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【日々のマナビ】中小企業診断士2次試験 R07事例Ⅰ 徹底解説

こんにちは。ろっさんです。

今回は、「中小企業診断士2次試験 R07事例Ⅰ 徹底解説」と言うタイトルで解説していきます。長い記事ですがぜひ最後までお付き合いください!

目次

0. はじめに:R07事例Ⅰを一本の因果で読む

本記事で取り上げるのは、中小企業診断士2次試験R07年度事例Ⅰ、林業が盛んな県に拠点を置く昭和初期創業の木材加工会社であるA社です。主力事業は、同県産の木材を原材料とした内装材の製造・販売であり、その加工技術は内装材分野で高い評価を得てきました。一方で、木材の新たな可能性を追求するX事業も、小規模ながら実験的に展開しています。X事業は、オーダーメイド家具やペンを製造・販売し、工場併設の直営店や県のアンテナショップを通じて消費者との接点も持っています。A社の社員数はX事業を含めて30名、年間売上高は約8億円で、社長と子息のほかに製造技術部門12名・営業部門10名・管理部門7名という組織で構成されています。社員の多くは内装材の技術職と法人営業の担当者であり、とりわけ技術職には勤務経験の長い社員が多いという体制です。

独学でこの事例に向き合うと、SWOT分析の枠組みに与件文の語句を当てはめることはできても、なぜその要素が加点の中心になるのか、なぜ他の候補を落としてよいのかが判断しづらく感じられます。また、第1問で整理した環境認識と、第2問以降で問われる資源の補完や組織体制、企業理念の再定義は、実はひとつながりの因果でつながっています。それに気づかないまま、設問ごとに切り離された知識問題として処理してしまうことも少なくありません。ある設問の答案が模範解答に近い言葉を含んでいたとしても、それだけでは本当に論理を理解して書いたのかどうかは判断しづらいところです。

そこで本記事では、第1問から第4問まで、公式の設問文・配点・出題の趣旨を確認したうえで、独自に用意した補題を交互に検討していきます。各設問では、設問要求の分解、与件文からの根拠、因果のメカニズム、診断士としての判断、字数に収める圧縮という順に段階を追って考えます。最後に、200点満点の自己採点用プロンプトを付けています。

0.1 なぜ本記事では「補題」を置くのか

本記事で各設問に補題を添えているのには理由があります。元の設問に一度答えられたとしても、それだけでは答案の背後にある理解がどこまで及んでいるかは外からは読み取れません。今回の4問の補題は、それぞれ異なる角度からこの理解の深さを確かめます。

一つ目は、元の設問がまだ足を踏み入れていない先の工程を埋める確認です。第1問の元の設問は、A社の現状を強み・弱み・機会・脅威の四つに分類して並べれば満点に届き、内装材の競争激化という脅威がなぜ新たな収益の柱を必要にし、加工技術という強みがなぜ玩具の品質要求に適合したのかという、方向づけの工程までは問いません。第3問の元の設問も、事業別の体制とその理由までを問えば満点に届き、その体制を誰が担うのかという工程には触れません。補題の一部はこの続きの工程を問い、子息一人に集中する権限をどう委ね、次世代のリーダーや専門人材をどう確保・育成するかまで答えられるかを見ます。

二つ目は、1次試験で学ぶ知識を、この事例の具体的な事実に正しく当てはめられているかの確認です。第2問の元の設問は、消費者接点を作るために行った取り組みを列挙すれば満点に届きます。補題は、内装材の技術職と法人営業が中心の社内に乏しかった消費者を知る力を、保育・教育施設や大学という社外の場がどう補い、得られたものを製品開発にどう戻したのかという仕組みを問います。社外との連携が社内に無い資源を補うという1次知識を、A社の具体的な事実に当てはめて説明できるかどうかを見ます。

三つ目は、設問どうしのつながりを踏まえて考えられているかの確認です。第4問の元の設問は、企業理念の再定義の中身と社内外への浸透策を書けば満点に届き、事業別に分ける組織改革に対して理念がどのような働きをするのかという、組織体制の側との依存の向きは問いません。補題は、事業を分けてもなお残る技術面や人の面の依存を、再定義した理念がどう結ぶのかを問います。第3問で助言した組織体制と第4問で助言した理念が、依存の向きでつながっていることに気づき、事例全体を一つのつながりとして行き来しながら読めているかを確かめます。元の設問に答えられるかどうかと、この3つの角度から補題に答えられるかどうかは別の力です。両方を行き来しながら考えることで、事例全体を貫く理解が身についているかどうかを確かめられると考えています。

0.2 R07事例Ⅰを貫く流れ

  1. 環境認識(新規事業進出時のSWOT):A社が木製知育玩具の新規事業に進出した際の強み・弱み・機会・脅威を、内部環境と外部環境に区別して説明できるか
  2. 資源・能力の補完(消費者接点の構築):企業向け事業を中心としてきたA社が、消費者との接点を作るためにどのような取り組みや工夫を行ったか説明できるか
  3. 組織体制(事業別分化と人材施策):新規事業を成長させていくに当たり、A社が採用すべき組織体制とその理由、そしてその体制を機能させる人材施策を助言できるか
  4. 理念の再定義と浸透:新規事業の拡大に当たり、A社が創業以来の企業理念をどのようなものへ再定義し、社内外の関係者にどう浸透させればよいか助言できるか

0.3 この記事の読み方

次の章に、元の設問と本記事の補題を解く順に並べています。先に自分で解いてから解説に進むと、どこで判断がずれたのかがはっきりします。

各設問について、まず公式の設問文・配点・出題の趣旨を掲げ、次に「何が問われているか」を一言で整理します。そのうえで、設問要求の分解、与件文の根拠、因果のメカニズム、診断士としての判断、答案への圧縮、という順に解説します。元設問のあとには補題を置き、同じ順で解説します。末尾には、元設問と補題を合わせて200点満点で自己採点できるプロンプトを付けています。

1. 先に解いてみる

ここから先は解説です。先に自分で解いてから読むと、どこで判断がずれたのかがはっきりします。与件文は本記事に全文を載せていないので、中小企業診断協会が公開している過去問の問題冊子を手元に用意してから取り組んでください。

以下、元の設問と補題を、記事に出てくる順に並べます。太字が補題です。補題は公式の試験問題ではありません。元の設問だけでは確かめにくい理解を測るために、私がこの記事のために独自に作成したものです。配点も私が置いたものです。

  1. 第1問(配点20点/各30字以内・4欄) 木製知育玩具の新規事業に進出した際のA 社の現状について、SWOT 分析のそれぞれの観点から、30 字以内で述べよ。
  2. 第1問補題(20点/120字以内) A社社長は、内装材事業の収益性に陰りが見え始めたことに危機感を抱き、新たな収益の柱となる新規事業を模索していた。数ある選択肢の中で木製知育玩具事業への進出がA社にとって妥当な判断であった理由を、120字以内で述べよ。
  3. 第2問(配点30点/150字以内) A 社が木製知育玩具の新規事業を展開する際に、顧客との接点を作るために行った取り組みや工夫について、150 字以内で説明せよ。
  4. 第2問補題(30点/150字以内) A社は、木製知育玩具の新規事業で、県の支援による保育・教育施設での実証実験や、地元の大学の学生が参加するワークショップに取り組んだ。企業向けの内装材事業を中心としてきたA社にとって、これらの取り組みが新規事業の製品開発に効いた理由を、150字以内で説明せよ。
  5. 第3問(配点20点/100字以内) A 社社長は、木製知育玩具の新規事業を成長させていくに当たって、全社的な組織改革を検討している。それに対して、採用すべき組織体制とその理由に関して100字以内で助言せよ。
  6. 第3問補題(20点/100字以内) A社社長は、内装材事業と木製知育玩具事業を別々の単位とする組織改革を検討している。この体制を機能させるために、A社が人材の面で採るべき取り組みについて、100字以内で助言せよ。
  7. 第4問(配点30点/150字以内) A 社は、木製知育玩具の新規事業を拡大させるに当たり、自社の創業以来の企業理念をどのようなものへと再定義したり、それを関係者に浸透させたりすればよいのか。150 字以内で助言せよ。
  8. 第4問補題(30点/150字以内) A社社長は、内装材事業と木製知育玩具事業をそれぞれ別の単位とする組織改革に着手しようとしている。A社が企業理念を再定義することは、この組織改革に対してどのような働きをすると考えられるか。150字以内で述べよ。

2. 第1問

【設問文】 木製知育玩具の新規事業に進出した際のA 社の現状について、SWOT 分析のそれぞれの観点から、30 字以内で述べよ。

【配点】 第1問(配点20点)

【出題の趣旨】 A 社の新規事業への進出時における外部環境と内部環境の現状分析をする能力を問う問題である。

2.1 この設問で問われていることの一言整理

答えの重心は、内部の強み・弱みと外部の機会・脅威を厳密に切り分ける点にあります。収益性の陰りのような結果は、原因である脅威の側に置き直して整理します。

2.2 設問要求の分解

設問は、A社が木製知育玩具の新規事業に進出した際の現状を、SWOT分析の四つの観点それぞれについて30字以内で整理するよう求めています。問われているのは強み・弱み・機会・脅威という四つの区分に要素を振り分けることであり、内部環境と外部環境を混同しないことが前提です。強み・弱みは内部の資源や体制に関する事実、機会・脅威は外部の市場や社会の変化に関する事実に限られます。四つの観点それぞれの短い字数の中で、複数ある候補のうちどれを残すかという取捨選択も同時に求められています。

2.3 与件文の根拠

安全性が求められる乳幼児向けの玩具において、木のささくれを防ぐ滑らかな加工や、口に入れても安全な塗料の使用といったノウハウは大きな強みとなった

乳幼児向けに求められる安全性への配慮と、内装材で培った加工・塗装のノウハウが直接結びついていることを示しており、Sに分類する強みの根拠になります。

既存事業を支えてきた社員たちは新規事業の必要性を十分には理解できなかった

既存事業を支えてきた社員が新規事業の必要性を十分に理解できていないという内部の事実であり、消費者向け体制の弱さと並ぶWの根拠になります。

木材と触れ合う中で子どもたちの豊かな心を育む「木育」への、教育や子育て支援の場でのニーズの増加である

子育て世代の間で木育への関心が高まっているという外部の変化を示しており、知育玩具市場への進出を後押しするOの根拠になります。

内装材市場における企業間の競争激化と公共案件の不安定性であり、とりわけ、後者は景気や政策の影響を受けやすく安定的な収益確保が難しくなってきていた

内装材市場の競争激化と公共案件の収益不安定という外部の逆風を示しており、既存事業だけに頼れない状況を作るTの根拠になります。

2.4 因果のメカニズム

2.4.1 内部資源に基づく強みと弱み

A社は内装材の加工・仕上げ・塗装で培った技術と、県内の調達網や地域の木工職人とのネットワークという内部資源を持っています。これらの資源は乳幼児向け玩具に求められる安全性や小ロット多品種への対応と結びつくため、木製知育玩具事業を後押しする強みになります。一方で、社員の多くは技術職と法人営業であり、消費者向けの体制や理解が社内に乏しかったことが、内部の弱みとして残ります。

2.4.2 外部環境に基づく機会と脅威

A社を取り巻く外部環境では、子育て世代の自然素材・国産材志向と木育需要の高まりが、木製知育玩具という進出先への追い風になっています。同時に、内装材市場では企業間の競争が激化し、公共案件は景気や政策の影響を受けやすく収益が不安定になっているため、既存事業だけに依存する経営は徐々にリスクを高めます。この二つの外部の動きが、機会と脅威という対の形でA社の判断材料を作っています。

2.4.3 論理骨子上の位置づけ

この設問で整理する強み・弱み・機会・脅威は、A社が新規事業を進めるうえでの出発点にあたるため、ここで洗い出した資源や制約がそのまま後続の設問に引き継がれていきます。消費者接点をどう補うか、どのような組織体制で事業を運営するか、そして企業理念をどう再定義するかという各設問は、この出発点を土台として組み立てられていくと読めます。

2.5 診断士としての判断:なぜこれが主筋になるのか

本設問の主筋は、A社の現状をS・W・O・Tという四つの観点に分け、内部環境と外部環境の境界を崩さずに整理することにあります。出題の趣旨が「外部環境と内部環境の現状分析」と明記しているとおり、要素として語句が合っていても、区分を誤れば論点として成立しません。強みは内装材で培った加工・塗装の技術と調達網、そして子息のX事業を通じた消費者接点の経験に置くのが妥当です。弱みは、消費者向けの体制の乏しさ、既存社員の理解不足、子息一人への依存という内部の事実に限ります。内装材事業の収益性の陰りは、競争激化や公共案件の不安定という外部の脅威が先に生じ、その帰結として現れた事実であるため、独立した弱みとしては落とす候補になります。機会と脅威についても、自然素材・木育需要・県や大学の支援という追い風と、内装材市場の競争激化・公共案件の不安定・知育玩具市場の競合という向かい風を、外部の事実として整理します。

ここから持ち帰る原則 ある事実が内部の要因なのか、外部の変化が生んだ結果なのかを見分け、結果にあたる事実は、その結果が生じた側の区分の材料としては使いません。

2.6 よくある浅い理解やズレ

  • 内装材事業の収益性の低下をそのままWの理由として挙げ、Tとの関係を整理しない答案:収益性の低下は競争激化や公共案件の不安定という外部の脅威が先に生じた結果であり、これを独立した内部の弱みとして扱うと内部と外部の区分が崩れ、論点として成立しません。 直し方は、収益性の低下は脅威側の帰結として位置づけ、弱みにはBtoC体制不足や理解不足など内部の事実だけを残します。 書き換えると「W:BtoC体制不足・既存社員理解不足・子息依存。」となります。
  • 強み・弱み・機会・脅威のいずれかで単一要素のみを挙げ、複数ある与件の事実を拾わない答案:各観点には複数の事実が与件に示されており、一つだけでは採点基準の部分点にとどまり、資源や環境変化を多面的に説明したことになりません。 直し方は、各観点で与件にある複数の事実を拾い、字数の許す範囲で要素を並べて書きます。 書き換えると「O:自然素材志向・木育需要・県や大学の支援。」となります。
  • 内部環境と外部環境の区分を意識せず、要素の語句だけを当てはめる答案:出題の趣旨は内部環境と外部環境の区分を問うており、区分を誤れば語句が合っていても論点として認められません。 直し方は、強み・弱みは内部の資源や体制、機会・脅威は外部の市場や社会の変化という基準で振り分けてから書きます。 書き換えると「S:加工技術・調達網・X事業の消費者接点経験。」となります。

2.7 各30字(4欄)の答案に落とす際の絞り方

残すもの:

  • 各観点は30字以内という制約の中で、与件の複数候補から1〜2個だけに絞り込む
  • 内装材事業の収益性の陰りは、競争激化・公共案件の不安定という脅威が先に生じた帰結として扱い、独立した弱みには入れない
  • 強み・弱みは内部の資源や体制の事実、機会・脅威は外部の市場や社会の変化の事実という区分を崩さない
  • 四つの観点をすべて書き切る。どれか一つだけを厚く書いて他を省かない

思い切って捨てるもの:

  • 内装材事業の収益性の低下を独立要素として書くこと
  • 具体的な製品名や数値の列挙
  • 県・大学支援の詳細な経緯

整理例(解答欄ごと):

S:加工技術・調達網・X事業の消費者接点経験。

W:消費者向け体制不足・既存社員の理解不足・子息への依存。

O:自然素材志向・木育需要・県や大学の支援。

T:内装材市場の競争激化・公共案件の不安定・知育玩具市場の競合。

ここまでの整理では、四つの観点に分けることはできても、なぜこの時点で木製知育玩具事業への進出が妥当な判断だったのかまでは見えません。次の補題では、新たな収益の柱を必要とした変化と、資源が玩具の品質要求に適合した理由を考えます。

3. 第1問補題

【補題文】 A社社長は、内装材事業の収益性に陰りが見え始めたことに危機感を抱き、新たな収益の柱となる新規事業を模索していた。数ある選択肢の中で木製知育玩具事業への進出がA社にとって妥当な判断であった理由を、120字以内で述べよ。

【補題配点】 20点

3.1 元設問とのつながり

元設問では、A社の現状を強み・弱み・機会・脅威の四つの観点に分けて整理し、内部の事実と外部の事実を区別できることを確認しました。四つに分けられたとしても、なぜその時点で木製知育玩具事業を選んだのかは、元設問の答え方だけでは見えません。欄ごとに要素を並べるだけでも、30字という短い字数では満点に届いてしまうためです。補題では、内装材の競争激化という脅威がなぜ新たな収益の柱を必要にし、加工技術や調達網という強みがなぜ乳幼児向け玩具の品質要求に適合したのかを問います。消費者向けの体制という弱みを子息のX事業経験でどう補えたのかという、要素と選択を結ぶ方向づけの工程まで問います。

3.2 この補題で問われていることの一言整理

答えの重心は、内装材の脅威が生んだ必要性と、需要と資源の両面が支える適合と、残る弱みの手当てという三つが揃う点にあります。

3.3 設問要求の分解

設問は、数ある選択肢の中で木製知育玩具事業への進出がA社にとって妥当な判断であった理由を、120字以内で述べるよう求めています。問われているのは進出先の候補を挙げることではなく、なぜその時点で、なぜ木製知育玩具だったのかという選択の理由です。答える筋道は三つに分かれます。内装材事業を取り巻く外部の変化がなぜ新たな収益の柱を必要にしたのかが一つ目の筋です。子育て世代の安心・安全志向や木育需要という需要の面と、A社の技術や調達網という資源の面が、なぜ知育玩具事業に適合したのかが二つ目の筋です。消費者向けの体制という弱みをどう手当てしたのかが三つ目の筋であり、これらを120字の中で結ぶ必要があります。

3.4 与件文の根拠

内装材事業の収益性に陰りが見え始めたことに危機感を抱いていたA 社社長は、こうした市場環境の変化を受け、新たな収益の柱となる新規事業を模索する必要性を感じていた。

内装材事業の先行きへの危機感が、新規事業を模索する必要性に直接つながっていることを示しており、進出の理由の起点にあたる根拠です。

特に、子育て世代を中心に、子どもたちが触れるものに対して、安心・安全な素材を求める傾向が強まっていた。

子育て世代の安心・安全志向という外部の需要が、木製知育玩具という進出先に結びつく機会であることを示す根拠です。

第1に、主力事業である内装材の製造で培われた薄板加工技術や、美しい木目を活かすための仕上げ技術は、高品質な知育玩具を製造する上で活かされた。

内装材事業で培った加工技術が、知育玩具という異なる製品分野でもそのまま活きたことを示す、資源の適合の根拠です。

X 事業では、木製のオーダーメイド家具やペンといった製品を製造・販売しており、工場併設の直営店や同県のアンテナショップを通じて、消費者との接点も持っている。

子息が担当するX事業がすでに消費者との接点を持っていたことを示しており、消費者向け体制の弱さを補える根拠になります。

3.5 因果のメカニズム

3.5.1 外部の脅威が生んだ必要性

内装材市場では企業間の競争が年々激しくなり、公共案件は景気や政策の影響を受けやすく収益が不安定になっていました。この二つの脅威が既存事業の収益を静かに揺るがし続けたため、A社社長は危機感を強め、新たな収益の柱を求める必要に迫られたと読めます。

3.5.2 資源と品質要求の適合

内装材で培った薄板加工や仕上げの技術、口に入れても安全な塗料のノウハウは、乳幼児向け玩具に求められる安全性と品質に直接応えます。県内の林業家や製材所との調達網も、知育玩具に適した木材を安定的に確保する土台になったため、既存の資源が新規事業の要求と適合したと考えられます。

3.5.3 残る弱みへの手当て

A社の社員の多くは内装材の技術職と法人営業であり、消費者向け事業を支える体制や理解は社内に乏しいままでした。この弱みは、地元の大学で経営学を学び、X事業を通じて消費者との接点をすでに持っていた子息を責任者にすることで手当てされたと読めます。

3.6 診断士としての判断:なぜこれが主筋になるのか

本補題の主筋は、強み・弱み・機会・脅威という四つの事実を並べることではなく、それぞれの事実が進出の判断の中でどの役割を果たしたのかを結ぶことにあります。内装材の競争激化と公共案件の不安定という脅威が新たな収益の柱を必要にしました。この必要性に対して、子育て世代の安心・安全志向と木育需要という需要の面と、加工技術と調達網という資源の面の両方が、知育玩具事業への適合を裏づけました。そして、消費者向け体制の弱みは子息のX事業経験で補われました。この三段をつないで初めて、なぜその時点で木製知育玩具事業が妥当だったのかを説明したことになります。

強み・弱み・機会・脅威の四観点を分類して並べるだけの答案は、元設問の答え方の流用であり、進出の理由には答えていないため優先順位を下げます。「環境変化」「経営資源」「収益の柱」といった語と与件の要素名を並べるだけで、何が何を生んだかを書かない答案も、因果の結びが無いため落とす候補です。与件に無い市場縮小や、どの企業にも言える技術力の高さで説明する一般論も、A社固有の理由になっていないため主筋からは外れます。

ここから持ち帰る原則 複数の事実を、必要性を生んだ事実か、資源が支える適合の事実か、残る弱みへの手当ての事実かに当てはめ、当てはまらない事実は落とします。

3.7 よくある浅い理解やズレ

  • 強み・弱み・機会・脅威の四観点を分類して並べるだけの答案:四観点に分けたこと自体は元設問への答えであり、なぜその時点で木製知育玩具事業を選んだのかという方向づけの理由になっていません。 直し方は、分類した要素のどれが必要性を生み、どれが適合を支えたのかという役割まで書きます。 書き換えると「脅威が柱を必要にし、資源が品質要求に適合したため。」となります。
  • 「環境変化」「経営資源」「収益の柱」などの語と与件の要素名を並べ、何が何を生んだかを書かない答案:採点基準の語をなぞるだけで、脅威と必要性、資源と品質要求といった因果の結びが示されていません。 直し方は、語を単独で置かず、どの事実がどの役割を果たしたのかを因果で結んで書きます。 書き換えると「競争激化が柱を必要にし、加工技術が品質要求を満たした。」となります。
  • 「市場が縮小した」「技術力が高い」など、与件に無い変化やどの企業にも言える強みで説明する答案:与件に書かれていない事実を補っているか、A社に固有でない一般論であり、進出の理由の根拠になりません。 直し方は、与件にある内装材の競争激化や加工技術など、A社固有の事実だけを根拠にします。 書き換えると「内装材の競争激化と加工技術の蓄積が進出を支えた。」となります。

3.8 120字答案に落とす際の絞り方

残すもの:

  • 内装材の競争激化と公共案件の不安定という脅威
  • 安心・安全志向と木育需要という機会
  • 加工技術と調達網という資源の適合
  • 子息のX事業経験による弱みの手当て

思い切って捨てるもの:

  • 強み・弱み・機会・脅威という分類の枠組みそのもの
  • 県や大学の支援の詳細な経緯
  • 知育玩具市場の競合状況

整理例:

理由は、内装材の競争激化と公共案件の不安定で新たな収益の柱が要り、安心・安全志向と木育需要が知育玩具の追い風となるため。加えて安全な塗料や加工技術と県内の調達網が乳幼児向けの品質を支え、消費者向けの弱さも子息のX事業経験で補えるため。

ここまでで、進出という選択がなぜ妥当だったのかを、必要性・適合・手当てという三段で確認しました。次の第2問では、企業向け事業を中心としてきたA社が、消費者との接点をどのように作っていったのかを見ていきます。

4. 第2問

【設問文】 A 社が木製知育玩具の新規事業を展開する際に、顧客との接点を作るために行った取り組みや工夫について、150 字以内で説明せよ。

【配点】 第2問(配点30点)

【出題の趣旨】 企業向け事業に取り組んできたA 社が、一般消費者向けの新規事業に挑戦する際の、資源や能力の補完に関する組織的工夫を分析する能力を問う問題である。

4.1 この設問で問われていることの一言整理

答えの重心は、複数の取り組みを単なる列挙で終わらせず、企業向け事業に乏しかった消費者接点をどう補ったかという組織的な工夫として結ぶ点にあります。

4.2 設問要求の分解

設問は、A社が木製知育玩具の新規事業を展開する際に、顧客との接点を作るために行った取り組みや工夫を、150字以内で説明するよう求めています。問われているのは取り組みの名称を思い出すことではなく、企業向け事業を中心としてきたA社に元々乏しかった消費者向けの資源や能力を、どの取り組みがどう補ったのかという組織的な工夫として整理することです。出題の趣旨が「資源や能力の補完に関する組織的工夫」と明記しているとおり、複数ある取り組みのうち字数内に収まる範囲でどれを残すかという取捨選択も問われています。

4.3 与件文の根拠

自社工場併設の直営店や県のアンテナショップのみならず、大手EC サイトへの出店も果たした

内装材向けとは異なる消費者向けの販路を、直営店・アンテナショップ・ECという複数のチャネルで具体的に開拓した事実であり、資源の補完を裏づける直接の根拠になります。

保育・教育施設は実際に木育を実践する場であり、子どもたちが日常的にA 社の製品に触れる機会となることで、知育玩具に関する新たなアイデアの源泉となった

保育・教育施設が木育を実践する場であり、子どもたちが日常的に製品に触れることを与件が明記しており、実証機会が新たなアイデアの源泉になるという資源補完の根拠になります。

SNS を活用した情報発信や子育てイベントへの出展なども積極的に企画・実行していった

子息が大学で得た経営学の知識やX事業の経験を活かしてSNS発信やイベント出展を企画した事実であり、消費者との認知接点を自ら作った工夫の根拠になります。

学生たちが参加するワークショップ形式で、知育玩具の新たなアイデアや既存製品の改善点などが議論されることで、知育玩具のデザインや教育効果に関する共同研究も推進された

大学の学生という外部の柔軟な発想を製品開発に取り込んだ事実であり、社内に無い視点を組織的に補う工夫の根拠になります。

4.4 因果のメカニズム

4.4.1 消費者向け販路の確保

A社は内装材向けの既存の販路とは別に、消費者に直接届く経路をそろえました。具体的には、直営店・県のアンテナショップ・大手ECサイトの三つです。消費者との直接の接点を複数の経路で確保したことで、木製知育玩具を実際に手に取ってもらう機会が生まれています。実験的なX事業にとどまっていた消費者との接点が、事業として使える規模に広がったと読めます。

4.4.2 外部の場を使った実証と改善のサイクル

県の支援による保育・教育施設での実証機会と、地元大学の学生とのワークショップは、いずれもA社が社内だけでは得にくい消費者理解を外部から取り込む仕組みです。保育・教育施設は子どもが日常的に製品に触れる場であるため、実際の使われ方から新たなアイデアが得られます。大学の学生は柔軟な発想を持ち込むため、製品の改善点が集まりやすくなります。これらの外部の場が、社内に乏しい消費者理解を補い、製品開発のサイクルを回す役割を果たしていると考えられます。

4.4.3 論理骨子上の位置づけ

第1問ではBtoC体制の弱さという内部の課題を洗い出しました。この課題は、本設問で整理する複数の取り組みによって初めて具体的に埋められていきます。ここで蓄積した消費者接点や外部連携の経験は、事業別の組織体制をどう設計するか、そしてその体制を機能させる人材施策をどう組み立てるかという後続の設問に引き継がれていくと読めます。

4.5 診断士としての判断:なぜこれが主筋になるのか

本設問の主筋は、A社が行った複数の取り組みを羅列することではなく、企業向け事業を中心としてきたA社に元々乏しかった消費者向けの資源や能力を、どの取り組みがどう補ったのかという組織的な工夫として結ぶことにあります。出題の趣旨が「資源や能力の補完に関する組織的工夫」と明記しているとおり、消費者向け販路の開拓、県支援による保育・教育施設での実証機会、SNS発信や子育てイベントによる認知接点、大学との連携による改善という四つの取り組みが挙げられます。これらはいずれも、社内に乏しかった消費者接点や消費者理解を外部から補う役割を果たしています。

特定の一つのチャネルだけを説明し、他の取り組みに触れない答案は、優先順位が下がります。複数ある資源補完の経路のうち、一つしか拾えていないためです。取り組みの名称を並べるだけで、それが何を補ったのかという因果に触れない答案も、出題の趣旨が求める分析にはなっていないため、主筋からは外れます。

ここから持ち帰る原則 取り組みは名前を挙げるだけでなく、社内の何を補ったのかという対応が言える形に絞り込み、対応が言えないものは落とします。

4.6 よくある浅い理解やズレ

  • 直営店やECなど販路のいずれか一つだけを挙げ、他のチャネルを書かない答案:設問は取り組みや工夫を複数扱う前提であり、一つのチャネルだけでは資源や能力の補完という論点の一部しか示せていません。 直し方は、直営店・アンテナショップ・ECという複数の販路を、字数の許す範囲でまとめて書きます。 書き換えると「直営店・県アンテナショップ・大手ECで消費者向け販路を開拓した。」となります。
  • 実証実験や大学連携を取り組みの一つとして並べるだけで、県支援や学生という主体を書かない答案:誰が関わったのかという主体を欠くと、組織的工夫の説明になりません。社内に乏しかった資源をどの外部の主体が補ったのかが分からず、出題の趣旨から外れます。 直し方は、県の支援による実証機会、大学の学生による改善というように、主体と取り組みを対にして書きます。 書き換えると「県支援で保育・教育施設に実証機会を作り、学生の発想で製品を改善した。」となります。
  • SNSや大学連携の記述を欠き、認知接点や改善のための取り組みが痩せる答案:四つの取り組みのうち字数の許す範囲で欠けたものがあると、論点の重みが軽くなります。認知接点や改善という採点基準上の重みが取りこぼされます。 直し方は、販路・実証・認知接点・大学連携の四つに優先順位をつけて字数に収めます。 書き換えると「SNS発信と子育てイベント出展で教育熱心な家庭との認知接点を広げた。」となります。

4.7 150字答案に落とす際の絞り方

残すもの:

  • 消費者向け販路の開拓(直営店・アンテナ・EC)
  • 県支援による保育・教育施設での実証機会
  • SNS発信・子育てイベント出展による認知接点
  • 大学ワークショップ・共同研究による改善

思い切って捨てるもの:

  • 各取り組みの時系列的な経緯
  • 具体的な製品名や地名の列挙

整理例:

消費者向けの体制が乏しかったA社は、直営店・県アンテナショップ・大手ECで販路を開拓し、県支援による保育・教育施設での実証機会を得て、子息のSNS発信や子育てイベント出展で教育熱心な子育て家庭と接点を広げ、大学の学生が参加するワークショップと共同研究で製品を改善した。

ここまでは行った取り組みを外から見た形で整理しました。次の補題では、内装材の技術職と法人営業が中心だった社内に乏しかった消費者理解を、保育・教育施設と大学がどう補い、製品開発にどう戻したのかという仕組みを考えます。

5. 第2問補題

【補題文】 A社は、木製知育玩具の新規事業で、県の支援による保育・教育施設での実証実験や、地元の大学の学生が参加するワークショップに取り組んだ。企業向けの内装材事業を中心としてきたA社にとって、これらの取り組みが新規事業の製品開発に効いた理由を、150字以内で説明せよ。

【補題配点】 30点

5.1 元設問とのつながり

元設問では、企業向け事業を中心としてきたA社が、消費者との接点を作るために行った複数の取り組みを確認しました。直営店やアンテナショップ、大手ECサイトへの出店、県支援による実証実験、SNS発信、大学との連携といった取り組みは、名前を挙げるだけでも150字の中では満点に届いてしまいます。補題では、社員の多くが内装材の技術職と法人営業であるA社に、消費者を知る力がそもそもどれだけ乏しかったのかを踏まえます。そのうえで、保育・教育施設という日々の場と、大学の学生という柔軟な発想の場が、その不足をどう補い、得たものを製品開発にどう戻したのかという仕組みを問います。

5.2 この補題で問われていることの一言整理

答えの重心は、社内に乏しい消費者理解を社外の場が補い、得たものを製品開発に戻したという一つの仕組みに集約される点にあります。

5.3 設問要求の分解

設問は、県の支援による保育・教育施設での実証実験や、地元の大学の学生が参加するワークショップという取り組みが、新規事業の製品開発に効いた理由を150字以内で説明するよう求めています。問われているのは取り組みの内容を紹介することではなく、なぜそれが製品開発に効いたのかという因果です。答える視点は二つに分かれます。企業向け事業を中心としてきたA社に、消費者を知る力がなぜ社内に乏しかったのかが一つ目の視点です。保育・教育施設と大学という二つの場が、それぞれ何を補い、どう製品開発に戻したのかが二つ目の視点であり、この二つを150字の中で結ぶ必要があります。

5.4 与件文の根拠

社員の多くは内装材の製造関連の技術職と法人営業の担当者であり、とりわけ技術職にはA 社での勤務経験の長い社員が多い。

A社の社員構成が内装材の技術職と法人営業に偏っていたことを示しており、消費者を知る力が社内に乏しかった理由の直接の根拠です。

とりわけ、保育・教育施設は実際に木育を実践する場であり、子どもたちが日常的にA 社の製品に触れる機会となることで、知育玩具に関する新たなアイデアの源泉となった。

保育・教育施設が木育を実践する場であり、子どもが日常的に製品に触れることを示しており、実証実験からアイデアが得られる仕組みの根拠になります。

学生たちの柔軟な発想は、A 社に新たな気づきをもたらし、製品開発のサイクルを加速させた。

大学の学生の柔軟な発想が新たな気づきをもたらし、製品開発のサイクルを速めたことを示す、大学連携が効いた直接の根拠です。

5.5 因果のメカニズム

5.5.1 社内に乏しかった消費者理解

A社の社員は内装材の技術職と法人営業が中心であり、勤務経験の長い社員が多い体制でした。企業向けの取引を前提にしたこの体制であったため、消費者が製品をどう使い、何を求めるかを知る力は社内に乏しく、この知る力の不足が後の取り組みを必要にしたと読めます。

5.5.2 保育・教育施設から得たもの

保育・教育施設は木育を実践する場であり、子どもたちが日常的にA社の製品に触れます。この日常的な接触があることで、大人が想定しなかった使われ方や、知育玩具に関する新たなアイデアの源泉が得られ、社内だけでは集まらない情報が加わると考えられます。

5.5.3 大学との連携から製品開発への帰結

地元の大学とのワークショップでは、学生たちが知育玩具の新たなアイデアや既存製品の改善点を議論します。学生の柔軟な発想がA社に新たな気づきをもたらすため、社内だけでは出にくい視点が加わり、この気づきが製品開発のサイクルを加速させたと読めます。

5.6 診断士としての判断:なぜこれが主筋になるのか

本補題の主筋は、県の支援による実証実験や大学とのワークショップという取り組みを紹介することではなく、それらがA社に乏しかった何を補い、どう製品開発に戻したのかという仕組みを説明することにあります。A社の社員は内装材の技術職と法人営業が中心であり、消費者がどう製品を使うかを知る力は社内に乏しいままでした。保育・教育施設は子どもが日常的に製品に触れる場であるため、使われ方や新たなアイデアという情報をA社にもたらします。

大学の学生は柔軟な発想を持ち込み、ワークショップや共同研究を通じて改善点として集まります。社内に乏しい消費者理解を、この二つの社外の場が補い、得た情報を製品開発に戻すことで開発の速度が上がったという流れが本問の答えです。直営店やEC出店、SNS発信、子育てイベントといった取り組みを並べるだけの答案は、元設問と同じ取り組みの紹介に留まり、製品開発に効いた理由を説明していないため優先順位を下げます。「資源や能力の補完」「組織学習」といった語を置くだけで、何が不足し、どの場が何を補ったかを書かない答案も、因果の結びが無いため落とす候補です。「顧客ニーズを把握するため」のような、どの新規事業にも言える一般論も、A社固有の理由になっていないため主筋からは外れます。

ここから持ち帰る原則 得たものを自社の活動へ戻すところまで示せているかで材料を選び、外部の取り組みを列挙するだけで戻し先を書かない記述は落とします。

5.7 よくある浅い理解やズレ

  • 直営店・アンテナショップ・EC・実証・SNS・大学連携という取り組みを並べ、効いた理由を書かない答案:取り組みの名前を挙げるだけでは元設問の答えの繰り返しであり、それがなぜ製品開発に効いたのかという因果が示されていません。 直し方は、取り組みの名前ではなく、社内に何が乏しく、それを何が補ったのかという対応を書きます。 書き換えると「消費者理解の乏しさを、施設と学生という場が補った。」となります。
  • 「資源や能力の補完」「組織学習」「外部資源の活用」などの語を置くだけで、何が不足しどの場が何を補ったかを書かない答案:採点基準の語をそのまま置くだけで、社内の何が乏しく、どの外部の場がそれを補ったのかという具体の対応が示されていません。 直し方は、語を単独で置かず、社内の不足とそれを補った場を対にして書きます。 書き換えると「技術職偏重で乏しい消費者理解を、施設と学生が補った。」となります。
  • 「顧客ニーズを把握するため」「認知度を高めるため」など、どの新規事業にも言える説明にとどまる答案:A社の人員構成や、保育・教育施設と大学という場の性質に触れておらず、どの企業にも当てはまる説明になっています。 直し方は、A社の人員構成の偏りと、施設・大学という場の性質を具体的に書きます。 書き換えると「技術職中心の社内に、施設と学生の視点を取り込んだ。」となります。

5.8 150字答案に落とす際の絞り方

残すもの:

  • 社員構成の偏りによる消費者理解の乏しさ
  • 保育・教育施設という日常の場から得られる使われ方とアイデア
  • 大学の学生の柔軟な発想による改善点
  • 社外の場が不足を補い製品開発に戻す仕組み

思い切って捨てるもの:

  • 直営店・アンテナショップ・ECという販路の詳細
  • SNS発信や子育てイベント出展の具体的な内容
  • 取り組みの時系列的な経緯

整理例:

理由は、社員の多くが内装材の技術職と法人営業で消費者を知る力が社内に乏しいためである。木育を実践する保育・教育施設では子どもが日常的に製品に触れることで使われ方や新たなアイデアが得られ、加えて大学では学生の柔軟な発想が改善点として集まる。これにより社外の場が不足を補い、製品開発の速度が上がったため。

ここまでで、社外の場が社内の消費者理解の不足をどう補ったのかという仕組みを確認しました。次の第3問では、事業の成長とともに浮かび上がってきた組織体制のあり方について考えていきます。

6. 第3問

【設問文】 A 社社長は、木製知育玩具の新規事業を成長させていくに当たって、全社的な組織改革を検討している。それに対して、採用すべき組織体制とその理由に関して100字以内で助言せよ。

【配点】 第3問(配点20点)

【出題の趣旨】 企業向けの既存事業と一般消費者向けの新規事業の双方を、資源や能力に制約を持つA 社が効果的に推進するための組織体制に関する助言能力を問う問題である。

6.1 この設問で問われていることの一言整理

答えの重心は、内装材と知育玩具の技能差に応じて体制を事業別に分けることを土台に置き、資源の重複回避とX事業の知見継承をその理由として結びつける点にあります。

6.2 設問要求の分解

この設問が求めているのは、組織体制の名称を挙げることだけではありません。全社的な組織改革に当たって採用すべき体制と、その体制を選ぶ理由の両方を助言する必要があります。答える視点は、中小企業診断士としての組織設計の視点です。体制の型を一つ示したうえで、なぜその型が内装材事業と知育玩具事業の双方に適するのかという因果まで示すことが求められます。字数は100字以内であり、体制と理由という二つの要素を、限られた字数の中でどちらも欠かさず書く必要があります。

6.3 与件文の根拠

内装材事業と知育玩具事業では、求められるスキルセットや思考様式も異なる

内装材と知育玩具とで必要な技能や考え方が違うことを示す記述です。事業別に分けて体制を組むべき理由の、直接の根拠になります。

内装材と新規事業、そしてX 事業をどのように連携させ、限られた経営資源を効果的に配分していくか

社長自身が、限られた経営資源をどう配分するかを組織改革の検討課題として挙げている記述です。資源配分という理由の、根拠になります。

X 事業を担当してきた社長の子息の発案による部分も大きかった

新規事業の推進に、X事業を担当してきた子息の発案が寄与してきたことを示す記述です。その知見を体制に組み込む理由の、根拠になります。

新たな市場や事業機会を探索できる体制を構築する必要性を痛感している

社長が、新しい市場や事業機会を探索できる体制の必要性を感じていることを示す記述です。市場変化への対応速度という理由の、根拠になります。

6.4 因果のメカニズム

6.4.1 事業別区分と技能の活用

内装材事業と知育玩具事業とでは、求められる技能や考え方が異なります。両方の事業を同じ部門の中で扱うと、この違いが埋もれてしまいます。そこで事業ごとに部門を分ければ、それぞれの技能に合った配置や育成がしやすくなります。事業別の体制は、技能の違いを埋もれさせずに活かす仕組みになります。

6.4.2 資源の重複回避と両立

内装材と新規事業、そしてX事業という複数の事業を、A社は限られた人材と資源で同時に動かす必要があります。体制を分けずに運営すると、どの事業にどれだけ資源を割くかがあいまいなまま重なり合ってしまいます。事業ごとに担当や資源配分を明確に分けることで、重複を避けながら複数の事業を並行して進められます。事業別の区分は、資源配分を効率化する仕組みとして働くと考えられます。

6.4.3 X事業の知見と市場変化への対応

X事業では、子息が工場併設の直営店や県のアンテナショップを通じて消費者と接しながら、木製の家具やペンの製造・販売を担ってきました。この経験は、知育玩具という新しい消費者向け事業にも直接活かせる知見です。体制の中にX事業の知見を引き継ぐ位置づけを設けることで、知育玩具事業は市場の変化を捉えながら新しい事業機会を探索しやすくなります。次世代を育てる視点も、この体制づくりに重なります。

6.5 診断士としての判断:なぜこれが主筋になるのか

この設問の主筋は、体制の名称を答えることではありません。内装材事業と知育玩具事業とで求められる技能や考え方が異なるという与件の事実に照らして、なぜ事業別の区分が他の型より妥当かを、理由まで一貫して示すことにあります。指揮系統を二重に持つ体制は、社員30名という規模のA社には運用の負荷が重すぎると考えられます。この型は候補から外れます。事業を分けずに機能ごとに束ねる体制も、内装材と知育玩具の技能の違いを与件が明示している以上、この違いを消してしまう型であり、候補から外れます。事業別の区分を土台に置いたうえで、資源配分の効率化、X事業の知見の活用、市場変化への対応速度という三つの理由を、優先順位をつけて示すことが、この設問の中心になります。体制の型だけを書いて理由に触れない答案や、理由だけを抽象的に並べる答案は、得点が伸びにくいと考えられます。

ここから持ち帰る原則 理由や材料が複数あるときは、設問の要求に直接効くものを先に置き、補足にあたるものは順位を下げ、字数が足りなければ補足から削ります。

6.6 よくある浅い理解やズレ

  • 『事業別に分ける』とだけ体制の型を示し、限られた資源をどう効率配分するかという理由に触れない答案:体制の型を挙げるだけでは、なぜその型で限られた資源を重複なく配分できるのかという、採点基準が求める理由まで示せていません。 直し方は、体制の型を挙げた直後に、資源をどう重複なく配分できるかという理由を一文で続けて書きます。 書き換えると「技能差に応じ事業別に分け資源を重複なく配分する。」となります。
  • 機能別組織やマトリクス組織を提案し、内装材と知育玩具のスキルセット・思考様式の違いという与件の事実と矛盾する答案:機能別やマトリクスの型は、与件が明示する内装材と知育玩具の技能や考え方の違いをかえって埋もれさせ、体制を分ける理由と正面からぶつかります。 直し方は、技能差を消さない型として、事業別の区分を体制の軸に据えて書き直します。 書き換えると「知育玩具事業部を新設し内装材事業と分離する。」となります。
  • 体制の型だけを述べ、X事業・子息のBtoC知見の活用や市場変化への対応速度という理由に触れない答案:体制の型のみでは、X事業で培った消費者向けの知見をどう活かし市場変化にどう対応するのかという、採点基準の後段が読み取れません。 直し方は、体制の型に続けて、X事業の知見をどう継承し市場変化にどう対応するかを一文で添えます。 書き換えると「X事業の知見を継承し市場変化に迅速対応する体制とする。」となります。

6.7 100字答案に落とす際の絞り方

残すもの:

  • 事業別の区分体制(内装材と知育玩具を分ける)
  • 限られた資源の重複回避・効率配分という理由
  • X事業・子息の知見を新規事業側で活かす位置づけ
  • 市場変化への対応速度・次世代育成という理由

思い切って捨てるもの:

  • 内装材事業の社員構成や勤続年数の詳細
  • 県や大学との連携の具体的な経緯

整理例:

内装材と知育玩具は求められる技能が異なるため事業別に分け、子息を新規事業の責任者に置く。限られた資源を重複なく配分して両事業を並行運営し、X事業の知見を継承して市場変化に迅速対応する。

事業別の体制を選んだところで、次節の補題では、子息一人に集中する権限をどう段階的に委ね、次世代のリーダー候補や専門人材をどう確保・育成すればこの体制が機能するのかを考えます。

7. 第3問補題

【補題文】 A社社長は、内装材事業と木製知育玩具事業を別々の単位とする組織改革を検討している。この体制を機能させるために、A社が人材の面で採るべき取り組みについて、100字以内で助言せよ。

【補題配点】 20点

7.1 元設問とのつながり

元設問では、内装材事業と知育玩具事業を分ける事業別の組織体制という施策を導きました。しかし、体制の型と理由さえ示せば得点に届く面があります。その体制を誰が担うのかという点には、元設問では触れません。与件が課題として挙げる次世代リーダーの育成や、専門知識を持つ人材の確保は、元設問に満点でも答えないまま残ります。補題では、事業別の体制を機能させるためにA社が人材の面で採るべき取り組みを問います。体制の型を選べることと、その体制を回す人をどう用意するかまで言えることは別だという点を見る設問です。

7.2 この補題で問われていることの一言整理

答えの重心は、子息ひとりに集中する権限をほどく段階的な委譲を起点に置き、そこへ次世代育成と専門人材の確保・配置を重ねる点にあります。

7.3 設問要求の分解

この補題が求めているのは、内装材事業と知育玩具事業を別々の単位とする組織改革を、実際に機能させるための人材面の取り組みです。答える視点は、体制の型ではなく、その体制を回す人をどう用意するかという運用の視点です。子息一人に権限が集中している現状を踏まえ、誰に何を委ね、どこで次世代の候補を育て、どのように専門人材を確保するかという実行の中身が問われます。字数は100字以内であり、助言せよという設問文のとおり、A社が採るべき取り組みを断定の形で書くことが求められます。

7.4 与件文の根拠

現状では、社長の子息が新規事業に深く関与しているが、事業規模の拡大に伴い、彼一人の力では限界が見え始めている。

子息一人に新規事業の権限が集中し、規模拡大に伴って限界が見え始めていることを示しています。権限を委ねる相手を増やす必要性の直接の根拠になります。

次世代のリーダー候補をどのように育成し、さらには、新規事業に必要な専門知識を持つ人材をどのように確保・育成するかといった点を課題と考えている。

社長自身が、次世代のリーダー候補の育成と専門知識を持つ人材の確保・育成を、組織改革の検討課題として挙げている記述です。この二点が人材面の取り組みの核であることの根拠になります。

X 事業では、木製のオーダーメイド家具やペンといった製品を製造・販売しており、工場併設の直営店や同県のアンテナショップを通じて、消費者との接点も持っている。

X事業がすでに製造から販売、消費者接点までを担う実働の場であることを示しています。次世代の候補に実務を任せられる場として使える根拠になります。

同県からは、県内の保育園や幼稚園、放課後児童クラブなどでの実証実験の支援や、県の広報媒体を通じたPR 協力が得られた。

県の支援で実証実験に取り組める場がすでに用意されていることを示しています。X事業と並ぶ、若手が実務経験を積める場の根拠になります。

7.5 因果のメカニズム

7.5.1 子息への権限集中とその限界

現状では、新規事業への関与が社長の子息一人に集中しています。事業規模が拡大するにつれ、彼一人の力では対応しきれない場面が増えてきました。そのため、権限や判断を他の担当者へ段階的に委ねる仕組みが必要になります。子息一人に権限が集中したままでは、事業の成長速度に人材の面が追いつかなくなると考えられます。

7.5.2 次世代リーダーを育てる場

X事業は、家具やペンの製造・販売から消費者との接点までを一通り担う実働の事業です。ここで若手に実務を任せれば、企画から販売までの経験を積ませることができます。加えて、県の支援による保育・教育施設での実証実験も、消費者と接する現場として使えます。これらの場を通じて、子息に続く次世代の候補を計画的に育てられると考えられます。

7.5.3 専門人材の確保と配置

内装材事業と知育玩具事業とでは、求められる知識や技能が異なります。社内の人材だけでは、双方に必要な専門知識をすぐには揃えられません。そこで、専門知識を持つ人材を中途採用や地元の大学との連携によって外部から確保し、事業ごとの配置と育成制度を整えれば、二つの事業を支える人材の基盤ができると考えられます。

7.6 診断士としての判断:なぜこれが主筋になるのか

この補題の主筋は、事業別の体制を機能させるために、A社が人材の面で何をすべきかを具体的に言えるかにあります。子息一人に新規事業の権限が集中し、事業規模の拡大に伴って限界が見え始めているという与件の事実が出発点です。まず、この集中を解く段階的な権限委譲を示す必要があります。そのうえで、X事業や実証実験といった与件にある場を使い、次世代のリーダー候補を実務を通じて育てることが求められます。加えて、専門知識を持つ人材を中途採用や大学連携で確保し、事業ごとの配置と育成制度を整えることも、仕組みとして具体的に書く必要があります。

一方、体制の型を選んだ理由(スキルの違いや資源配分、市場変化への対応)をそのまま繰り返す答案は、元設問の答えの流用であり、この補題が問う人材面の取り組みには届きません。研修の充実や採用の強化といった、どの企業にも言える一般的な人事施策だけで済ませる答案も、与件にある具体的な手がかりを使っていないため、落とす候補になります。

ここから持ち帰る原則 前の設問で使った理由をそのまま繰り返す記述と、与件の手がかりを伴わない一般論は、材料から外します。

7.7 よくある浅い理解やズレ

  • 事業部制を選んだ理由(スキルの違い・資源配分・市場変化への対応)をそのまま書く答案:体制を選ぶ理由の繰り返しであり、その体制を誰がどう担うのかという人材面の取り組みに答えていません。 直し方は、体制を選んだ理由ではなく、権限を委ねる相手と育成・確保の中身を書きます。 書き換えると「子息の権限を担当者へ段階的に委ね、次世代候補を育てる。」となります。
  • 『権限委譲』『次世代リーダー』『専門人材』といった語を並べるだけの答案:誰に何を委ね、どこで育て、どう確保するかという具体の中身が無く、採点基準が見る配置や場が示せていません。 直し方は、委ねる相手・育てる場・確保の手段を、与件の言葉で具体的に書きます。 書き換えると「X事業や実証の場で若手に実務を任せ次世代を育てる。」となります。
  • 『研修を充実させる』『採用を強化する』など、どの企業にも言える一般的な人材施策で済ませる答案:与件にあるX事業や実証実験、大学連携といった具体的な手がかりを使わず、どの企業にも言える人事施策にとどまっています。 直し方は、与件にある場や連携先を使い、確保と育成の手段を具体的に書きます。 書き換えると「専門人材は中途採用と大学連携で確保し配置を整える。」となります。

7.8 100字答案に落とす際の絞り方

残すもの:

  • 子息一人への集中を解く段階的な権限委譲
  • X事業や実証の場を使った次世代リーダーの計画的育成
  • 専門知識を持つ人材の確保と事業別の配置・育成制度の整備

思い切って捨てるもの:

  • 体制の型を選んだ理由(スキルの違い・資源配分・市場変化への対応)の再掲
  • 研修充実や採用強化といった一般的な人事施策の説明

整理例:

子息に集中する権限を段階的に担当者へ委ね、X事業や実証の場で若手に実務を任せることで次世代の候補を育てる。さらに専門知識を持つ人材は中途採用と大学との連携で確保し、事業別の配置と育成制度を整える。

体制を機能させる人材の手当てが整ったところで、次は第4問に移り、この組織改革に対してA社の企業理念をどう再定義し、社内外にどう浸透させればよいのかを考えます。

8. 第4問

【設問文】 A 社は、木製知育玩具の新規事業を拡大させるに当たり、自社の創業以来の企業理念をどのようなものへと再定義したり、それを関係者に浸透させたりすればよいのか。150 字以内で助言せよ。

【配点】 第4問(配点30点)

【出題の趣旨】 A 社が新規事業を推進するにあたり、どのようなものに企業理念を見直したり、いかにそれを社内外に伝達・浸透させたりすればよいかの助言能力を問う問題である。

8.1 この設問で問われていることの一言整理

答えの重心は、地域の木材が生む価値と子どもの豊かな生活という二つの軸で既存と新規の事業を束ねる再定義に置かれ、その理念を社内には対話と制度で、社外にはネットワークを通じて別々に届ける点にあります。

8.2 設問要求の分解

この設問が求めているのは、企業理念の文言を挙げることだけではありません。創業以来の理念をどのようなものへ再定義するかという中身と、それを社内外の関係者へどう浸透させるかという方法の両方を助言する必要があります。答える視点は、中小企業診断士としての理念浸透の視点です。浸透については、従業員を対象とする社内向けの方法と、顧客や地域、教育機関を対象とする社外向けの方法とを、区別して示すことが求められます。字数は150字以内であり、再定義と社内外の浸透という三つの要素を、限られた字数の中でどれも欠かさず書く必要があります。

8.3 与件文の根拠

自然から頂いた木を、生活する人々が豊かになるよう社会にお返しする

創業以来の企業理念そのものを示す記述です。再定義がこの理念のどの部分を引き継ぎ、どの部分を広げるのかを考える出発点になります。

木材と触れ合う中で子どもたちの豊かな心を育む「木育」への、教育や子育て支援の場でのニーズの増加

木育という考え方への社会的な関心の高まりを示す記述です。理念を子どもの豊かな生活というテーマへ広げる根拠になります。

既存事業を支えてきた社員たちは新規事業の必要性を十分には理解できなかった

既存の社員が新規事業の意義をまだ十分に理解していないことを示す記述です。社内への浸透策が必要である理由の、根拠になります。

放課後児童クラブなどでの実証実験の支援や、県の広報媒体を通じたPR 協力が得られた

県という社外の組織から、実証の場や広報での協力を得てきたことを示す記述です。社外への浸透策で使える経路の、根拠になります。

8.4 因果のメカニズム

8.4.1 理念の再定義と事業の包摂

A社の創業理念は、木を通じて人々の暮らしを豊かにすることを掲げています。この理念は内装材事業を支えてきましたが、知育玩具事業が目指す木育や子どもの成長を、そのままでは十分に言い表せません。そこで理念を、地域の木材が生む価値と子どもの豊かな生活という二つのテーマへ広げれば、既存事業と新規事業を同じ目的の下に束ねられます。理念の再定義は、二つの事業を一本の軸でつなぐ仕組みになります。

8.4.2 社内浸透と協力の獲得

既存の社員たちは、新規事業に踏み出す決断を十分には理解できていませんでした。理念を新しくしても、社員に伝わらなければ、日々の仕事の中で協力を得ることはできません。そこで経営者との対話や説明会、研修を通じて理念を繰り返し共有すれば、社員は新規事業を自分の仕事の延長として受け止めやすくなります。評価や育成の制度に理念を組み込むことで、浸透は一時的な説明にとどまらず行動として定着すると考えられます。

8.4.3 社外浸透とネットワークの活用

A社は、県の広報や実証の場、地元大学との連携、SNSでの発信という複数の社外との接点をすでに持っています。理念を再定義しても、これらの接点を使わなければ、顧客や地域に理念の中身は伝わりません。そこでWebやSNSでの発信、イベントへの出展、県や大学との連携を通じて理念を発信すれば、社外の関係者にも新しい理念が届きます。社外への浸透は、既存のネットワークを理念の伝達経路として使う仕組みになると読めます。

8.5 診断士としての判断:なぜこれが主筋になるのか

この設問の主筋は、理念の文言を新しく書き換えることだけではありません。地域の木材が生む価値と子どもの豊かな生活という二つのテーマで、既存の内装材事業と新規の知育玩具事業を一つの理念の下に束ねる再定義が、まず土台になります。この再定義が欠けたままでは、社内外への浸透策をどれだけ丁寧に書いても、答案全体の評価は伸びにくいと考えられます。再定義を土台に置いたうえで、浸透策は社内向けと社外向けに分けて示す必要があります。対話や研修、制度連動といった社内向けの方法と、Webや大学連携といった社外向けの方法を一方だけに絞る答案は、要求の半分にしか応えられていません。創業理念をそのまま書き写すだけで、木育や子どもの成長という新規事業側のテーマに触れない答案は、再定義という土台そのものを欠くため、候補から外れます。

ここから持ち帰る原則 働きかける相手が異なる施策は対象ごとに区別し、一方の対象向けの手段をもう一方には使いません。

8.6 よくある浅い理解やズレ

  • 創業理念をそのまま逐語で引用するだけで、地域木材の価値創造と子どもの豊かな生活という新規事業を包摂する再定義に触れない答案:理念の文言を書き写すだけでは、既存事業と新規事業を共通の目的で束ねるという再定義の中身が答案から読み取れません。 直し方は、創業理念の言葉を、地域の木材が生む価値と子どもの豊かな生活という新しいテーマへ具体的に広げて書きます。 書き換えると「地域木材の新たな価値創造で子どもの豊かな生活に貢献する理念へ再定義する。」となります。
  • 理念の再定義だけを書き、社内への浸透策(対話・研修・制度連動)または社外への浸透策(Web・SNS・イベント・県・大学連携)のどちらかを欠く答案:浸透は社内向けと社外向けの両方が採点基準の対象であり、一方が欠けると要求の半分にしか応えられません。 直し方は、再定義に続けて、社内向けの浸透策と社外向けの浸透策をそれぞれ一つずつ書き添えます。 書き換えると「経営者対話と研修で社内に、SNSと県連携で社外に発信する。」となります。
  • 社内浸透と社外浸透を区別せず、どちらか一方の施策を両方の対象に流用する答案:社内向けの対話や研修と、社外向けのWebやイベントとでは対象も手段も異なり、区別せずに書くと双方とも具体性を欠いたまま終わります。 直し方は、従業員向けの施策と社外の関係者向けの施策を分け、対象ごとに異なる具体的な手段を書きます。 書き換えると「社内は研修で浸透させ、社外はWebと大学連携で発信する。」となります。

8.7 150字答案に落とす際の絞り方

残すもの:

  • 地域木材の価値創造と子どもの豊かな生活という再定義の二本柱
  • 既存事業と新規事業を束ねる包摂性
  • 社内浸透策(対話・研修・制度連動)
  • 社外浸透策(Web・SNS・イベント・県・大学連携)

思い切って捨てるもの:

  • 創業理念の文言そのものの逐語引用
  • X事業の実験的な展開に関する経緯

整理例:

地域木材の新たな価値創造と子どもの豊かな生活への貢献という理念へ再定義し、既存と新規の事業を共通の理念で束ねる。社内には経営者対話や研修、制度連動で浸透させ、社外にはWebやSNS、イベント、県や大学との連携で発信する。

理念を再定義したところで、次節の補題では、事業別に分けた部門がそれでもなお内装材の技術や既存社員の協力に依存している事実に対して、再定義した理念がどのような働きをして部門を結ぶのかを考えます。

9. 第4問補題

【補題文】 A社社長は、内装材事業と木製知育玩具事業をそれぞれ別の単位とする組織改革に着手しようとしている。A社が企業理念を再定義することは、この組織改革に対してどのような働きをすると考えられるか。150字以内で述べよ。

【補題配点】 30点

9.1 元設問とのつながり

元設問では、地域木材の価値創造と子どもの豊かな生活という二つのテーマで理念を再定義し、社内外への浸透策を導きました。もっとも、理念の中身と浸透策さえ書けば得点に届く面があります。組織を事業別に分けるほど両部門を結ぶ軸が要るという、組織体制の側との依存の向きには触れません。補題では、内装材事業と知育玩具事業を別の単位とする組織改革に対して、理念を再定義することがどのような働きをするのかを問います。元設問に満点で答えても、理念と組織体制のどちらがどちらを必要としているのかは答案に現れません。補題はその向きを問います。

9.2 この補題で問われていることの一言整理

答えの重心は、事業を分けてもなお残る技術面と人の面の依存を、再定義した理念が両事業に通じる目的として結び直す点にあります。

9.3 設問要求の分解

この補題が求めているのは、内装材事業と知育玩具事業を別の単位とする組織改革に対して、企業理念を再定義することがどのような働きをするのかという説明です。答える視点は、理念の中身ではなく、理念と組織体制という二つの論点がどちらに依存しているのかという関係の視点です。事業を分けることでスキルや速度に応じた運営ができる利点が生まれる一方、分けたあとも技術と人の面で残る依存を、理念がどう支えるのかを述べる必要があります。字数は150字以内であり、考えられるかという問いの形どおり、推論として結論を述べる書き方が求められます。

9.4 与件文の根拠

内装材事業と知育玩具事業では、求められるスキルセットや思考様式も異なるため、社員の配置や育成制度についても見直しが必要ではないかと考え始めていた。

内装材と知育玩具とで必要な技能や考え方が違うことを示す記述です。事業を分けて運営する利点の、直接の根拠になります。

主力事業である内装材の製造で培われた薄板加工技術や、美しい木目を活かすための仕上げ技術は、高品質な知育玩具を製造する上で活かされた。

知育玩具の品質が、内装材事業で培った加工技術に支えられていることを示す記述です。事業を分けたあとも技術面の依存が残る根拠になります。

既存事業を支えてきた社員たちは新規事業の必要性を十分には理解できなかった。

既存の社員が新規事業の必要性を十分には理解できていないことを示す記述です。事業を分けたあとも協力を得る必要が残る根拠になります。

事業のさらなる成長と持続可能性を確保するための次なる一手、すなわち組織体制と人材育成のあり方についての検討課題が浮かび上がっていた。

社長が、事業の持続可能性を確保するために組織体制と人材育成の検討課題を意識し始めたことを示す記述です。理念の再定義が組織体制の議論と結びつく背景の根拠になります。

9.5 因果のメカニズム

9.5.1 事業別に分けることで得られる利点

内装材事業と知育玩具事業とでは、求められる技能や考え方が異なります。両方を同じ体制の中で扱うと、この違いが埋もれてしまいます。そこで事業ごとに分ければ、それぞれの速度や技能に合わせた運営ができるようになります。分けることは、まず運営面の利点を生む選択だと言えます。

9.5.2 分けても残る資源面と人の面の依存

知育玩具の品質は、内装材事業で培った加工技術や仕上げ技術に支えられているため、体制を分けても技術の共有はどうしても必要になります。加えて、既存の社員は新規事業の必要性をまだ十分には理解できていないため、分けたあとも既存事業側の協力を得る必要が残ると考えられます。事業を分けることは、依存そのものを消すわけではありません。

9.5.3 理念が果たす結びの働き

分けることで生まれる技術面と人の面の依存を、体制の仕組みだけで解消することはできません。ここで、木を人々の豊かな生活に返すという理念を、地域木材の価値創造と子どもの成長という新規事業のテーマまで広げて再定義すれば、両事業に共通する目的になります。共通の目的があれば、既存社員にも新規事業に協力する理由が生まれます。理念は、分けた部門を結ぶ軸として働くと考えられます。

9.6 診断士としての判断:なぜこれが主筋になるのか

この補題の主筋は、内装材事業と知育玩具事業を分ける組織改革に対して、理念を再定義することがどのような働きをするのかを、組織体制の側から理念の側への依存として説明できるかにあります。事業を分ければ、技能や速度の違いに応じた運営ができるという利点がまず生まれます。しかし、知育玩具の品質は内装材事業で培った加工技術に支えられ、既存社員は新規事業の必要性を十分には理解できていないという、分けても消えない依存が残ります。この残る依存に対して、再定義した理念が両事業に通じる目的となり、社員が協力する理由を与えて部門を結ぶ、という働きまで書くことが、この補題の中心になります。

一方、理念の中身や社内外への浸透策をそのまま書く答案は、元設問の答えの流用であり、組織体制との関係という補題の問いには答えていません。効果を表す言葉だけを置き、理念のどの中身が両事業のどこに通じ、誰が何をするようになるのかを書かない答案も、落とす候補になると考えられます。

ここから持ち帰る原則 効果を表す言葉だけを使い、その効果が何にどう働くのかを書いていない記述は、材料から外します。

9.7 よくある浅い理解やズレ

  • 理念の再定義文と社内外への浸透策をそのまま書く答案:元設問の答えの繰り返しであり、理念が組織体制に対してどう働くのかという補題の問いに答えていません。 直し方は、理念の中身ではなく、理念と組織体制がどちらに依存しているのかを書きます。 書き換えると「分けても残る技術と人の依存を、理念が結ぶ軸になること。」となります。
  • 『分化と統合』『共通理念』『求心力』などの語を並べるだけの答案:何が何に依存し、理念が誰の何を変えるのかという具体の中身が無く、採点基準が見る対応関係が示せていません。 直し方は、依存の中身と、理念がその依存にどう働くかを、与件の言葉で具体的に書きます。 書き換えると「加工技術の共有と社員の協力を理念が支えること。」となります。
  • 『理念は組織の一体感を高める』のように、どの企業にも言える理念の役割だけを書く答案:与件にある技術面・人の面の具体的な依存に触れておらず、どの企業の組織改革にも当てはまる一般論にとどまっています。 直し方は、与件にある技術と人の依存を名指し、理念がそれをどう支えるかを書きます。 書き換えると「木の理念が両事業をつなぎ協力を引き出すこと。」となります。

9.8 150字答案に落とす際の絞り方

残すもの:

  • 事業別に分けることの利点(スキルと速度の違いに応じた運営)
  • 分けても残る資源面の依存(内装材の加工技術が知育玩具の品質を支える)
  • 分けても残る人の面の課題(既存社員が新規事業の必要性を十分には理解できていない)
  • 両事業に通じる目的としての理念が、分けた部門を結ぶ軸になること

思い切って捨てるもの:

  • 理念の再定義文や社内外への浸透策の具体的な手段
  • 『共通理念』『求心力』といった効果を表す言葉だけの表現

整理例:

働きは、分けた部門を結ぶ軸になることだ。分ければスキルや速度に応じた運営ができる一方、知育玩具の品質は内装材の加工技術に支えられ共有が要り、既存社員は新規事業の必要性を十分には理解できておらず協力も要るためである。加えて木を人々の豊かな生活に返す理念が両事業に通じる目的となり、協力の理由となる。

ここまで4つの設問とその補題を通じて、A社の環境認識から組織体制、そして理念の再定義までを見てきました。次はこの記事全体の流れを振り返り、まとめに入ります。

10. まとめ

本事例は、A社が木製知育玩具という新規事業に進出した際の強み・弱み・機会・脅威を整理する環境認識から始まります。この環境認識で洗い出した資源や制約が土台になります。企業向け事業を中心としてきたA社は、その土台の上で消費者との接点をどう作るかという資源・能力の補完へ進みます。この補完によって蓄積した経験は、事業別に分ける組織体制を要請しました。内装材事業と知育玩具事業を分けたうえで、その体制を機能させる人材施策の助言も求められます。この組織改革を実際の成果につなげるには、事業を分けてもなお残る技術面や人の面の依存を結ぶことが要ります。企業理念の再定義と社内外への浸透が、この依存を結ぶ役割を担います。環境認識が資源の補完を促し、資源の補完が組織体制を規定し、組織体制の変化が理念の再定義を求めるという一本の流れがあります。本事例の各設問は、この流れの中に位置づいています。

元設問が問うているのは、与件文に書かれた事実から環境認識・資源補完・組織体制・理念浸透という各局面を診断士として読み解き、設問の要求どおりに整理する力です。これに対して補題は、元設問の理解を別の角度から確かめる役割を担っています。具体的には、元設問がまだ問うていない先の工程を埋めたり、ある設問で使った理解を別の設問の論点に結び直したりします。社外との連携が社内に無い資源を補うという1次知識を、この事例の具体的な事実に当てはめ直すことも、そのひとつです。元設問と補題を往復することで、表面的なキーワードの当てはめではなく、事例全体を貫く理解を自分の言葉で説明できるようになります。

10.1 この事例から持ち帰る原則

  • 第1問 ある事実が内部の要因なのか、外部の変化が生んだ結果なのかを見分け、結果にあたる事実は、その結果が生じた側の区分の材料としては使いません。
  • 第1問補題 複数の事実を、必要性を生んだ事実か、資源が支える適合の事実か、残る弱みへの手当ての事実かに当てはめ、当てはまらない事実は落とします。
  • 第2問 取り組みは名前を挙げるだけでなく、社内の何を補ったのかという対応が言える形に絞り込み、対応が言えないものは落とします。
  • 第2問補題 得たものを自社の活動へ戻すところまで示せているかで材料を選び、外部の取り組みを列挙するだけで戻し先を書かない記述は落とします。
  • 第3問 理由や材料が複数あるときは、設問の要求に直接効くものを先に置き、補足にあたるものは順位を下げ、字数が足りなければ補足から削ります。
  • 第3問補題 前の設問で使った理由をそのまま繰り返す記述と、与件の手がかりを伴わない一般論は、材料から外します。
  • 第4問 働きかける相手が異なる施策は対象ごとに区別し、一方の対象向けの手段をもう一方には使いません。
  • 第4問補題 効果を表す言葉だけを使い、その効果が何にどう働くのかを書いていない記述は、材料から外します。

次に過去問を解くときは、設問を独立した知識問題として解かないことが大切です。環境認識が資源の補完を促し組織体制の変化が理念の再定義を求めるという一本の因果のどこに位置づくかを先に確認してから書き始めると、答案の骨格が変わります。

11. 付録:200点満点セルフチェック用プロンプト

以下は、読者がそのままコピーして生成AIに貼り付け、元設問100点+補題100点の合計200点満点で自分の答案を採点できるプロンプトです。「【ここに全問分の答案をまとめて貼り付ける】」の欄に答案を入れる以外の編集は不要です。

あなたは中小企業診断士2次試験の採点者です。以下の答案を、後述の採点基準に厳密に従って採点してください。

## 答案の貼り付け欄

【ここに全問分の答案をまとめて貼り付ける】

貼り付けの形式(見出しごとに答案を書く):
【第1問・強み(S)】(30字以内)
(答案)
【第1問・弱み(W)】(30字以内)
(答案)
【第1問・機会(O)】(30字以内)
(答案)
【第1問・脅威(T)】(30字以内)
(答案)
【第1問補題】(120字以内)
(答案)
【第2問】(150字以内)
(答案)
【第2問補題】(150字以内)
(答案)
【第3問】(100字以内)
(答案)
【第3問補題】(100字以内)
(答案)
【第4問】(150字以内)
(答案)
【第4問補題】(150字以内)
(答案)

## 採点の指示

1. 元設問(合計100点)と補題(合計100点)を合わせた **200点満点** で採点する。
2. 採点は下の「採点基準」の加点要素ごとに積み上げる。基準に書かれていない観点で加点・減点しない。
3. 各加点要素について「該当/部分該当/非該当」を判定し、部分点の目安に照らして点を決める。判定理由は答案の該当箇所を引用して示す。
4. 字数制限を超えた答案は、その設問の得点を上限の8割に抑える。**解答欄が複数ある設問は欄ごとに字数を見る。**全欄の合計ではなく、各欄が上限を超えていないかで判定し、超えた欄がある場合にのみその設問に適用する。
5. 語句の一致ではなく論点の一致で判定する。同じ論点の言い換えを別の要素として二重に数えない。
6. 出力は次の順で書く。
   - 設問別採点表(設問/要素/判定/得点/理由)
   - 元設問 小計(/100)・補題 小計(/100)・合計(/200)
   - 設問別の講評(各150字程度。良い点を1つ、直すべき点を1つ)
   - 優先改善点(合計得点に最も効く順に3つ。何をどう書き換えるかまで具体的に)

## 採点基準

### 第1問(20点)

設問文:木製知育玩具の新規事業に進出した際のA 社の現状について、SWOT 分析のそれぞれの観点から、30 字以内で述べよ。

### 目的(設問要求の解釈)

* 出題趣旨は「**外部環境と内部環境**の現状分析をする能力」と明記する。S/Wは内部環境、O/Tは外部環境という区分を**厳格に**維持することが題意そのものである。内部/外部を混同した記述は、要素として語句が合っていても論点として非該当になる。

### 重みづけ(加点要素)


配点合計:20点

#### S:内装材加工技術・木材調達網・X事業経験を押さえている… **+5**
* **判定条件(該当)**:内装材で培った加工技術・仕上げ技術・安全塗料ノウハウ/県内林業家や製材所との調達ネットワーク/地域の木工職人ネットワーク(小ロット多品種生産への対応力)/X事業や子息の消費者向け経験のうち、複数を強みとして整理している。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**: 「加工技術が強み。」のように単一要素。
  * **3点**: 「木材加工技術と調達網。」のように複数要素あり。
  * **5点**: 「Sは加工技術・木材調達網・X事業経験。」のように新規事業に活きる資源が整理されている。

#### W:BtoC体制不足・既存社員理解不足・子息依存を押さえている… **+5**
* **判定条件(該当・内部要因に限定)**
  * 消費者向け事業を支える人材・体制の弱さ、既存社員の新規事業への理解不足、知育玩具事業が子息に依存している点(=本線3要素)を弱みとして示している。
  * 「内装材事業への依存」は、与件が「内装材事業は依然として売上の大半を占める」と明記する事業構成上の事実であり、多角化不足という**内部の構造的弱み**として限定的に認める。ただしこれ単独では本線3要素と同格の主論点にならない(下記部分点参照)。
* **判定条件(非該当・外部要因の混入を排除)**
  * 「内装材事業の収益性の低下・陰り」は、与件が競争激化・公共案件不安定という外部要因の帰結として明記している。**T側の論点であり、W要素としては採用しない**(減点はしないが加点対象外=無視)。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**: 要素が1つのみ(本線・依存いずれか単独)。例:「人材不足。」
  * **3点**: 本線要素を2つ、または本線1つ+依存の組合せで記述がやや簡潔。例:「BtoC体制不足と子息依存。」
  * **5点**: 本線3要素(BtoC体制不足・既存社員理解不足・子息依存)のうち2つ以上を具体的に整理、または本線1つ+依存を明確な形で組み合わせている。例:「WはBtoC体制不足・既存社員理解不足・子息依存。」

#### O:自然素材・国産材志向、木育需要、県・大学支援を押さえている… **+5**
* **判定条件(該当)**:子育て世代の自然素材・国産材志向、木育需要の高まり、県の広報・実証支援、地元大学との連携・共同研究、林業公的団体の活動などから複数を機会として整理している。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**: 「自然素材志向。」のように単一要素。
  * **3点**: 「木育需要と県の支援。」のように複数要素。
  * **5点**: 「Oは自然素材志向・木育需要・県や大学の支援。」のように追い風が多面的。

#### T:内装材競争激化・公共案件不安定・知育玩具競合を押さえている… **+5**
* **判定条件(該当)**:内装材市場の競争激化、公共案件の景気・政策影響による収益不安定性(=内装材事業の収益性低下の直接原因)、知育玩具市場の既存競合存在・トレンド変化の早さから、複数を脅威として挙げている。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**: 「内装材競争。」のように単一要素。
  * **3点**: 「内装材競争と公共案件不安定性。」のように既存事業側の脅威が複数。
  * **5点**: 「Tは内装材競争激化・公共案件不安定・知育玩具競合。」のように新旧事業双方の脅威。

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### 第1問補題(20点)

補題文:A社社長は、内装材事業の収益性に陰りが見え始めたことに危機感を抱き、新たな収益の柱となる新規事業を模索していた。数ある選択肢の中で木製知育玩具事業への進出がA社にとって妥当な判断であった理由を、120字以内で述べよ。

### 目的


* 現状を4観点に分けられることと、分けた要素を「なぜその時点で、なぜ知育玩具だったのか」という選択の判断として結べることは別である。補題はその差を見る。
* 外部の変化(既存事業の収益不安定と、安心・安全や木育への需要)が必要性を生み、内部の資源(加工・塗装の技術と調達網)が実現性を与え、残る弱み(消費者向けの体制)に手当てがあった、という順で結べているかを問う。

### 重みづけ(20点)


* **低評価にする答案の型**
  * 元設問の答案の流用: 強み・弱み・機会・脅威の4観点を分類して並べるだけ。
  * キーワードの列挙: 「環境変化」「経営資源」「収益の柱」などの語と与件の要素名を並べ、何が何を生んだかを書かない。
  * 一般論: 「市場が縮小した」「技術力が高い」など、与件に無い変化や、どの企業にも言える強みで説明する。

#### 要素1:新たな収益の柱を必要にした外部環境… **+5**

* **判定条件(該当)**: 内装材市場の競争激化・公共案件の不安定という外部の脅威が収益を揺るがし、新たな収益の柱を求める状況にあったことを、進出の必要性として示している。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **0点**: 外部環境に触れない、または与件に無い変化を挙げる。
  * **1点**: 「内装材市場は競争が激しい」のように脅威を挙げるだけで、新規事業の必要性と結んでいない。
  * **3点**: 「公共案件は景気や政策の影響を受け収益が安定しない」のように脅威の中身を与件で示すが、新たな柱を求めた理由として言い切っていない。
  * **5点**: 「競争激化と公共案件の不安定で内装材の収益が揺らぎ、新たな柱が必要だった」のように、脅威と新規事業の必要性を因果で結んでいる。

#### 要素2:知育玩具に需要を見込めた機会… **+4**

* **判定条件(該当)**: 子育て世代の自然素材・国産材志向、木育のニーズの高まりを、木製の知育玩具という進出先に需要を見込めた理由として示している。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **0点**: 機会に触れない。
  * **1点**: 「自然素材志向、木育需要、県や大学の支援」のように機会を並べるだけ。
  * **2点**: 「安心・安全な素材を求める傾向が子育て世代に強まっていた」のように機会の中身を与件で示すが、進出先との適合が無い。
  * **4点**: 「子育て世代の安心・安全志向と木育のニーズが高まり、木製玩具に需要を見込めた」のように、機会と進出先の適合まで示している。

#### 要素3:既存の技術・調達網と玩具の品質要求との適合… **+7**

* **判定条件(該当)**: 内装材で培った薄板加工・仕上げ・安全な塗料のノウハウ、県内の林業家や製材所との調達網、地域の木工職人との関係のいずれかを、乳幼児向け玩具に求められる安全・品質・小ロット多品種への対応と結んでいる。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **0点**: 経営資源に触れない、またはどの企業にも言える一般論で述べる。
  * **2点**: 「加工技術、木材調達網、X事業経験が強み」のように資源を並べるだけで、知育玩具の要求との対応が無い。
  * **4点**: 「薄板加工や仕上げの技術が知育玩具の製造に活きる」のように、資源と新規事業の対応を1つ示している。
  * **7点**: 「ささくれを防ぐ加工と口に入れても安全な塗料のノウハウ、県内の林業家や製材所との調達網が、乳幼児向け玩具の安全と品質を支える」のように、資源が玩具の要求に応える形で対応づけられている。

#### 要素4:消費者向けの体制の弱さへの手当て… **+4**

* **判定条件(該当)**: 消費者向け事業を支える人材・体制が乏しいという弱みを挙げたうえで、X事業で消費者と接してきた子息の経験でそれを補えることまで示している。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **0点**: 触れない。
  * **1点**: 「消費者向けの体制が弱い」のように弱みを挙げるだけで、手当てが無い。
  * **2点**: 「子息を責任者にした」のように担い手を挙げるが、どの弱みに対応するかが無い。
  * **4点**: 「消費者向けの体制の弱さは、X事業で消費者と接してきた子息の経験で補える」のように、弱みと補い方を対にして、進出が無理でない理由として示している。

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### 第2問(30点)

設問文:A 社が木製知育玩具の新規事業を展開する際に、顧客との接点を作るために行った取り組みや工夫について、150 字以内で説明せよ。

### 目的(設問要求の解釈)

* 出題趣旨は「企業向け事業に取り組んできたA社が、一般消費者向けの新規事業に挑戦する際の、**資源や能力の補完に関する組織的工夫**を分析する能力」と明記する。単なるチャネル列挙ではなく、**A社に元々欠けていたBtoC機能を、どの資源・仕組みでどう補ったか**という因果が題意の核心。

### 重みづけ(加点要素)


配点合計:30点

#### 消費者向け販路の開拓(直営店・アンテナ・EC)を押さえている… **+10**
* **判定条件(該当)**:自社工場併設直営店、県アンテナショップ、大手ECサイトなど、内装材ルートとは異なる消費者向け販路の開拓に触れている。「消費者向けチャネルを具体名で開拓した」という論点自体が示されていれば満点条件の必須要件とし、既存ルートとの対比言及の有無は問わない。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **2点**: 「販路を広げた。」のように、具体的なチャネル名の言及がない抽象表現のみ。
  * **7点**: 「ECサイトに出店した。」のように、消費者向けチャネルを1〜2種、具体名で挙げている(内装材ルートとの対比言及は満点の必須条件にしない)。
  * **10点**: 「直営店・県アンテナショップ・大手ECで消費者向け販路を開拓した。」のように、直営店・アンテナ・ECの3チャネルをすべて列挙している。
  * **判定補足**: 「対比言及がなければ2点」としていた運用は撤回。単一チャネルでも具体名(EC等)を挙げていれば、消費者向け販路開拓という論点は字数相応に示されているとみなし7点とする。満点は3チャネル網羅の場合に限る(論点の完全性で差をつけ、表現の丁寧さでは差をつけない)。

#### 県支援による保育・教育施設での実証機会を押さえている… **+10**
* **判定条件(該当)**:県の支援を活用し、保育園・幼稚園・放課後児童クラブ等で子どもが日常的に製品に触れる実証機会を作ったことに触れている。「県支援」と「具体的な場(保育・教育施設等)」の**両方**が明示されていれば、改善サイクル等の効果まで踏み込んだ表現がなくても論点は充足しているとみなす。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **2点**: 「県の支援を得た。」のように、支援のみで場の言及がない。
  * **5点**: 「保育・教育施設で実証実験を行った。」のように場は具体的だが県支援との連動の明示がない、または逆に県支援のみで場が具体化されていない。
  * **10点**: 「県の支援で保育・教育施設に実証機会を作った。」のように、県支援と具体的な場の両方が明示されている(改善サイクルやアイデア収集への言及があれば尚良いが満点の必須条件にはしない)。
  * **判定補足**: 「効果への言及がなければ7点上限」としていた運用は撤回。県支援+場という2要件が揃っていれば、それ自体で論点は字数相応に充足しているとみなし満点とする(効果明示は論点の核心ではなく表現の丁寧さの差であり、満点の必須条件にしない)。

#### SNS発信・子育てイベント出展による認知接点を押さえている… **+5**
* **判定条件(該当)**:子息の経営学知見・X事業経験を活かしたSNS情報発信、子育てイベント出展など、見込み客との認知接点作りに触れている。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**: 「SNSで発信した。」のように、最小表現。
  * **3点**: 「SNSとイベントで認知を広げた。」のように、複数施策。
  * **5点**: 「SNS発信・子育てイベント出展で教育熱心な子育て家庭との認知接点を広げた。」のように、ターゲット接続まで明確。

#### 大学ワークショップ・共同研究による改善・新アイデアを押さえている… **+5**
* **判定条件(該当)**:地元大学との教育連携、学生参加ワークショップ、共同研究などの**具体的な形態**に触れている。効果(新アイデア獲得・製品開発加速等)への言及は満点の必須条件にしない。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**: 「大学と連携した。」のように、関係性のみで具体的形態への言及がない。
  * **5点**: 「学生参加のワークショップと共同研究で製品を改善した。」「学生の柔軟な発想を製品開発に取り入れた。」のように、ワークショップ・共同研究・学生参加といった具体的形態が示されている(効果まで書かれていれば尚良いが必須条件にはしない)。
  * **判定補足**: 「効果まで明確でなければ3点止まり」としていた運用は撤回。具体的形態(学生参加・共同研究等)が示されていれば満点とする。関係性のみで形態が示されない場合は1点に据え置く。

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### 第2問補題(30点)

補題文:A社は、木製知育玩具の新規事業で、県の支援による保育・教育施設での実証実験や、地元の大学の学生が参加するワークショップに取り組んだ。企業向けの内装材事業を中心としてきたA社にとって、これらの取り組みが新規事業の製品開発に効いた理由を、150字以内で説明せよ。

### 目的


* 取り組みを知っていることと、それが何を補ったから効いたのかを仕組みとして言えることの差を見る。
* 自社に無い能力を外部との連携で補い、そこで得た情報を製品開発へ戻すという当てはめが、A社の人員構成(内装材の技術職と法人営業)と場の性質(日常的に使われる施設・学生の発想)に即してできているかを問う。

### 重みづけ(30点)


* **低評価にする答案の型**
  * 元設問の答案の流用: 直営店・アンテナショップ・EC・実証・SNS・大学連携という取り組みを並べ、効いた理由を書かない。
  * キーワードの列挙: 「資源や能力の補完」「組織学習」「外部資源の活用」などの語を置くだけで、何が不足し、どの場が何を補ったかを書かない。
  * 一般論: 「顧客ニーズを把握するため」「認知度を高めるため」など、どの新規事業にも言える説明。

#### 要素1:社内に欠けていた消費者を知る力… **+8**

* **判定条件(該当)**: 企業向けの内装材事業が中心で、社員の多くが内装材の技術職と法人営業であるという与件の事実から、消費者の使い方を知る力が社内に乏しいことを示している。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **0点**: 触れない。
  * **2点**: 「消費者理解が不足していた」のように、不足の中身が与件の事実で示されていない。
  * **5点**: 「社員の多くは内装材の技術職と法人営業である」のように与件の事実は挙げるが、消費者を知る力が乏しいという帰結まで書かれていない。
  * **8点**: 「社員の多くは内装材の技術職と法人営業で、消費者が製品をどう使うかを知る力が社内に無かった」のように、与件の事実と帰結の双方を示している。

#### 要素2:保育・教育施設から得たもの… **+8**

* **判定条件(該当)**: 保育・教育施設が木育を実践する場であり、子どもが日常的に製品に触れることを、実際の使われ方や新たなアイデアが得られる理由として示している。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **0点**: 触れない。
  * **2点**: 「県の支援で保育・教育施設で実証実験を行った」のように取り組みを挙げるだけで、そこから何を得たかが無い。
  * **5点**: 「施設での実証から製品の改善点を得た」のように得たものに触れるが、場の性質と結んでいない。
  * **8点**: 「保育・教育施設は木育を実践する場で、子どもが日常的に製品に触れるため、実際の使われ方や新たなアイデアが得られる」のように、場の性質と得られるものを因果で結んでいる。

#### 要素3:大学との連携から得たもの… **+6**

* **判定条件(該当)**: 学生の柔軟な発想が、ワークショップや共同研究を通じて改善点や新たなアイデアとして集まることを示している。満点は**学生の発想という性質**に触れている場合に限る(連携の形態や製品改善の事実だけでは届かない)。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **0点**: 触れない。
  * **1点**: 「地元の大学と連携した」のように関係だけを書く。
  * **3点**: 「学生参加のワークショップと共同研究で製品を改善した」のように、連携の形態や製品改善の事実は書くが、学生の発想という性質に触れていない。
  * **6点**: 「学生の柔軟な発想が改善点や新たなアイデアとして集まり、製品開発が進む」のように、学生の発想という性質と製品開発への効き方を結んでいる。

#### 要素4:社外の場が社内の不足を補う仕組み… **+8**

* **判定条件(該当)**: 社内に乏しい消費者理解を社外の場が補い、そこで得たものを製品開発に戻すという関係で答案を閉じている。満点は、**不足と補い手の対応**と、**製品開発への帰結(開発の速度・サイクル)**の双方がある場合に限る。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **0点**: 触れない。
  * **2点**: 「外部資源で能力を補完した」「社外の場が社内の不足を補った」のように、この欄の観点をなぞる表現にとどまり、何が不足し、どの場が何を補ったかが無い。
  * **5点**: 「消費者の使い方を知る力を、施設で得た反応が補った」のように、不足と補い手の対応は示すが、製品開発に戻すところまで書かれていない。
  * **8点**: 「社内に乏しい消費者理解を施設と学生という社外の場が補い、得たものを製品開発に戻して開発の速度が上がった」のように、対応と帰結の双方がそろっている。

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### 第3問(20点)

設問文:A 社社長は、木製知育玩具の新規事業を成長させていくに当たって、全社的な組織改革を検討している。それに対して、採用すべき組織体制とその理由に関して100字以内で助言せよ。

### 目的(設問要求の解釈)

* 出題趣旨は「企業向けの既存事業と一般消費者向けの新規事業の**双方**を、資源や能力に制約を持つA社が効果的に推進するための組織体制に関する助言能力」と明記する。**体制**と**理由**の両方が必要条件(片方のみは上限5割帯)。
* 与件は組織改革の検討課題として「内装材と新規事業、そしてX事業をどのように連携させ、限られた経営資源を効果的に配分していくか」と3事業を挙げている。ただし出題趣旨自体は「既存事業と新規事業の双方」という二軸framingであるため、X事業への言及は**上位への補強要素**として扱い、必須要件にはしない(出題趣旨の枠を超えて要求しない)。

### 重みづけ(加点要素)


配点合計:20点

#### 既存事業と新規事業の区分体制(事業別)を押さえている… **+7**
* **判定条件(該当)**:事業部制・専任チーム・プロジェクトチーム・社内ベンチャー制度など、既存事業と新規事業を明確に区分する**体制の型**を提案している。本要素は型の提案自体を核心論点とし、**理由の本数**(「資源配分・両立理由」要素で別途評価)や責任者配置の明示は満点の必須条件にしない。ただし事業別区分の趣旨とズレる型(マトリクス組織・機能別組織等)は本要素の趣旨に対応しないため上位にならない。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**: 「分ける。」のように体制の型を示さない抽象的表現、または事業別区分の趣旨と矛盾する型(マトリクス組織等)。
  * **3点**: 事業別ではあるが区分の趣旨とややズレる型(機能別組織等)を提案している。
  * **7点**: 「事業部制(事業別)組織にすべき。」「知育玩具事業部長に子息を配置」のように、既存・新規を区分する型を明確に提案している(責任者配置・権限委譲まで明示されていれば尚良いが必須条件にはしない)。
  * **判定補足**: 「責任者配置の明示がなければ3点止まり」としていた運用は撤回。事業別に区分する体制の型が明確であれば、それ自体で本要素の論点は充足しているとみなし満点とする(理由の本数で底上げする二重評価は引き続き禁止。あくまで型の明確さのみで判定する)。

#### 限られた資源の効率配分・両立理由を押さえている… **+7**
* **判定条件(該当)**:限られた経営資源(人材・資源)を既存・新規(およびX事業を含む場合は3事業)へ重複なく配分し両事業を並行運営できる理由、**または**両事業が求めるスキルセット・専門性が異なるため事業別に資源を効率配分すべきという理由に触れている。
* **判定補足**:「専門性の蓄積」「次世代リーダー育成」などの周辺理由を複数列挙しても、それ自体は資源配分の効率化という因果を閉じたことにならない。満点は**スキル差異→効率配分→両事業の並行運営**という因果が答案内で閉じている場合に限る。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**: 「資源を活用する。」のように抽象的。
  * **3〜5点**: 「専門性やノウハウを蓄積するため。」のように、スキル差異への言及はあるが配分効率化への接続が薄い、または単発の理由。
  * **7点**: 「事業間でスキルセットが異なるため事業部毎に配置・育成制度を整え、限られた人材と資源を重複なく配分し両事業を効率運営する為。」のように、スキル差異→効率配分→両立の因果が閉じている。

#### X事業・子息のBtoC知見を新規事業側へ活用を押さえている… **+3**
* **判定条件(該当)**:X事業経験や子息の消費者向け知見を新規事業推進に活かす体制設計に触れている。答案内(第1問や第2問等、同一答案の他設問を含む)で子息のX事業経験・経営学知見が明示され、それを新規事業の運営責任者として結びつける記述(例:知育玩具事業部長への配置)があれば、第3問内に「知見」の語がなくても該当とみなす(設問一貫性による判定)。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**: 「子息を活用。」のように抽象的(他設問での知見の明示がない場合、単なる配置のみの記述もここに留める)。
  * **2点**: 「X事業経験を新規事業へ活かす。」のように知見移転に触れる。
  * **3点**: 「X事業・子息のBtoC知見を新規事業部門へ結び付ける。」のように設計意図が明確、または他設問での知見明示+第3問での責任者配置が組み合わさっている。

#### 市場変化対応速度・探索力向上・次世代育成の理由を押さえている… **+3**
* **判定条件(該当)**:知育玩具市場の変化への迅速対応、新規事業の探索力向上、次世代リーダー育成の理由に触れている。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**: 「変化に対応する為。」のように抽象的。
  * **2点**: 「市場変化対応と探索力向上。」のように理由が複層。
  * **3点**: 「変化の早い市場に迅速対応し探索力と次世代育成を進める為。」のように理由が多層的。

#### この設問全体に掛かる配点と上限のルール
* 本設問は「体制」と「理由」の2系統を要求する(目的節参照)。配点は体制系統=区分体制7点+X事業知見活用(配置)3点=10点、理由系統=資源配分効率化7点+市場変化対応3点=10点であり、両系統は均等(10点/10点)に配分されている。したがって一方の系統が完全に欠落した答案は、他方の系統が満点でも10/20(50%)が上限となり、目的節の「片方のみは上限5割帯」は追加の抑制ルールを要さず配点構造自体で担保されている。

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### 第3問補題(20点)

補題文:A社社長は、内装材事業と木製知育玩具事業を別々の単位とする組織改革を検討している。この体制を機能させるために、A社が人材の面で採るべき取り組みについて、100字以内で助言せよ。

### 目的


* 体制の型を選べることと、その体制を回す人をどう用意するかまで言えることの差を見る。
* 子息一人では限界が見え始めているという与件の事実から、権限の委譲・次世代候補の育成・専門人材の確保という実行条件を、A社にある場(X事業・実証・大学)を使って具体化できるかを問う。

### 重みづけ(20点)


* **低評価にする答案の型**
  * 元設問の答案の流用: 事業部制を採る理由(スキルの違い・資源配分・市場変化への対応)を書く。
  * キーワードの列挙: 「権限委譲」「次世代リーダー」「専門人材」などの語を並べ、誰に何を委ね、どこで育て、どう確保するかを書かない。
  * 一般論: 「研修を充実させる」「採用を強化する」など、どの企業にも言える人材施策。

#### 要素1:子息への集中を解く権限委譲… **+7**

* **判定条件(該当)**: 子息一人では限界が見え始めていることを踏まえ、権限や判断を他の担当者へ段階的に委ねることを示している。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **0点**: 触れない。
  * **1点**: 「権限委譲を進める」のように語だけ。
  * **4点**: 「子息に権限が集中している」のように現状を指摘するが、委ねる相手や進め方が無い。
  * **7点**: 「子息一人では限界があるため、担当者に権限と判断を段階的に委ね、複数人で新規事業を回す」のように、集中の解消と委譲の進め方を示している。

#### 要素2:次世代リーダーの計画的育成… **+6**

* **判定条件(該当)**: 子息に続く候補を育てる場を、X事業・保育や教育施設での実証・直営店など与件にある場から選び、実務を任せる形で示している。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **0点**: 触れない。
  * **1点**: 「次世代リーダーを育成する」のように語だけ。
  * **3点**: 「若手向けの研修を実施する」のように、育成の場が事例と結びついていない。
  * **6点**: 「X事業や実証の場で若手に実務と顧客対応を任せ、子息に続く候補を計画的に育てる」のように、育成の場を与件の事実から選んでいる。

#### 要素3:専門人材の確保と事業別の配置・育成制度… **+7**

* **判定条件(該当)**: 新規事業に必要な専門知識を持つ人材を中途採用や地元の大学との連携で確保することと、事業ごとに異なるスキルに応じた配置・育成制度を整えることの双方に、**手段まで具体化して**触れている。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **0点**: 触れない。
  * **1点**: 「専門人材を確保する」「配置を見直す」のように、語を置くだけで手段も対象も無い。
  * **3点**: 「事業部ごとに配置と育成を行う」のように制度の側だけ、または「必要な人材を中途採用する」のように確保の側だけを示す。
  * **7点**: 「専門知識を持つ人材は中途採用と地元の大学との連携で確保し、事業ごとに求められるスキルに応じた配置と育成制度を整える」のように、確保の手段と制度の双方を示している。

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### 第4問(30点)

設問文:A 社は、木製知育玩具の新規事業を拡大させるに当たり、自社の創業以来の企業理念をどのようなものへと再定義したり、それを関係者に浸透させたりすればよいのか。150 字以内で助言せよ。

### 目的(設問要求の解釈)

* 創業理念(「自然から頂いた木を、生活する人々が豊かになるよう社会にお返しする」)を、**既存事業と新規事業の双方を包摂する形で再定義**し、**社内外への浸透方法**まで助言できているか。再定義のみ・浸透のみは上限5割帯。
* **社内浸透と社外浸透はMECEに区別する**:社内浸透は従業員(既存社員)を主対象とする施策、社外浸透は顧客・地域・取引先・教育機関等の社外関係者を対象とする施策であり、対象者の広さで一方の要件をもう一方に流用しない。

### 重みづけ(加点要素)


配点合計:30点

#### 理念再定義:地域木材価値創造×子どもの豊かな生活(既存と新規を共通理念で束ねる包摂性含む)を押さえている… **+12**
* **判定条件(該当)**:創業理念を踏まえ、地域資源である木材の新たな価値創造、木育、子どもの成長、生活の豊かさなど新規事業の方向性を包摂する形で理念を再定義し、既存内装材事業と新規知育玩具事業を共通理念の下で束ねる視点に触れている。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **3点**: 「地域木材で人々を豊かにする。」のように方向性のみで具体テーマがない。
  * **6点**: 「木育を通じ子どもの豊かな心を育む理念へ再定義する。」のように、地域木材価値創造・子どもの成長いずれか一方のテーマが具体的(他方は欠落)。
  * **9点**: 「地域木材の価値創造で子どもの成長と豊かな生活に貢献する理念へ再定義する。」のように両テーマが揃うが、既存・新規事業を束ねる包摂性の明示はない。
  * **12点**: 「地域木材の新たな価値創造で子どもの成長と人々の豊かな生活に貢献する理念へ再定義し、既存内装材事業と新規知育玩具事業を共通理念で束ねる。」のように、再定義の中身と包摂性が統合的に示されている。

#### 社内浸透策:対話・研修・制度連動を押さえている… **+10**
* **判定条件(該当)**:経営者メッセージ、社内説明会、研修、会議、評価・育成制度との連動など、**従業員を対象とする**社内浸透の具体策に触れている(対象が社外関係者に及ぶ手段は社外浸透策側で評価し、ここでは数えない=MECE区分は維持)。単一の具体的手段でも、それが実在する固有の施策として示されていれば論点提示として中位に届く。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **2点**: 社内浸透への言及がない、または「社内に伝える」のように具体的手段が皆無に近い抽象表現。
  * **5点**: 「社内説明会を行う。」のように、従業員向けの具体的手段が1つ示されている。
  * **7点**: 「経営者対話・説明会」のように、従業員向けの具体的手段が2つ示されている。
  * **10点**: 「経営者対話・説明会・研修」のように手段が3つ以上、または複数手段に加え評価・育成制度連動など行動定着の要素まで踏み込んでいる。

#### 社外浸透策:Web・SNS・イベント・県・大学連携を押さえている… **+8**
* **判定条件(該当)**:顧客・地域・取引先・教育機関など社外関係者へ、Web・SNS・イベント・県や大学との連携(大学・職人向け説明会等の対外的な場も含む)で理念を発信する手段に触れている。媒体・連携先を3種以上具体的に列挙していれば、発信の意義(ブランド強化等)への言及がなくても論点は充足しているとみなす。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **0〜1点**: 社外向け媒体への言及がない、または「社外にも発信する」のように具体媒体を伴わない抽象表現。
  * **3点**: 「Web・SNSで発信。」のように媒体・連携先が2種。
  * **8点**: 「Web・SNS・イベント・県・大学連携で社外へ発信。」のように媒体・連携先を3種以上、具体的に列挙している(発信の意義まで書かれていれば尚良いが必須条件にはしない)。
  * **判定補足**: 「意義への言及がなければ5点上限」としていた運用は撤回。3種以上の具体的な媒体・連携先の列挙自体が「社外への一貫発信」という論点を字数相応に満たしているとみなし満点とする。単なる戦略名の宣言(媒体名を伴わない一般論)は従来通り低位に据え置く。

#### この設問全体に掛かる配点と上限のルール
* 本設問は「理念再定義」と「浸透(社内外)」の2系統を要求する(目的節参照)。配点は再定義系統12点(40%)、浸透系統=社内10点+社外8点=18点(60%)であり、第3問とは異なり均等配分ではない(再定義は答案全体の前提となる中核論点のため配点を高くしている)。
* この配点構造では、浸透系統が両方(社内・社外)とも0点で再定義のみの答案は12/30(40%)となり、目的節の「上限5割帯」を配点構造だけで自然に下回る(追加ルール不要)。
* 一方、再定義系統が0点(理念の再定義に一切触れていない、または創業理念をそのまま逐語引用するのみで新規事業を包摂する再定義の要素が皆無)で浸透策のみを書いた答案は、社内10点+社外8点=18/30(60%)に達しうるため、目的節の「上限5割帯」が配点構造だけでは担保されない。
* **抑制ルール**:理念再定義要素が0点の場合、社内浸透・社外浸透の合計点にかかわらず、第4問全体を**15点(50%)を上限**として抑制する。再定義要素が1点以上ある場合はこの抑制を適用せず、各要素の通常採点に従う。

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### 第4問補題(30点)

補題文:A社社長は、内装材事業と木製知育玩具事業をそれぞれ別の単位とする組織改革に着手しようとしている。A社が企業理念を再定義することは、この組織改革に対してどのような働きをすると考えられるか。150字以内で述べよ。

### 目的


* 理念の中身を言えることと、理念が組織体制に対して何をするかまで言えることの差を見る。
* 分けること(分化)が結ぶ必要(統合)を生み、理念がその軸になるという、組織体制と理念という2つの論点の依存の向きを問う。

### 重みづけ(30点)


* **低評価にする答案の型**
  * 元設問の答案の流用: 理念の再定義文と社内外の浸透策を書く。
  * キーワードの列挙: 「分化と統合」「共通理念」「求心力」などの語を並べ、何が何に依存し、理念が誰の何を変えるかを書かない。
  * 一般論: 「理念は組織の一体感を高める」のように、どの企業にも言える理念の役割だけを書く。

#### 要素1:事業別に分けることの利点… **+6**

* **判定条件(該当)**: 内装材事業と知育玩具事業では求められるスキルセットや事業の速度が異なることを、分けて運営する利点として示している。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **0点**: 触れない。
  * **1点**: 「事業ごとに組織を分ける」のように事実だけを書く。
  * **3点**: 「事業ごとに専念できる」のように利点を一般的に述べる。
  * **6点**: 「内装材と知育玩具では求められるスキルや事業の速度が異なるため、分ければそれぞれに合った運営ができる」のように、利点を与件の違いから示している。

#### 要素2:分けても残る資源面の依存… **+8**

* **判定条件(該当)**: 知育玩具の品質が内装材で培った薄板加工・仕上げの技術に支えられていることを示し、分けたあとも技術の共有や協力が要るところまで結んでいる。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **0点**: 触れない。
  * **2点**: 「部門間の連携が必要になる」のように一般的な懸念にとどまる。
  * **5点**: 「知育玩具の品質は内装材で培った加工技術に支えられている」のように、依存の中身を示すが、分けたあとどうなるかが無い。
  * **8点**: 「知育玩具の品質は内装材で培った加工技術に支えられ、分けても技術の共有が要る」のように、依存の中身と分けたあとに残る必要を結んでいる。

#### 要素3:分けても残る人の面の課題… **+8**

* **判定条件(該当)**: 既存社員が新規事業の必要性を十分に理解できていないという与件の事実を挙げ、分けたあとも協力を得る必要が残ることを示している。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **0点**: 触れない。
  * **2点**: 「社員の協力が必要である」のように、協力が要るとだけ書き、理解不足という事実が無い。
  * **5点**: 「既存社員は新規事業の必要性を十分には理解できなかった」のように事実を示すが、分けた体制との関係が無い。
  * **8点**: 「既存社員は新規事業の必要性を十分には理解できておらず、分けたあとも協力を得る必要が残る」のように、事実と分けた体制との関係を結んでいる。

#### 要素4:理念が分けた部門を結ぶ軸として働くこと… **+8**

* **判定条件(該当)**: 再定義した理念の中身(木の新たな価値・子どもの成長・人々の豊かな生活)が両事業に通じる目的となり、既存社員に協力する理由を与えて分けた部門を結ぶ、という一続きの働きを示している。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **0点**: 触れない。
  * **2点**: 「共通理念で既存事業と新規事業を束ねる」「理念は求心力になる」のように、束ねる・統合するという言葉を置くだけで、理念のどの中身が両事業のどこに通じ、誰が何をするようになるのかが無い。
  * **5点**: 「木を人々の豊かな生活に返す理念は内装材にも知育玩具にも通じる」のように、中身と両事業への通じ方は示すが、分けた部門の協力にどう効くかが無い。
  * **8点**: 「木を人々の豊かな生活に返す理念が両事業に通じる目的となり、社員に協力する理由を与えて部門を結ぶ軸になる」のように、中身・通じ方・結ぶ働きが一続きになっている。

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この記事を書いた人

30代会社員。
理系大学を卒業して以降、新卒からIT業界を渡り歩いてきました。
転職経験は2回。
 ・中小SIerにてプログラマー
 ・BtoB向けサービス事業会社にて社内開発SE
 ・大手総合コンサル会社にてテクノロジーコンサルタント(見習い)
といったキャリアを歩んでいます。

人生100年時代に向け日々精進!
知らない道を歩いたり走ったりするのが好きで、フルマラソン完走するくらいにはジョギングを続けています。

興味のあるトピック
 ・資格勉強
  (主な取得資格)
  ・中小企業診断士
  ・JDLA認定 G検定・E資格
  ・情報処理技術者試験 応用情報処理技術者、ITストラテジスト他複数
 ・競技系プログラミング(Atcoder、kaggle等も含む)
 ・データサイエンス、AI関連の話題
 ・クイズ、謎解き系
 ・読書、映画
 ・ボードゲーム全般(将棋アマチュア2段程度。専ら”見る将”)

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