。
日本の情報処理技術者試験は2009年に現行の区分体制となって以来、大きな変更はありませんでしたが、デジタル社会の急速な進展が新たな人材像を求めています。
経済産業省によれば、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に必要なデータ活用やデジタル技術が進歩し、それに伴い求められるスキルも変化してきたことが見直しの根底にあります。
従来はシステム開発会社(SIer)のエンジニアが主な担い手と想定された試験内容でしたが、これからは「あらゆる業界でデジタル技術を使ってビジネスを変革できる人材」へと対象を広げる方針が鮮明に打ち出されています。
実際、経済産業省の担当者は「SIerのITエンジニアから、全ての事業会社においてデジタル技術でビジネスを変革する人材へ」と試験ターゲットの拡大を明言しています。
この方針転換は、一言でいえば「フルスタック志向」へのシフトです。
現行ではシステムアーキテクトやプロジェクトマネージャなど専門ごとに細分化された試験区分でしたが、刷新後は幅広いデジタルスキルを備えた人材を想定した試験内容に見直されます。
経済産業省の説明によれば、AI技術の高度化により一人の技術者が担える範囲が広がっていること、そしてユーザー企業とITベンダー技術者が協働するDXプロジェクトが増え職種の壁を越えた円滑なコミュニケーションが重要になっていることが、区分再編の狙いとして挙げられています。
要するに、デジタル人材には「専門知識の縦深」だけでなく「領域横断的な広がり」が求められてきたということです。
さらに、試験制度自体をより実践志向型に刷新することで、人材育成全体の底上げを図る意図も読み取れます。
これまでの試験は知識の暗記が中心になりがちでしたが、新制度では知識をどう現場で活用するかまで踏み込んで評価する方向です。
たとえば「この用語の定義は?」といった問題より、「与えられたビジネス課題に対しデータやITを用いてどう解決策を立案するか」といったシナリオ型の設問が増えると考えられています。
このように、DX時代に即した知識体系と実践力評価へシフトするため、約15〜18年ぶりとなる抜本的な試験制度の見直しが検討されているのです。
再編の概要:3つのスキル領域(マネジメント・監査/データ・AI/システム)へ集約
それでは、具体的にどのように試験区分が再編されるのか、現時点で明らかになっている新体系の概要を見ていきましょう。
ポイントは、応用情報技術者試験(AP)と高度区分試験(現行8区分)を統合し直すという点です。
現在は基本情報技術者試験(FE)→応用情報技術者試験(AP)→高度区分(プロマネ・ネットワークなど8種)という流れですが、2027年度からはAPと高度試験を合わせて3つの「スキル領域試験」に再編する案となっています。
- マネジメント・監査領域(仮称) – ITプロジェクトやサービスのマネジメント全般およびITガバナンス・監査に関する領域です。
具体的には、現行の「プロジェクトマネージャ試験」「ITサービスマネージャ試験」「システム監査技術者試験」さらに「ITストラテジスト試験」などで問われていた内容がこの領域に含まれると考えられます。
組織戦略に沿ってプロジェクトを遂行し成果を出す能力、ITを使った経営改革の立案推進力、ITサービスの運用管理やシステム統制・監査の知識など、組織的なIT活用を管理・支援するスキル全般が問われる領域です。 - データ・AI領域(仮称) – データ活用基盤やAI技術にフォーカスした領域です。
例えば「データベーススペシャリスト試験」で扱われた大規模データ管理・設計の知識や、AI・機械学習の活用に必要なスキルセットが含まれるでしょう。
実は今回、これら高度試験の再編とは別に「データマネジメント試験(仮称)」の新設も提案されています。
このデータマネジメント試験はITパスポートの次のステップとして位置づけられ、「企業内のデータを評価・整理し、AI活用可能な状態に管理できる人材」を育成・認定する狙いがあります。
いわば従来なかったデータ管理の専門試験を創設しつつ、高度試験側でもデータサイエンスやAI寄りの知識を一つにまとめていく形です。 - システム領域(仮称) – システムアーキテクチャやネットワーク、開発技術に関する領域です。
現行の「システムアーキテクト試験」「ネットワークスペシャリスト試験」「エンベデッドシステムスペシャリスト試験」など技術系スペシャリストの知識分野がここに集約されます。
システム基盤の設計構築能力、ネットワークやセキュリティの専門知識、組込みシステム開発の知見など、テクノロジーの深い理解と応用力を測る領域と言えるでしょう。
また、新制度では「デザインマネジメント試験(仮称)」の新設も話題に上っています。
デザインマネジメントとは単なるUIデザインではなく、ユーザー体験価値を創出するための設計プロセスに関するスキルです。
これが国家試験区分として設けられる予定で、ITを技術面から支えるだけでなくユーザー視点でサービスを創造できる人材を認定する意図があります。
デザインマネジメント試験がどの領域に属すかは明示されていませんが、エンジニアリングとビジネスの橋渡し的な内容からシステム領域または新設区分として考えられているようです。
以上の3領域はいずれも仮称ではありますが、再編後の試験体系の骨子になるものです。
経済産業省の説明によれば、受験者には「3領域すべての習得」を推奨していく方針とのことです。
つまり最終的にはフルスタックエンジニアを目指し、マネジメントからデータ活用、システム開発まで幅広く習熟してほしいというメッセージでもあります。
ただし現実的には、自身のキャリアや得意分野に応じてまずは一つの領域試験に挑戦し合格するのが基本線でしょう。
その上で他領域にも学習を広げていくことが望ましい、というニュアンスと捉えられます。
注意:今回の再編検討には情報処理安全確保支援士試験(いわゆる登録セキスペ)は含まれていません。
この資格試験は他の情報処理試験と異なり法律に基づく登録制の国家資格であるため、従来通り高度区分とは独立して存続する見込みです。
また基本情報技術者試験(FE)についても、エンジニアの登竜門として位置づけは維持されます。
ただし試験内容はより現場実務に直結する形にアップデートされる可能性があるとも言われています。
一方、ITパスポート試験はデジタル社会のリテラシー試験として引き続き全分野共通の基礎を担いますが、AI時代に合わせてAI倫理やデータマネジメント分野を強化する代わりに、従来のプログラミングなど開発知識部分を削減する方向が示唆されています。
このように、ITパスポート(基礎)→データ/デザイン系新試験(実践)→高度試験(専門)という新たな流れで、より多様な人材が段階的にスキルアップできる体系を目指しているのが今回の改革なのです。
マネジメント・監査領域は何が変わる?:学習テーマは「不変」で「普遍」
改革の全体像を説明しましたが、ここからは本記事の主眼である「マネジメント・監査領域」にフォーカスしてお話しします。
結論でも述べた通り、この領域に関しては学ぶべき内容の本質は今もこれからも大きく変わりません。
むしろプロジェクト管理やITサービス管理、システム監査、ITガバナンスといったテーマは、時代が変わっても普遍的に重要なスキルセットであり続けるでしょう。
現行制度下でも、応用情報技術者試験や高度試験で問われるマネジメント系知識は基本的な考え方が確立されている分野です。
例えばプロジェクトマネジメントであればPMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系)に代表されるベストプラクティスが長年共有されていますし、サービスマネジメントにはITIL、情報システム統制・監査にはCOBITやJIS Q 27000シリーズなど、国内外で標準化されたフレームワークがあります。
これらは時代に合わせて改訂はされるものの、根底にある原理原則(計画→実行→監視→改善のサイクルなど)は不変です。
したがって、新しい試験区分になったとしても「プロジェクトを計画通りに管理遂行する力」「ITサービスを安定運用し品質を維持向上させる力」「リスクを洗い出し統制を利かせる監査・ガバナンスの力」といった能力評価が不要になることは考えにくいのです。
実際、今まさに皆さんが学習している内容は、新制度になっても必ず活きてきます。で指摘されているように、制度が変わっても基盤となる知識の本質は変わらないからです。
たとえば現在プロジェクトマネージャ試験やITストラテジスト試験の勉強をしている方であれば、その学習範囲には応用情報技術者試験相当の広範な知識が含まれています。でも述べられている通り、プロジェクトマネージャ試験の午前Ⅰ・Ⅱや午後Ⅰは下位区分である応用情報試験レベルの知識で対応可能であり、過去問演習を通じて十分合格ラインに達しうる内容です。
裏を返せば、応用情報で問われていたマネジメント・ストラテジ系の知識は高度試験に直結するものであり、新制度のマネジメント領域でも要求される基本知識となるはずです。
ではマネジメント・監査領域の試験で何が新しくなる可能性があるかという点について考えてみましょう。
おそらく出題形式やシナリオ設定がより実践寄りになるくらいで、問われる知識そのものは既存の延長線上にあります。
例えばプロジェクトマネジメントであれば、従来はプロジェクト計画書の作成手順やWBSの細分化手法など定型的な問題も見られましたが、新制度では「プロジェクト遅延の危機に直面したケースでどのように立て直すか」といったシチュエーション問題になるかもしれません。
ITサービス管理でも「サービスレベル管理の指標は?」という知識問題から、「顧客満足度低下を受けたサービス改善策を提案せよ」といった応用問題にシフトする可能性があります。
システム監査についても、「監査人の独立性の定義」といった設問より「クラウドサービス利用時のリスクをどのように統制・監査するか」といったケーススタディ形式が増えるかもしれません。
しかし、これらはあくまで出題の見せ方が変わるだけであって、基礎にある知識や思考プロセスはこれまで通りです。
プロジェクトマネジメント知識体系やITサービス管理の原則、内部統制のフレームワークに沿った考え方を身につけていれば、新傾向の問題にも対応できるでしょう。
むしろ知識を丸暗記するのでなく実務で使える形で理解しているかが試されるため、今のうちから「この知識は現場でどう役立つか」「具体的な事例で言うとどうなるか」を意識して学ぶことが効果的です。
それは現行制度の学習においても有効な勉強法であり、その延長線上に新試験対策も位置付けられるというわけです。
まとめると、マネジメント・監査領域で学ぶべき内容は今後も大きくブレないと断言できます。
多少の時事トピック(例えば最新のDX事例や新しいプロジェクト手法など)が出題文に織り込まれる可能性はありますが、核となる「人・プロセス・技術を統合して価値を生み出す力」を問うという本質は変わりません。
したがって、今皆さんが取り組んでいるテキストや問題集、過去問演習は決して無駄にならないどころか、新制度下でも合格への土台としてそのまま活きるのです。
受験者への影響と今から取るべき対策
次に、この改革が具体的に受験者にとって何を意味するかを整理しましょう。
「制度が変わるなら勉強のやり方も一新しないといけないのでは?」と不安になるかもしれません。
しかしご安心ください。前述の通り学習の継続性は確保されますので、今やっている勉強を止める必要は一切ありません。にもあるように、「制度が変わっても今の学習は必ず新制度でも活かされる」という点は強調しておきたいと思います。
むしろ不確実な移行期を迎える前に現行制度で合格を勝ち取ってしまうことも一つの戦略です。新制度移行時には現行資格保有者に対して何らかの経過措置(新試験の一部科目免除など)が用意される可能性が高いと予想されています。
公式にアナウンスされたものではありませんが、過去の制度改訂でも既存合格者の地位は尊重されてきた経緯があります。
「取れるうちに取っておく」という考え方は理にかなっており、もし受験の準備が整っているなら2026年度中(現行区分最後の年)に合格を目指してしまうのも賢明でしょう。
一方で、2027年度から受験しようと考えている方や、現在学習中で新制度まで長期戦で臨む計画の方もいるでしょう。
その場合でも焦る必要はありません。
2025年中に新シラバス(試験範囲や出題範囲の詳細)が公表予定であり、さらに2026年夏頃に新試験制度の詳細発表が予定されています。
したがって、今後もIPAや経産省から出される公式情報を定期的にチェックしつつ、自分の学習計画を微調整していけば十分間に合います。
2026年度からは試験方式がCBTに移行し、年2回の固定日に全員が受ける形から、一定の実施期間内で各自が受験日を選択できる形式に変わります。
CBT化により試験チャンスの柔軟性が増す一方、試験問題の構成(午前・午後区分など)も一部変更されます。
例えば従来の「午前I・II」「午後I・II」といった区分は「科目A-1/A-2」「科目B-1/B-2」のような新呼称に変わる見込みのようです。
ただ、これも名前が変わるだけで本質的には選択問題(知識)と記述問題(応用)の二本立てという試験構成自体は踏襲されます。したがって、過去問演習や記述問題対策といった王道の学習法は引き続き有効となる可能性が高いです。
要点をまとめると:
- 学習は今のペースで継続しましょう。
制度変更に戸惑って手を止める必要はありません。むしろ現行制度で身につけた知識が新制度で武器になります。
基本的なネットワーク、データベース、プロジェクト管理、セキュリティ・・・そのどれもが新体制でも重要度は変わりません。 - 現行制度での合格を狙える人は狙うのがおすすめです。
2026年度までは現在の区分で試験が実施されます。合格しておけば新制度での科目免除等のメリットを享受できる可能性があります。
特にすでに応用情報や他の高度区分に合格している方は、その知識を活かして別区分に挑戦する好機とも言えます。 - 公式情報のアップデートに注意しましょう。
2025年以降発表されるシラバスや詳細な新試験制度の内容を確認し、自分の受ける予定の試験が具体的にどのように変わるか把握してください。幸いIPAの公式サイトやプレスリリースで随時情報提供が行われる予定です。
それらをウォッチしつつ、自分の学習計画を必要に応じて調整していけば安心です。
繰り返しになりますが、「土台となる力」は試験制度がどう変わっても通用します。
不安に思う気持ちはもっともですが、培った知識と思考力は決して裏切りません。むしろ制度改革を自身のスキルを幅広く見直すチャンスと捉え、前向きに学習を続けてください。
マネジメント・監査領域の学習のススメ
最後に、マネジメント・監査領域の学習を進める上で参考になるリソースとして、当サイト「共働き夫婦のリスキリング奮闘記」の関連記事をご紹介します。
実はこの領域に関しては既に当サイトで詳しく取り上げており、現在の高度試験区分である「プロジェクトマネージャ試験」や「ITストラテジスト試験」の対策記事がそのまま新制度での学習にも役立ちます。
これらの記事では、試験合格に必要な知識やスキルを身につけるための良書を厳選し紹介しています。
それぞれマネジメント・監査領域の主要テーマを網羅していますので、ぜひ今後の学習に活用してください。
『プロジェクトマネージャ試験を独学で攻略するために読んでおくべき本9選』
情報処理技術者試験の高度区分の一つであるプロジェクトマネージャ試験について、合格に役立った書籍をレコメンドしています。
プロジェクトマネージャとは何かから始まり、試験区分ごとの午前・午後対策、そして難関である午後II論述対策まで詳しく解説しています。
プロジェクト管理の基礎知識だけでなく、論述試験で高得点を取るための思考法や文章構成法(例:「ステップ法」など)も紹介されており、マネジメント領域全般のスキルアップに役立つ内容です。

『ITストラテジスト試験を独学で攻略するために読んでおくべき本9選』
現行制度で最難関と言われることもあるITストラテジスト試験について、戦略立案系の知識習得に有用な書籍をまとめています。
ITストラテジストとは何かの定義に始まり、午前〜午後II試験の特徴や攻略法を整理しています。
経営戦略の基本から最新IT動向まで幅広い知識が要求される試験ですが、記事内ではそれらを効率よく学べる良書と学び方のポイントを提示しています。
ITによるビジネス改革推進というマネジメント・監査領域の肝となる視点を養う上で、この内容は新制度下でも大いに活きるでしょう。

これら2つの記事で取り上げているテーマ(プロジェクトマネジメント手法、ITサービス管理、経営戦略立案、ITガバナンスなど)は、まさに新しいマネジメント・監査領域試験でも問われるであろう核心分野です。
ぜひ興味のある部分から読んでみてください。
各記事で紹介されている書籍に取り組むことで、実務にも直結する知識と思考法を身につけることができます。
それはそのまま新試験への備えとなり、ひいては皆さんのキャリアにおける大きな財産となるはずです。
おわりに:変化を恐れず、地に足の着いた学習を
2027年度からの情報処理技術者試験制度再編は、多くの受験者にとって気になるニュースでしょう。
未知の形式や新区分に不安を覚えるのは当然ですが、ここまで述べてきたように、学ぶべき土台は揺らぎません。
むしろ、この改革は自分のスキル領域を広げる絶好の機会と捉えてください。
これまで培った知識に新しい知見を上乗せし、より厚みのある実力を養うことができます。
大切なのは、今この時点で何をすべきかブレないことです。
制度変更の動向を把握しつつも、目の前の学習計画を着実に遂行してください。
定期的に公式発表を確認し、必要に応じて軌道修正を図れば怖れることはありません。
CBT導入によって受験環境も柔軟になりますから、自分のペースで実力を試すチャンスも増えるでしょう。
最後にもう一度。
試験制度がどう変わろうとも、あなたの積み重ねた努力は決して無駄になりません。で示された言葉の通り、今身につけている知識・技能は新制度でも必ず武器になります。皆さんの健闘を祈ります!

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