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【日々のマナビ】知識検定「土用」

こんにちは。ろっさんです。

暦(こよみ)の世界は、一見すると複雑で覚えにくいものに感じられるかもしれません。しかし、その背景にある自然観や古くからの知恵を紐解いていくと、私たちの暮らしがいかに季節の移ろいと密接に関わってきたかが見えてきます。

本記事では、日本の暦において重要な役割を果たす「季節の変わり目」に焦点を当て、以下の3つのポイントを中心に解説していきます。

  • ① 季節の節目を示す「雑節(ざっせつ)」の定義とその成り立ち
  • ② 五行説に基づいた「土」の性質と、なぜ約18日間という期間が必要なのか
  • ③ 現代にも残る風習から読み解く、暦が教える「養生」の知恵

それでは、まずは今回の学びの出発点となる問いを確認してみましょう。

目次

今回検討する問い

【問題】
立春、立夏、立秋、立冬の前の約18日間を何というか。

【選択肢】
① 土用(どよう)
② 節分(せつぶん)
③ 彼岸(ひがん)
④ 縁日(えんにち)

季節のバッファ期間としての「土用」

この問いの正答は「① 土用」と言えるでしょう。

「土用」と聞くと、多くの人が夏の「土用の丑の日」に鰻を食べる習慣を思い浮かべるかもしれません。しかし、本来の土用は夏だけでなく、春・夏・秋・冬のすべての季節に存在します。立春、立夏、立秋、立冬という、各季節の始まり(四立:しりゅう)の直前の期間を指す言葉なのです。

なぜ「約18日間」という特定の期間が設けられているのかを理解するには、古代中国から伝わった「五行説(ごぎょうせつ)」の考え方を知る必要があります。五行説では、万物は「木・火・土・金・水」の5つの要素から成ると考えられています。

これを四季に割り当てた際、以下のようになります。

  • 春:木(もく)……芽吹き、成長するエネルギー
  • 夏:火(か)……燃え上がり、隆盛するエネルギー
  • 秋:金(ごん)……収穫し、凝縮するエネルギー
  • 冬:水(すい)……静まり、蓄えるエネルギー

ここで疑問が生じます。5つの要素があるのに、季節は4つしかありません。残った「土」はどこへ行くのでしょうか。この「土」こそが、季節と季節が入れ替わる際の「橋渡し」の役割を担うことになったのです。

急激に季節が変化すると、自然界も人間の身体も負担がかかります。そこで、古い季節の気が消え、新しい季節の気が立ち上がるまでの調整期間として、各季節の終わりに「土」の性質を持つ期間を配したのです。これが「土用(土の働きを用いる期間)」の正体です。

1年(約365日)を5つの要素で均等に割ると、ひとつの要素あたり約73日となります。「土」以外の4つの要素はそれぞれ各季節に割り振られ、残った「土」の73日間を4分割して各季節の終わりに配置した結果、73÷4=18.25となり、「約18日間」という計算が成り立つわけです。

他の選択肢との違いを整理する

ここで、迷いやすい他の選択肢についても、なぜこれらが「約18日間」という条件に当てはまらないのかを整理しておきましょう。

② 節分は、文字通り「季節を分ける」ことを意味します。本来は立春、立夏、立秋、立冬の「前日」を指す言葉です。つまり、土用の期間の最終日が節分にあたります。土用が「期間」であるのに対し、節分は「特定の1日」を指すため、今回の問いの条件には合致しません。

③ 彼岸は、春分の日と秋分の日を中日(なかび)とした前後3日間、合わせて7日間の期間を指します。これは日本独自の仏教行事と季節感が結びついたものであり、四立(立春など)を基準にする土用とは、算出の根拠が異なります。

④ 縁日は、神仏との縁がある特定の日を指します。この日に参拝すると普段以上のご利益があるとされ、各地の寺社で祭礼が行われます。これは季節の周期性とは直接関係のない用語です。

知的好奇心を満たす「土用」と暦の深層知識

ここからは、さらに一歩踏み込んで、暦や土用にまつわる高度な知識を掘り下げていきましょう。単なる用語の暗記を超えて、当時の人々がどのような論理で世界を捉えていたのかを垣間見ることができます。

  • 雑節(ざっせつ)としての位置付け:
    土用は、二十四節気(立春や夏至など)とは別に、補助的な役割として日本で発達・定着した「雑節」のひとつです。他には「節分」「彼岸」「八十八夜」「入梅」「半夏生(はんげしょう)」「二百十日」などがあり、これらは農作業の目安として重宝されました。
  • 土公神(どくじん)の守護:
    陰陽道(おんみょうどう)の考えでは、土用の期間中は「土公神」という土を司る神様が地上にいらっしゃるとされています。そのため、この期間に土を動かすこと(建築の基礎工事、井戸掘り、壁塗りなど)はタブー(禁忌)とされてきました。
  • 間日(まび)の救済措置:
    土公神による禁忌があるものの、18日間も土仕事ができないのは生活に支障をきたします。そこで、土公神が天上へ行くために地上を留守にする「間日」という日が設けられました。この日であれば、土用期間中であっても土を動かして良いとされました。具体的には、春は巳・午・酉の日、夏は卯・辰・申の日といった規則があります。
  • 土用干し(どようぼし)の合理的理由:
    夏の土用の時期に行われる「衣類や書籍の虫干し」は、理にかなった生活の知恵です。梅雨明け直後のこの時期は湿度が下がり、乾燥した強い日差しが期待できます。カビや虫害を防ぐために、このタイミングで風を通すことは、科学的にも非常に有効な手段でした。
  • 土用波(どようなみ)の気象学:
    夏の土用の時期に、海岸へ押し寄せる大波を「土用波」と呼びます。これは、遥か南の海上で発生した台風の影響による「うねり」が、日本近海に届いたものです。まだ台風予報が未発達だった時代、暦の上の土用は海の危険を察知する警報のような役割も果たしていました。
  • 五行と色の関係:
    五行説では要素ごとに色が割り振られています。土用(土)の色は「黄」です。ちなみに春は「青(緑)」、夏は「赤」、秋は「白」、冬は「黒」となります。「青春」「朱夏(しゅか)」「白秋(はくしゅう)」「玄冬(げんとう)」といった言葉は、ここから由来しています。
  • 方位学における「五黄殺(ごおうさつ)」との関連:
    土のエネルギーが極まる土用は、方位学や風水の観点からも慎重さが求められる時期とされます。特に「中央」を司る土の気が強まりすぎるため、大きな移動や契約を控える文化が一部に残っているのも、この五行説の応用と言えるでしょう。
  • 季節ごとの「食」の養生:
    夏の土用に「う」の付くものを食べる習慣が有名ですが、実は春の土用には「い」の付くもの(イカ、イチゴなど)、秋は「た」の付くもの(大根、玉ねぎなど)、冬は「ひ」の付くもの(ヒラメ、火を通したものなど)を食べると良いという伝承も存在します。これらは、その時期の体調を整える性質を持っています。
  • 寒明け(かんあけ)と立春の接続:
    冬の土用の最終日(節分)を過ぎると、翌日が「立春」です。これを「寒明け」と呼びます。最も寒い時期を耐え抜き、気が春へと入れ替わる瞬間を、古来の人々は非常に重要なターニングポイントとして捉えていました。
  • 太陽の黄道座標による定義:
    現代の天文学的な定義では、土用は太陽の黄経(こうけい)によって決まります。太陽が27度、117度、207度、297度の位置に来る直前の約18日間を指します。これは、季節の区分を単なる伝統行事ではなく、天体の運行に基づく「天文学的な時間枠」として扱っていることを示しています。
  • 三伏(さんぷく)との違い:
    土用と混同されやすい概念に「三伏(初伏・中伏・末伏)」があります。これも夏の酷暑期を指す言葉ですが、二十四節気の「夏至」の後の「庚(かのえ)の日」を基準に計算されるもので、五行説における「火」と「金」の相克関係に基づいています。

まとめに代えて

「土用」という言葉を掘り下げていくと、それが単に特定の食べ物を食べる日ではなく、自然のサイクルと調和して生きるための精緻なシステムであることがわかります。

季節が移り変わる前の18日間。この期間は、次の季節を迎えるために身体を休め、環境を整え、無理をしないようにという、先人たちからの優しいアドバイスが含まれているようにも感じられます。急激な変化を避けるための「ゆとり」や「バッファ」を、暦という形で生活に組み込んでいたのです。

現代の忙しい生活の中でも、「今は土用の時期だから、少しペースを落としてみよう」と意識するだけで、日々の暮らしに豊かな奥行きが生まれるかもしれません。暦を知ることは、私たちが生きる「時間」の質を見つめ直すことにも繋がっていくでしょう。

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この記事を書いた人

30代会社員。
理系大学を卒業して以降、新卒からIT業界を渡り歩いてきました。
転職経験は2回。
 ・中小SIerにてプログラマー
 ・BtoB向けサービス事業会社にて社内開発SE
 ・大手総合コンサル会社にてテクノロジーコンサルタント(見習い)
といったキャリアを歩んでいます。

人生100年時代に向け日々精進!
知らない道を歩いたり走ったりするのが好きで、フルマラソン完走するくらいにはジョギングを続けています。

興味のあるトピック
 ・資格勉強
  (主な取得資格)
  ・中小企業診断士
  ・JDLA認定 G検定・E資格
  ・情報処理技術者試験 応用情報処理技術者、ITストラテジスト他複数
 ・競技系プログラミング(Atcoder、kaggle等も含む)
 ・データサイエンス、AI関連の話題
 ・クイズ、謎解き系
 ・読書、映画
 ・ボードゲーム全般(将棋アマチュア2段程度。専ら”見る将”)

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