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【日々のマナビ】中小企業診断士2次試験 H30事例Ⅰ 徹底解説

こんにちは。ろっさんです。

今回は、「中小企業診断士2次試験 H30事例Ⅰ 徹底解説」と言うタイトルで解説していきます。長い記事ですがぜひ最後までお付き合いください!

目次

0. はじめに:H30事例Ⅰを一本の因果で読む

本記事で取り上げるのは、中小企業診断士2次試験H30年度事例Ⅰ、資本金2,500万円、売上約12億円のエレクトロニクス・メーカーであるA社です。役員5名を除く従業員数は約50名で、そのほとんどが正規社員という体制です。電子機器開発に特化し、生産・販売をともに他社へ委託する研究開発中心の企業として事業を営んでいます。直近10年間では、複写機の再生品や複合機内部の部品、複写機用トナーといった消耗品が売上のおよそ6割を占めています。残る4割は、食用肉のトレーサビリティー装置や業務用LED照明、追尾型太陽光発電システムなど、電子機器の部品から完成品にまで及ぶ幅広い製品群が占めています。

独学でこの事例に向き合うと、設問ごとに与件文から使えそうな語句を拾って埋めることはできても、判断の基準がつかみにくく感じられます。なぜその語句が加点の中心になるのか、なぜ他の候補を落としてよいのかが分からないためです。また、第1問で整理した競争戦略の論点と、第2問以降で問われる組織や人事の論点は、実はひとつながりの因果でつながっています。それに気づかないまま、設問ごとに切り離された知識問題として処理してしまうことも少なくありません。ある設問の答案が模範解答に似た言葉を含んでいたとしても、それだけでは本当に論理を理解して書いたのかどうかは判断しづらいところです。

そこで本記事では、第1問から第4問まで、公式の設問文・配点・出題の趣旨を確認したうえで、独自に用意した補題を交互に検討していきます。各設問では、設問要求の分解、与件文からの根拠、因果のメカニズム、診断士としての判断、字数に収める圧縮という順に段階を追って考えます。最後に、200点満点の自己採点用プロンプトを付けています。

0.1 なぜ本記事では「補題」を置くのか

本記事で各設問に補題を添えているのには理由があります。元の設問に一度答えられたとしても、それだけでは答案の背後にある理解がどこまで及んでいるかは外からは読み取れません。今回の5問の補題は、それぞれ異なる角度からこの理解の深さを確かめます。

一つ目は、元の設問がまだ足を踏み入れていない先の工程を埋める確認です。元の設問は、A社がこれまで経験してきたことの整理と、いま取り組むべき人事施策の助言までで終わっています。複写機関連製品事業に続く次の柱をどの基準で選ぶか、A社長が担い続けている新規事業の方向づけという役割を誰にどう委ねていくかという、診断助言がその先へ続く段階までは問われていません。補題の一部はこの続きの工程を問い、A社のこれまでの経験や現在の体制を踏まえて次の一手をどう考えるかまで答えられるかを見ます。

二つ目は、設問どうしのつながりを踏まえて考えられているかの確認です。元の設問では、社員の9割近くを技術者が占める人員構成や生産・販売の外部委託は、最終消費者向けの製品開発が手薄だった理由として使われます。補題ではこの同じ事実を、第1問で説明した小規模市場での技術による差別化という競争戦略をどう支えているかという逆向きの問いに使います。同じ事実が弱みの説明にも強みの説明にも使えることに気づき、事例全体を一つのつながりとして行き来しながら読めているかを確かめます。

三つ目は、1次試験で学ぶ知識を、この事例の具体的な事実に正しく当てはめられているかの確認です。たとえば大手電子メーカーがA社の製品分野を脅かしにくい理由を問う補題は、規模の経済や量産効果という知識をA社の製品分野の実際の市場規模に当てはめて説明できるかを見ます。同様に、専門知識別の部門化が持っていた利点をどう保っているかを問う補題は、機能別組織が専門性を深めるという知識をA社の混成チームの配置に当てはめて説明できるかを見ます。元の設問に答えられるかどうかと、この3つの角度から補題に答えられるかどうかは別の力です。両方を行き来しながら考えることで、事例全体を貫く理解が身についているかどうかを確かめられると考えています。

0.2 H30事例Ⅰを貫く流れ

  1. 競争戦略(ニッチ×技術差別化):研究開発型企業であるA社が、相対的に規模の小さな市場をターゲットとしているのはなぜか、競争戦略の視点から説明できるか
  2. 組織能力(技術者偏重とBtoC機能の手薄さ):A社が創業以来、最終消費者向けの製品開発にあまり力点を置いてこなかったのはなぜか、人員構成の視点から説明できるか
  3. 事業特性の転換(売切り型からリカーリング型へ):経営危機以前にA社が開発してきた製品と、複写機関連製品事業とでは、事業特性にどのような違いがあるか説明できるか
  4. 組織改編(機能別組織から製品別×混成チームへ):A社の組織改編にはどのような目的があったか説明できるか
  5. 人事施策(挑戦機会と独創性の維持):金銭的・物理的インセンティブの提供以外に、社員のチャレンジ精神や独創性を維持するために何に取り組むべきか助言できるか

0.3 この記事の読み方

次の章に、元の設問と本記事の補題を解く順に並べています。先に自分で解いてから解説に進むと、どこで判断がずれたのかがはっきりします。

各設問について、まず公式の設問文・配点・出題の趣旨を掲げ、次に「何が問われているか」を一言で整理します。そのうえで、設問要求の分解、与件文の根拠、因果のメカニズム、診断士としての判断、答案への圧縮、という順に解説します。元設問のあとには補題を置き、同じ順で解説します。末尾には、元設問と補題を合わせて200点満点で自己採点できるプロンプトを付けています。

1. 先に解いてみる

ここから先は解説です。先に自分で解いてから読むと、どこで判断がずれたのかがはっきりします。与件文は本記事に全文を載せていないので、中小企業診断協会が公開している過去問の問題冊子を手元に用意してから取り組んでください。

以下、元の設問と補題を、記事に出てくる順に並べます。太字が補題です。補題は公式の試験問題ではありません。元の設問だけでは確かめにくい理解を測るために、私がこの記事のために独自に作成したものです。配点も私が置いたものです。

  1. 第1問(配点20点/100字以内) 研究開発型企業であるA社が、相対的に規模の小さな市場をターゲットとしているのはなぜか。その理由を、競争戦略の視点から100字以内で答えよ。
  2. 第1問補題(20点/100字以内) A社が開発してきた気象衛星画像データの受信機や高精度のイメージセンサーなどの製品分野で、経営資源に勝る大手電子メーカーがA社の地位を脅かしにくいのはなぜか。その理由を100字以内で述べよ。
  3. 第2問(設問1)(100字以内/第2問全体で配点40点) A社は創業以来、最終消費者に向けた製品開発にあまり力点を置いてこなかった。A社の人員構成から考えて、その理由を100字以内で答えよ。
  4. 第2問(設問1)補題(20点/100字以内) A社が、社員の9割近くを技術者が占める人員構成を保ち、生産を他社に、販売を複数のパートナー企業に委託してきたことは、A社の競争上の強みをどのように支えているか。100字以内で述べよ。
  5. 第2問(設問2)(100字以内/第2問全体で配点40点) A社長は経営危機に直面した時に、それまでとは異なる考え方に立って、複写機関連製品事業に着手した。それ以前に同社が開発してきた製品の事業特性と、複写機関連製品の事業特性には、どのような違いがあるか。100字以内で答えよ。
  6. 第2問(設問2)補題(20点/100字以内) A社長は、複写機関連製品事業に続く新たな事業の柱を育てることを検討している。これまでにA社が経験してきた浮き沈みを踏まえ、柱となる事業を選ぶ際に重視すべき判断基準を100字以内で述べよ。
  7. 第3問(配点20点/100字以内) A社の組織改編にはどのような目的があったか。100字以内で答えよ。
  8. 第3問補題(20点/100字以内) A社は従前、電子回路技術部門、精密機械技術部門、ソフトウェア技術部門と専門知識別に部門化されていた。編成替えの後もこの編成が持っていた利点を保つために、A社がとっている仕組みは何か。100字以内で述べよ。
  9. 第4問(配点20点/100字以内) A社が、社員のチャレンジ精神や独創性を維持していくために、金銭的・物理的インセンティブの提供以外に、どのようなことに取り組むべきか。中小企業診断士として、100字以内で助言せよ。
  10. 第4問補題(20点/100字以内) A社長は、新規事業や製品の開発を後進に委ねることを検討している。委ねられる状態にするために、A社はどのようなことに取り組むべきか。100字以内で助言せよ。

2. 第1問

【設問文】 研究開発型企業であるA社が、相対的に規模の小さな市場をターゲットとしているのはなぜか。その理由を、競争戦略の視点から100字以内で答えよ。

【配点】 第1問(配点20点)

【出題の趣旨】 研究開発型企業であるA社のターゲット市場が小規模市場である理由を、競争戦略の視点から分析する能力を問う問題である。

2.1 この設問で問われていることの一言整理

答えの重心は、制約と手段を一本の因果でつなぐ点にあります。資源で劣るから正面競争を避け、技術の蓄積があるから小規模市場で選ばれる、という順で読めます。

2.2 設問要求の分解

設問は、研究開発型企業であるA社が、相対的に規模の小さな市場をターゲットとする理由を尋ねています。問われているのは事実の確認ではなく、その理由を競争戦略の視点から説明することです。A社の経営資源の状況や事業展開の経緯という個別の事実を、競争優位を築くための戦略的な論理に翻訳する必要があります。字数は100字以内であり、理由を一つの因果としてまとめる圧縮力も問われています。

2.3 与件文の根拠

資本金2,500万円、売上約12億円のエレクトロニクス・メーカーである

資本金や売上高の規模を示すこの記述は、A社が大手電子メーカーと資本力や生産・販売網で対等に競えないことを示しています。この体力差が、正面競争を避ける理由の前提になっています。

現在のA社は電子機器開発に特化し、基本的に生産を他社に委託し、販売も信頼できる複数のパートナー企業に委託している、研究開発中心の企業である。

生産や販売を他社に委託し研究開発に経営資源を集中させているという記述は、限られた人員や資金を技術開発に重点配分している事実を示しています。規模で劣る分を技術力で補う戦略の土台になっています。

同社のコアテクノロジーであるセンサー技術が評価されるようになると、主力取引先以外の大手・中堅メーカーとの共同プロジェクトへの参画が増えた

コアテクノロジーであるセンサー技術が社外から評価され、新たな共同プロジェクトにつながったという記述です。技術力そのものが取引先を引き寄せる差別化要因になっていることを裏づけます。

A社は存続をかけて、ニッチ市場に向けた製品を試行錯誤を重ねながら開発し、事業を継続してきた。

存続をかけてニッチ市場向け製品を開発してきたという記述は、A社が意図的に小規模市場を選び続けてきたことを示しています。設問の答えの核になる、最も直接的な根拠です。

2.4 因果のメカニズム

2.4.1 経営資源の制約と競争回避

A社は資本金2,500万円、従業員約50名にとどまる限られた経営資源しか持ちません。資本力や生産設備、販売網で優る大手電子メーカーと同一市場で正面競争すれば、規模の経済で劣後し価格競争に巻き込まれやすくなります。そのため、大手が参入しにくい小規模な領域に経営資源を集中させることで、独自の地位を築けると読み取れます。

2.4.2 技術力による差別化

A社はコアテクノロジーであるセンサー技術を核に、検品装置や太陽光発電システムなど多様な製品開発に取り組んできました。この積み重ねから、他社が容易には模倣できない無形の技術力という資源が育っています。この技術的な強みがあるからこそ、生産規模や価格で優る大企業と同じ土俵で戦わずに済みます。特定市場の中で、顧客から選ばれる存在になれると整理できます。

2.4.3 論理骨子上の位置づけ(設問間の一貫性)

ニッチ市場に集中し技術力で差別化するという競争戦略の選択は、実行する人員配置のあり方にも影響を及ぼします。技術者に大きく偏った人員構成を許容する土台になっています。さらにこの戦略は、事業特性の転換を経て組織改編の方向づけへとつながります。そこで働く社員への人事施策の設計にも影響を及ぼしていくため、本設問の競争戦略は事例全体の起点として機能していると読み取れます。

2.5 診断士としての判断:なぜこれが主筋になるのか

本設問の主筋は、経営資源の制約という前提と、技術力による差別化という手段を、競争戦略の言葉で因果としてつなぐことにあります。「ニッチ市場を狙っているから」という事実だけでは、その選択がなぜ合理的なのかという問いに答えたことになりません。「技術力があるから」とだけ述べる答案も同様です。その技術力がどのように大企業との競争回避につながるのかという論理を欠いています。A社長個人の経歴や創業の経緯を中心に据える答案は、競争戦略という設問の視点から外れており、優先順位は下がります。事業の多角化そのものを理由とする答案も、主筋からは落とすべき候補です。多角化は結果として生じた事象であり、小規模市場を選ぶ理由そのものではないためです。経営資源の制約ゆえに正面競争を避け、技術力という無形資源で優位を築くという二つの論理がつながって初めて、設問が求める説明になると考えられます。

ここから持ち帰る原則 ある事実が答えの原因にあたるのか、結果として生じたものなのかを見分け、結果にあたる事実は理由の材料から外します。

2.6 よくある浅い理解やズレ

  • 「ニッチ市場に集中した為」とだけ書き、大企業との資源非対称性ゆえに競争を回避するという因果に触れない答案:集中する先を示すだけで、なぜ集中が必要なのかという理由、つまり資源の制約ゆえの競争回避という因果が欠けており、設問が求める論理の半分しか示せていません。 直し方は、経営資源の制約ゆえに大企業との正面競争を避けるという因果を明示して書きます。 書き換えると「大企業と資源で劣るため正面競争を避け、ニッチ市場に集中したため。」となります。
  • 「技術力があるから」とだけ書き、その技術力が競争回避や差別化優位にどうつながるかを示さない答案:技術力という要素語を挙げるにとどまり、その技術力がなぜ大企業に対する優位性の源泉になるのかという因果の接続が示されておらず、説明として不十分です。 直し方は、無形の技術力が模倣の難しい差別化優位を築く過程まで書き加えます。 書き換えると「模倣が難しい技術力を強みとし、価格で劣らず顧客に選ばれてきたため。」となります。
  • 人員構成が技術者中心であることを理由に挙げ、組織能力の話にすり替えて競争戦略の視点に答えていない答案:設問が求めているのは市場選択の理由を競争戦略の観点から説明することであり、人員構成という組織面の事実だけを答えると設問が問う視点からずれてしまいます。 直し方は、経営資源の制約と技術力による差別化という競争戦略の言葉で理由を組み立て直します。 書き換えると「限られた経営資源のため大企業との正面競争を避け、技術力で差別化してきたため。」となります。

2.7 100字答案に落とす際の絞り方

残すもの:

  • 経営資源の制約下での大企業との正面競争回避
  • ニッチ市場への集中
  • 技術力(無形資源)による差別化

思い切って捨てるもの:

  • 創業の経緯やA社長個人の経歴
  • 具体的な製品名の列挙
  • 事業の多角化そのものの説明

整理例:

限られた経営資源では大企業と同一市場で正面競争をしても勝てないため、大手が参入しにくいニッチ市場に集中し、模倣が難しい技術力による差別化で独自の優位性を築こうとしているため。

この競争戦略には、経営資源に勝る大手電子メーカーがなぜA社の地位を脅かしにくいのかという裏側の問いがあります。次節では、この理由を補題として考えていきます。

3. 第1問補題

【補題文】 A社が開発してきた気象衛星画像データの受信機や高精度のイメージセンサーなどの製品分野で、経営資源に勝る大手電子メーカーがA社の地位を脅かしにくいのはなぜか。その理由を100字以内で述べよ。

【補題配点】 20点

3.1 元設問とのつながり

元設問では、A社が経営資源の制約ゆえに大手との正面競争を避け、技術力で差別化するという競争戦略が合理的であることを確認しました。補題では、気象衛星画像データの受信機や高精度のイメージセンサーといった製品分野で、経営資源に勝る大手電子メーカーがなぜA社の地位を脅かしにくいのかを問います。元設問の答えは、資源で劣る大手との正面競争を避け技術力で差別化するという競争戦略の一般的な言い方だけでも書けてしまいます。その言い方だけでは、大手の側にどのような採算の事情があるのかは分かりません。A社の側に何がどう積み上がっているから、資源の差が優位の差に直結しないのかも分かりません。補題は、その測れない仕組みを具体的な経緯として説明できるかどうかを問う設問です。

3.2 この補題で問われていることの一言整理

答えの重心は、大手が採算の面でこの分野に踏み込みにくいという事情と、A社が技術を積み上げてきた経緯の両方が結びつく点にあります。

3.3 設問要求の分解

設問は、気象衛星画像データの受信機や高精度のイメージセンサーといった製品分野で、経営資源に勝る大手電子メーカーがA社の地位を脅かしにくいのはなぜかを尋ねています。問われているのは、資源の量で劣るA社がなぜ大手に対して優位を保てるのかという理由です。答える視点は、大手の側とA社の側の双方に及びます。大手にとってその分野に参入する採算がどう見合わないのか、A社がどのような経緯で個別の要求に応じる技術を積み上げてきたのか、という二つの筋があります。この二つの筋を、100字以内という限られた字数の中で、資源の量と優位の関係という結論に結びつける必要があります。

3.4 与件文の根拠

国内大手電子メーカー向けの特注電子機器メーカーA社を創業した

A社が創業当初から特定の取引先の個別要求に応える特注品を手がけてきたことを示しています。この経緯が、技術の蓄積の出発点になっています。

気象衛星画像データの受信機や、カメラ一体型のイメージセンサーやコントローラーなど高精度の製品開発にも取り組むことになった。

設問が名指す製品そのものであり、A社がセンサー技術を核にどの分野で高精度の技術を積み上げてきたかを裏づける記述です。

A社は存続をかけて、ニッチ市場に向けた製品を試行錯誤を重ねながら開発し、事業を継続してきた。

A社が経営危機を乗り越えるために取り組んだ新製品開発は、大規模市場ではなくニッチ市場向けでした。気象衛星画像データの受信機や高精度のイメージセンサーのような製品分野も、同様に市場が小規模であることの裏づけになります。

3.5 因果のメカニズム

3.5.1 大手にとっての採算

気象衛星画像データの受信機や高精度のイメージセンサーのような製品は、対象となる市場が個々に小規模です。大手電子メーカーが量産による費用低減を狙っても、大きな販売量は見込めません。生産設備や人員を振り向けても採算が合いにくいため、大手はこの分野に積極的には参入しにくいと読めます。

3.5.2 A社の側の技術蓄積

A社は国内大手電子メーカー向けの特注電子機器メーカーとして創業しました。その後もコアテクノロジーであるセンサー技術を核に、大手・中堅メーカーとの共同プロジェクトへの参画を重ねてきました。この経緯があるため、個別の要求に応じて精度を作り込む技術が経験として積み上がっています。この蓄積は汎用品の量産では得られない対応力であり、大手が資源の量だけでは容易に追いつけない強みになっていると考えられます。

3.5.3 資源量と優位の関係(帰結)

大手は採算の観点から、この分野への参入を避けます。A社は、特注電子機器や共同プロジェクトを通じた技術の蓄積によって、個別の要求に応え続けられます。この分野では、経営資源の量の大小そのものではなく、技術をどれだけ積み上げてきたかが競争優位を左右すると整理できます。

3.6 診断士としての判断:なぜこれが主筋になるのか

本補題の主筋は、A社の技術力を語るだけでは終わりません。大手電子メーカーの側にどのような採算の事情があるのか、A社の側に何が積み上がっているから資源の差が優位の差に直結しないのか、という仕組みを両側から説明することが求められます。元設問と同じく、資源の制約ゆえに大手との競争を避け技術力で差別化するという論理をそのまま書く答案は、A社が小規模市場を選んだ理由を繰り返しているにすぎません。この答案は、大手がなぜこの分野でA社の地位を脅かしにくいのかという本問の問いには答えていないため、優先順位を下げるべき候補です。

技術力があるとだけ述べ、その技術がどのような経緯で積み上がったのかに触れない答案も、蓄積の経緯という要素を欠くため主筋からは外れます。大手の採算という事情と、A社の技術蓄積という事情の双方を、資源の量ではなく技術が優位を決めるという帰結でつなげて初めて、本問が求める説明になると考えられます。

ここから持ち帰る原則 結論だけを述べて、それがどのような経緯で積み上がったのかに触れない記述は、材料から外します。

3.7 よくある浅い理解やズレ

  • 元設問と同じく資源の制約ゆえに大手との競争を避け技術力で差別化するとだけ書き、大手側の採算の事情に触れない答案:A社が小規模市場を選んだ理由を繰り返すにとどまり、大手にとってなぜその分野に参入する採算が合わないのかという相手側の事情を説明できていません。 直し方は、大手にとって市場規模や量産効果がどう見合わないのかを書き加えます。 書き換えると「各市場が小規模で量産効果も販売量も見込めず、大手の採算に合わない。」となります。
  • 技術力がある、差別化できるとだけ書き、その技術がどのような経緯で積み上がったのかに触れない答案:技術を持っていること自体を述べるにとどまり、特注電子機器の開発や共同プロジェクトを通じてどう積み上がってきたのかという経緯が示されていません。 直し方は、特注電子機器の開発や共同プロジェクトを通じた蓄積の経緯を書き加えます。 書き換えると「特注電子機器や共同プロジェクトを通じ、個別要求に応じる技術を蓄積した。」となります。
  • 大手の採算とA社の蓄積のどちらか一方だけを書き、両者を結んで資源量と優位の関係まで踏み込まない答案:二つの事情を挙げるだけでは、なぜそれが経営資源の量よりも優位を決めるのかという結論への接続が示されていません。 直し方は、資源量ではなく技術の蓄積が優位を決めるという帰結まで書き加えます。 書き換えると「資源量ではなく、技術の蓄積が優位を決める。」となります。

3.8 100字答案に落とす際の絞り方

残すもの:

  • 大手にとって市場が小規模で採算に合わないという事情
  • 特注電子機器や共同プロジェクトを通じた技術の蓄積
  • 資源の量ではなく技術が優位を決めるという帰結

思い切って捨てるもの:

  • A社長の創業経緯や個人的な経歴
  • 元設問と同じ資源制約ゆえの競争回避という論理の繰り返し
  • 気象衛星画像データの受信機など固有の製品名の列挙

整理例:

理由は、各市場が小さく量産効果も販売量も見込めず大手の採算に合わないためであり、加えてA社が特注電子機器や共同プロジェクトで個別要求に応じる高精度の技術を蓄積したためで、資源量より技術が優位を決める。

次節の第2問(設問1)では、A社が創業以来、最終消費者に向けた製品開発にあまり力点を置いてこなかった理由を、人員構成の視点から考えていきます。

4. 第2問(設問1)

【設問文(共通リード)】 A社の事業展開について、以下の設問に答えよ。

【設問文】 A社は創業以来、最終消費者に向けた製品開発にあまり力点を置いてこなかった。A社の人員構成から考えて、その理由を100字以内で答えよ。

【配点】 第2問(配点40点)(本節は設問1)

【出題の趣旨】 A社が最終消費者市場向けの製品開発に積極的に取り組んでこなかった理由を、人員構成の視点から分析する能力を問う問題である。

4.1 この設問で問われていることの一言整理

答えの重心は、技術者が9割近くを占める人員構成そのものにあります。販売機能の不在や受け身の姿勢は、そこから生まれた結果です。

4.2 設問要求の分解

本設問が求めているのは、A社が最終消費者向けの製品開発にあまり力点を置いてこなかった理由です。理由は自由に述べてよいわけではありません。「A社の人員構成から考えて」という視点の指定があるためです。答案は、技術者比率や配置構成など人員構成に関わる事実を根拠として組み立てる必要があります。事業内容や外部環境の変化だけを理由に挙げる説明では、指定された視点を満たしません。字数は100字以内という制約もあります。複数の論点を盛り込む場合は、優先順位を意識した圧縮が必要になります。

4.3 与件文の根拠

営業職や事務職、人事・経理・総務などの管理業務を兼務している者を加えた約50名の社員のうち、技術者が9割近くを占めている。

設問は人員構成からの説明を求めています。非技術職が1割強にとどまり社員の大半を技術者が占めるという事実が、技術志向に偏った組織になりやすいことの直接の根拠になります。

販売も信頼できる複数のパートナー企業に委託している

自社内の販売機能が乏しく外部パートナーに委ねている事実は、最終消費者と直接向き合う人員が社内に育ちにくい構造を裏づけるためです。

取引先や顧客などの声を反映させていた受け身の製品開発の時代から

自社の開発姿勢がもともと取引先や顧客の要望を受けて動く受け身型であったことを示しており、自ら消費者市場を切り拓く発想が育ちにくかった背景を裏づけるためです。

4.4 因果のメカニズム

4.4.1 人員構成と発想の起点

技術者が9割近くを占める人員構成であるため、日常の議論や評価は技術的な完成度を軸に進みやすくなります。技術起点の発想が組織の基本姿勢として定着すると、消費者が何を求めているかという発想は後景に退きやすくなります。その結果、最終消費者向け製品の開発へ力点が向きにくくなります。

4.4.2 販売機能の所在と顧客接点

販売を外部の複数パートナー企業に委託しているため、消費者の反応が社内に蓄積される経路は細くなります。技術者以外の人員も1割強にとどまり、消費者と向き合う人員が限られた状態が続きます。消費者理解を土台にした企画は生まれにくくなり、最終消費者向け開発が後回しになる仕組みが固定化します。

4.4.3 開発姿勢の慣性

取引先や顧客の要望を受けて動く受け身型の開発姿勢は、長年にわたり基本姿勢として根づいてきました。そのため、自ら市場を定義し消費者に働きかける主体的な開発は、経験として蓄積されてきませんでした。その経験の乏しさが、最終消費者向け製品開発に自ら重心を移す動きを弱める方向に働きます。

4.5 診断士としての判断:なぜこれが主筋になるのか

本設問は「人員構成から考えて」という視点を明示しています。答案の骨格は、技術者が大半を占めるという人員構成の事実に置くことが妥当です。そのうえで、販売機能が社内に乏しいことや受け身型の開発姿勢は、いずれも技術者偏重という人員構成が生んだ副次的な帰結です。単独の理由としては、設問要求の「人員構成から」という条件を満たしません。たとえば「複写機事業に注力してきたから」のような事業内容だけに着目した説明は、人員構成という視点を経由していません。設問が求める論点としては弱く、落とす候補となります。同様に、外部環境(リーマン・ショック等)の変化のみを理由に挙げる説明も、人員構成という条件から外れるため主筋には据えられません。

ここから持ち帰る原則 設問が視点を指定しているときは、その視点を経由しない事実を理由から外し、視点の言葉に置き換えられる事実だけを残します。

4.6 よくある浅い理解やズレ

  • 「技術者が9割である」と人員構成の事実だけを述べて終わる答案:事実の提示だけでは、なぜそれが最終消費者向け開発の停滞につながるのかという因果が読み取れません。設問が求める「理由」の説明として不十分です。 直し方は、技術者偏重が技術志向や発想の起点をどう傾けるかまで一文で接続して書きます。 書き換えると「技術者偏重で技術志向に偏り、消費者起点の発想が弱いため。」となります。
  • 「販売を外部委託している」という事実だけを述べ、人員構成との関係を示さない答案:外部委託の事実だけでは、なぜ社内にマーケ・販売機能を担う人員が育たないのかという人員構成側の説明が抜け落ちます。設問が求める視点からも外れます。 直し方は、販売を外部委託している結果、消費者接点を持つ人員が社内にごく限られるという構成面の説明を添えます。 書き換えると「販売を外部委託し、消費者接点を持つ人員が社内に乏しいため。」となります。
  • 事業内容(複写機関連製品等)の説明に終始し、人員構成という視点に触れない答案:設問は「人員構成から」と明示しています。事業内容だけの説明では、問われている視点をそもそも経由していないため、加点対象になりにくくなります。 直し方は、事業の説明を人員構成(技術者比率や販売体制)の事実と結びつけて書き直します。 書き換えると「技術者偏重の人員構成が、事業を消費者起点でなく技術起点にした。」となります。

4.7 100字答案に落とす際の絞り方

残すもの:

  • 技術者が9割近くを占める人員構成
  • 社内に販売・マーケ機能を担う人員が乏しい点
  • 受け身型の開発姿勢

思い切って捨てるもの:

  • 複写機関連製品事業の詳細な経緯
  • リーマン・ショック等の外部環境変化の経緯

整理例:

技術者が9割近くを占める人員構成のため技術志向に偏り消費者起点の発想が弱く、販売機能も外部パートナーへの委託にとどまり消費者接点を担う人員も乏しく、受け身型の開発姿勢が続いてきたため。

この人員構成には、もう一つの顔があります。次の補題では、技術者中心の人員構成と、生産・販売の外部委託が、A社の競争上の強みをどのように支えているかを考えます。

5. 第2問(設問1)補題

【補題文】 A社が、社員の9割近くを技術者が占める人員構成を保ち、生産を他社に、販売を複数のパートナー企業に委託してきたことは、A社の競争上の強みをどのように支えているか。100字以内で述べよ。

【補題配点】 20点

5.1 元設問とのつながり

元設問では、技術者が9割近くを占める人員構成が、最終消費者向け製品開発に力点を置いてこなかった理由になっていることを確認しました。補題では、同じ人員構成と生産・販売の外部委託という体制が、逆にA社の競争上の強みをどのように支えているのかを問います。元設問の答えは、技術者偏重や販売機能の不在という欠落を指摘すれば完成します。その体制が強みの側を何によって支えているのかという向きは、元設問の答え方には現れません。設問をまたいでも人員構成の理解が食い違わないかを確かめる問いでもあります。体制が戦略のどちら側を支えているかという経営の基本的な見方を、A社の事実に当てはめられるかを試す問いでもあります。

5.2 この補題で問われていることの一言整理

答えの重心は、体制が強みを支える向きを言い切ったうえで、人員を開発に集中できることと、技術者の幅が製品の広がりを生むことの二つを挙げる点にあります。

5.3 設問要求の分解

本補題が求めているのは、A社の体制が競争上の強みをどのように支えているかという説明です。ここでいう体制とは、社員の9割近くを技術者が占める人員構成を保ち、生産と販売を外部に委託してきたことを指します。問われているのは、体制と強みを並べて紹介することではありません。体制が強みを支えるという向きを持った関係として説明することが求められています。事実を列挙するだけでは、向きを示したことにはなりません。ここでいう競争上の強みとは、大手が参入しにくい小規模な市場において、技術力によって差別化を保っていることを指します。これまでの設問群で扱われてきた内容と読むのが妥当です。字数は100字以内という制約があります。支える向きと、それを裏づける要素を絞り込んで書く必要があります。

5.4 与件文の根拠

基本的に生産を他社に委託し、販売も信頼できる複数のパートナー企業に委託している、研究開発中心の企業である。

生産と販売という会社を回すために必須の機能を外部に委ねている事実であり、社内の限られた人員を研究開発という一点に振り向けられる根拠になるためです。

食用肉のトレーサビリティー装置、業務用LED照明、追尾型太陽光発電システムなど、電子機器の部品から完成品に至る多様で幅広い製品が占めている。

技術を応用して生み出された製品が特定分野に偏らず幅広いことを示す事実であり、技術者主体の体制が製品の広がりに結びついていることを裏づけるためです。

電子回路技術、精密機械技術、ソフトウェア技術などの専門知識を有する技術者をほぼ同数配置した混成チームとした。

社内に専門の異なる技術者が揃っていることを示す事実であり、単一の技術に閉じない幅広い製品開発を可能にする根拠になるためです。

5.5 因果のメカニズム

5.5.1 人員の集中という向き

生産と販売という事業に欠かせない機能を外部パートナーに委ねているため、社内に抱える約50名という限られた人員を研究開発という一点に集中して配置できます。その結果、開発に振り向けられる人員と時間の厚みが増し、技術を練り上げる土台が整うことにつながります。

5.5.2 技術者構成の幅という向き

電子回路・精密機械・ソフトウェアという専門の異なる技術者を社内にそろえているため、単一の技術領域にとどまらず、自社の技術を様々な用途へ応用する発想が生まれやすくなります。その結果、特定の分野に偏らない多様で幅広い製品を生み出せるようになります。

5.5.3 小規模市場での優位という向き

生産と販売の委託によって、開発に人員を集中させています。専門の異なる技術者の幅を製品の広がりへつなげられているため、大手が採算に乗りにくい小規模な市場ごとに合わせた製品を機動的に出せます。この結びつきが、規模で劣るA社が技術で差別化を保つ仕組みそのものを支えています。

5.6 診断士としての判断:なぜこれが主筋になるのか

本補題で主筋になるのは、人員構成と外部委託という体制が、小規模市場での技術による差別化という競争上の強みを支えているという向きを言い切ることです。もっとも、向きを言い切るだけでは答案として不十分です。生産と販売を外部に委ねることで、人員を研究開発に振り向けられていることが一つ目の中身です。専門の異なる技術者が自社技術を応用して多様で幅広い製品を生み出し、小規模市場で優位を保てていることが二つ目の中身です。この二つを書き切って、初めて答案として成立します。

体制と強みを並べて紹介するだけの答案は、どちらがどちらを支えるのかという関係を示していません。生産・販売の委託という事実をなぞるだけの答案も同様であり、主筋としては弱くなります。また、元設問で問われた最終消費者向け開発が進まなかった理由(技術者偏重・販売機能の不在・受け身の開発)をそのまま書く答案もあります。これは体制が抱える欠落を指摘するものであり、体制が強みを支える向きを説明していないため、本補題の答えにはなりません。「選択と集中」「差別化」といった語を並べるだけで、A社の事実に結びつけていない答案も、落とす候補になります。外部委託一般の利点を説明するだけで終わる答案も、同様に落とす候補になります。

ここから持ち帰る原則 二つの事実の関係を問う設問では、どちらがどちらを支えているかを決められない材料を落とし、支える側の中身を示せる事実だけを残します。

5.7 よくある浅い理解やズレ

  • 元設問で問われた最終消費者向け開発が進まなかった理由をそのまま書く答案:技術者偏重や販売機能の不在という欠落を指摘するだけで、体制が競争上の強みを支えるという向きを説明していません。本補題の題意を満たしません。 直し方は、欠落の指摘ではなく、体制が強みのどちら側を支えているのかという向きを言い切る形に書き直します。 書き換えると「生産と販売の委託が人員を開発に集中させ、製品の広がりによる差別化を支えている。」となります。
  • 「選択と集中」「差別化」といった語だけを書いて終わり、その後にA社の事実による裏づけが続かない答案:採点基準の用語を書き出しに置いただけで終わり、A社の人員構成や委託という事実に結びつく説明が続きません。根拠を伴った説明になりません。 直し方は、語を書き出しに使う場合も、続けてA社のどの事実がその語にあたるのかを具体的に示して書きます。 書き換えると「委託で人員を開発に集中させ、多様な製品で差別化している。」となります。
  • 外部委託の一般的な利点の説明に終始する答案:固定費の削減など一般論にとどまります。A社の人員が研究開発へ向かうことや製品の広がりにつながる点まで書けていません。 直し方は、一般的な利点ではなく、委託によってA社の人員がどこへ向かうのかまで具体的に書きます。 書き換えると「委託により人員を研究開発に集中させ、多様な製品へつなげている。」となります。

5.8 100字答案に落とす際の絞り方

残すもの:

  • 人員構成と外部委託が競争上の強みを支えるという向き
  • 生産・販売の外部委託により人員を研究開発へ集中させている点
  • 専門の異なる技術者が自社技術を応用し多様な製品を生んでいる点

思い切って捨てるもの:

  • 最終消費者向け開発が進まなかった理由の再掲
  • 複写機関連製品事業など事業経緯の詳細

整理例:

人員構成と委託が差別化を支える関係にある。生産と販売を委ねることで人員を開発に集中でき、その結果、専門の異なる技術者が自社技術を応用した多様で幅広い製品を生み、小規模市場で優位を保てるためである。

次は第2問(設問2)に進み、A社が以前の製品開発と複写機関連製品事業とで、事業の性格がどう変わったのかを見ていきます。

6. 第2問(設問2)

【設問文(共通リード)】 A社の事業展開について、以下の設問に答えよ。

【設問文】 A社長は経営危機に直面した時に、それまでとは異なる考え方に立って、複写機関連製品事業に着手した。それ以前に同社が開発してきた製品の事業特性と、複写機関連製品の事業特性には、どのような違いがあるか。100字以内で答えよ。

【配点】 第2問(配点40点)(本節は設問2)

【出題の趣旨】 A社が経営危機に立ったとき展開した事業と、それ以前の事業の特性を分析し、その違いを明らかにする能力を問う問題である。

6.1 この設問で問われていることの一言整理

答えの重心は、収益が生まれるタイミングと頻度の違いにあります。以前の事業は販売時点で取引が完結し、複写機関連事業は消耗品や部品で反復的に収益が生まれます。

6.2 設問要求の分解

設問が求めているのは、A社長が経営危機に直面した後に着手した複写機関連製品事業と、それ以前にA社が手掛けていた事業とを比較し、両者の事業特性がどう異なるかを説明することです。視点は片方の事業だけではなく両方を対比させる形で示す必要があり、制約は100字以内という字数です。転換の契機そのものではなく、事業特性の違いという結果に絞って答えることが求められます。

6.3 与件文の根拠

この10年間は売上のおよそ6割を、複写機の再生品や複合機内部の部品、複写機用トナーなどの消耗品が占めている。

消耗品や再生品による継続的な需要が売上の過半を占めており、複写機関連事業が一度きりの取引ではなく反復的な収益を生む構造であることを示す根拠になります。

開発した製品を販売した時点で取引が完了する売切り型の事業の限界を打ち破ることを目標にして、新規事業開発に取り組んだのである。それが、複写機関連製品事業である。

以前の事業が「売切り型」であったことと、複写機関連製品事業がその限界を打ち破る狙いで始まったことの両方が同じ一文の中に示されており、対比の骨格そのものを与える根拠になります。

継続的に安定した収入源としてA社の事業の柱となる製品を生み出すこともかなわなかった。

バブル崩壊後に開発した検品装置や太陽光発電システムなどの製品も、継続的な収入源となる事業の柱を生み出せなかったことを示しています。この事実が、複写機関連事業以前の製品開発が販売時点で取引の完結する売切り型だったことの根拠になります。

6.4 因果のメカニズム

6.4.1 収益モデルの視点

複写機関連製品事業は消耗品・再生品・部品といった、使われ続ける限り繰り返し需要が発生する製品群で構成されています。一度の販売で取引が終わらないため、期間を通じて収益が積み上がるストック型の仕組みが生まれます。その結果、A社は市場環境の変化に対しても一定の収益基盤を維持しやすくなります。

6.4.2 取引構造の視点

バブル崩壊後に開発した検品装置や太陽光発電システムなどのニッチ製品は、いずれも販売した時点で取引が完了します。次の売上を得るには、その都度新たな製品を開発して売り続ける必要があります。新たな開発を繰り返す必要があるため、A社は継続的に安定した収入源となる事業の柱をなかなか生み出せませんでした。

6.4.3 対比の成立という視点

以前の事業は単発取引で、収益が案件ごとに途切れます。これに対し複写機関連製品事業は、継続的な需要を土台にしています。両者を並べて示すことで初めて、「事業特性の違い」という設問要求に正面から応える答案になります。片方の特性だけでは対比にならず、設問が求める比較構造を満たせません。

6.5 診断士としての判断:なぜこれが主筋になるのか

この設問の主筋は、複写機関連製品事業がリカーリング型の継続収益構造を持つのに対し、以前の特注電子機器や検品装置などの製品が販売時点で取引の完了する売切り型だったという対比だと考えられます。与件は「開発した製品を販売した時点で取引が完了する売切り型の事業の限界を打ち破る」という一文で、この対比を明確に示しています。両者の特性を両立させて書くことが、採点基準の中心になると考えられます。落とす候補として、経営危機という転換の契機を中心に書く答案が挙げられます。契機は事業特性の違いそのものではなく、対比を導く背景情報にとどまるため、契機の説明に字数を割くほど本筋の対比を書く余地が失われます。同様に、片方の事業特性しか書かない答案も、比較という設問要求を満たさないため主筋から外れます。

ここから持ち帰る原則 その事実が対比する特性そのものか、対比を導いたきっかけに過ぎないかを見分け、きっかけに当たる事実は答案から外します。

6.6 よくある浅い理解やズレ

  • 以前は売切り型だったとだけ書き、複写機関連事業の特性に触れない答案:対比の片側だけを書いており、設問が求める「違い」という比較構造を満たしていないため、対比の完結度に基づく加点が伸びません。 直し方は、複写機関連事業のリカーリング型収益構造も明記し、対比として完結させます。 書き換えると「以前は売切り型、複写機関連事業は消耗品等で継続収益を得るリカーリング型である点が異なる。」となります。
  • 経営危機という転換の契機を中心に書き、事業特性の違いに触れない答案:契機は事業特性の違いそのものではなく対比を導く背景に過ぎないため、契機の説明に字数を割くほど本筋の対比を書く余地が失われます。 直し方は、契機への言及は最小限にとどめ、対比の内容そのものに字数を配分します。 書き換えると「以前の事業は売切り型、複写機関連事業は継続収益を生むリカーリング型である点が違う。」となります。
  • 「リカーリング」「売切り型」などの語を並べるだけで両者の対応関係を示さない答案:採点は対比が読み取れる論理構造かどうかを見るため、用語を並べるだけでは対比の完結度が認められず加点が伸びません。 直し方は、収益が生まれるタイミングと頻度という基準で両者を対応づけて書き換えます。 書き換えると「販売都度完結する売切り型に対し、消耗品等で継続収益を得るリカーリング型である点が異なる。」となります。

6.7 100字答案に落とす際の絞り方

残すもの:

  • 複写機関連事業が消耗品・再生品・部品等で継続的に収益を得るリカーリング型である点
  • 以前の事業が受注ごとに販売時点で完結する売切り型・単発取引型である点
  • 両者を対比として両立させる構成

思い切って捨てるもの:

  • 経営危機という転換の契機の詳細
  • 具体的な製品名や取引先名などの周辺情報

整理例:

以前の事業は受注ごとに販売時点で取引が完結する売切り型だったが、複写機関連事業は消耗品や部品で継続的に収益を生むリカーリング型である点が異なる。

この継続収益の先には、次の柱をどう選ぶかという問いがあります。次節の補題では、複写機関連製品事業に続く新たな事業の柱を選ぶ際に重視すべき判断基準を考えます。

7. 第2問(設問2)補題

【補題文】 A社長は、複写機関連製品事業に続く新たな事業の柱を育てることを検討している。これまでにA社が経験してきた浮き沈みを踏まえ、柱となる事業を選ぶ際に重視すべき判断基準を100字以内で述べよ。

【補題配点】 20点

7.1 元設問とのつながり

元設問では、複写機関連製品事業への転換で生まれた継続収益という体制の狙いを整理しました。補題では、複写機関連製品事業に続く新たな事業の柱を選ぶ際に重視すべき判断基準を問います。元設問は、以前の事業と複写機関連製品事業という二つの事業特性を並べて対比する分析で完結しています。この事例の設問群は現状の分析と過去の組織改編の目的、人事施策の助言で構成され、これから先どの事業を次の柱にするかという方向づけの工程をどこでも問いません。対比を眺めるだけでなく、次の柱を選ぶ判断基準へ引き上げられるかどうかは、元設問に満点で答えても測れないままです。

7.2 この補題で問われていることの一言整理

この補題の答えの重心は、依存先を分散させるという基準にあります。複写機関連製品事業への転換という経験を、次の柱を選ぶための判断基準へ引き上げます。

7.3 設問要求の分解

この補題が求めているのは、A社長が複写機関連製品事業に続く新たな事業の柱を検討するにあたり、判断基準を述べることです。検討にあたっては、これまでA社が経験してきた浮き沈みを踏まえたうえで、柱となる事業を選ぶ際に重視すべき基準を示す必要があります。視点は過去の失敗や停滞の経験を踏まえるという制約が置かれており、単なる一般論ではなくA社自身の経験に根ざした基準であることが求められます。字数は100字以内で、判断基準そのものを直答として示す構成が要求されています。

7.4 与件文の根拠

当時は売上の8割近くを主力取引先向け電子機器製造に依存していた。

8割近くという依存度の高さが、特定の取引先に収益を頼る体制の危うさを具体的に裏づけており、補題で問う「偏らない基準」の必要性の根拠になります。

国内大手電子メーカーの特注電子機器事業が、1990年代初頭のバブル経済の崩壊によって急激な事業縮小を迫られると、A社の売上も大幅に落ち込んだ。

主力取引先への依存が、バブル崩壊という一度の環境変化でA社の売上を大幅に落ち込ませたことを示しており、依存が招いた落ち込みという経験そのものの根拠になります。

リーマン・ショックによって急速に市場が縮小し始めると、A社の売上も頭打ちになった。

継続的な取引で収益を得ていた複写機関連事業でさえ、市場縮小という環境変化に直面すると頭打ちになったことを示しています。この事実が、継続性だけでは基準として不十分だという根拠になります。

製品開発部門は、環境エネルギー事業の開発を推進するグループ、法人顧客向けの精密機械を開発するグループ、LED照明関連製品を開発するグループに分けられ

環境エネルギー・精密機械・LED照明という複数の分野に製品開発の対象を分けている事実であり、基準を現在の製品分野へ当てはめる根拠になります。

7.5 因果のメカニズム

7.5.1 依存構造の視点

特定の取引先に売上の大半を頼る体制では、その取引先の事業が縮小すると自社の収益も連動して落ち込むため、依存先の数が少ないほど収益の変動リスクが高まります。A社は売上の8割近くを主力取引先に依存していたため、バブル崩壊という取引先側の事業縮小の影響を直接受け、売上を大幅に落ち込ませる帰結につながりました。

7.5.2 収益モデルの限界の視点

複写機関連事業は消耗品による継続収益という仕組みを備えていたため、単発取引に比べて安定していました。事務機器市場という一つの市場に支えられる構造そのものは、変わりませんでした。この構造のため、リーマン・ショックで市場が縮小すると、継続収益であっても頭打ちという帰結を避けられませんでした。

7.5.3 基準の当てはめの視点

A社の製品開発部門は現在、環境エネルギー事業を開発するグループ、法人顧客向け精密機械を開発するグループ、LED照明関連製品を開発するグループに分かれています。取引の継続性と、特定の取引先や市場に偏らないという二つの基準をこの体制に当てはめると、次の柱をどの分野から選ぶかという検討の対象がここにあることになります。

7.6 診断士としての判断:なぜこれが主筋になるのか

この補題の主筋は、複写機関連製品事業への転換という一度の経験を、判断基準へ引き上げられるかどうかです。基準は、継続して取引が生じるかだけでなく、特定の取引先や市場に偏らないかまで含むと考えられます。A社は主力取引先に8割近く依存した時期に、バブル崩壊で売上を落ち込ませました。その後の複写機関連事業も事務機器市場という一つの市場に支えられていたため、リーマン・ショックで頭打ちとなりました。継続収益という性質を持つ事業であっても、依存先が一つであれば同じ壁にぶつかります。A社自身がこれを二度経験している点が、判断基準を引き上げる根拠になると考えられます。

落とす候補としては、元設問の対比(売切り型とリカーリング型の違い)をそのまま繰り返すだけの答案が挙げられます。これは元設問の言い換えにとどまり、次の柱を選ぶ基準という補題固有の問いに答えていないため主筋から外れます。「安定収益」「リスク分散」といった教科書的な語を並べるだけの答案も、判断の根拠を欠きます。A社がどの経験からその基準を導いたかを書かないため、十分な評価にはつながりません。

ここから持ち帰る原則 前の設問で使った事実のうち、そのまま結論の言い換えにしかならないものは外し、次の場面でも判断基準として使える事実だけを残します。

7.7 よくある浅い理解やズレ

  • 「安定した事業を選ぶ」のように、基準が抽象的で何を見るのか分からない答案:取引の継続性と、特定の取引先や市場に偏らないという二つの視点を併せて示せておらず、採点基準上の重みが伸びにくい水準にとどまります。 直し方は、継続して取引が生じることと、依存先を分散させることの二つを基準として書き分けます。 書き換えると「基準は取引の継続性と、特定の取引先や市場に偏らないことの二点である。」となります。
  • 「過去に売上が落ち込んだ経験がある」のように、出来事を特定しない答案:主力取引先への依存度合いや、どの事業がどの環境変化で頭打ちになったのかという具体的な局面に触れておらず、経験の裏づけとして弱い水準にとどまります。 直し方は、8割近く依存した時期の落ち込みと、複写機関連事業の頭打ちという二つの局面を具体的に書きます。 書き換えると「8割近く依存した主力取引先の縮小で売上が落ち込み、複写機関連事業も頭打ちとなった。」となります。
  • 元設問で答えた売切り型とリカーリング型の対比を、判断基準の説明としてそのまま流用する答案:対比を答案の骨格に使っていても、次の柱を選ぶための判断基準へ引き上げていないため、依存の経験や当てはめにまでつながらない水準にとどまります。 直し方は、対比そのものではなく、継続性と偏りの回避という二つの基準として書き直します。 書き換えると「対比ではなく、取引の継続性と依存先の分散という二つの基準で選ぶ。」となります。

7.8 100字答案に落とす際の絞り方

残すもの:

  • 取引が継続することと、特定の取引先や市場に偏らないことを併せて基準にする点
  • 8割近くを占めた主力取引先が事業縮小に見舞われ、複写機関連事業も市場縮小で頭打ちとなった経験
  • 基準を現在の製品分野(環境エネルギー・精密機械・LED照明等)に当てはめる結び
  • 直答→事実による裏づけ→当てはめという答案の組み立て順

思い切って捨てるもの:

  • 経営危機に至った経緯や創業からの詳細な時系列
  • 具体的な新規事業の技術内容や制度面の詳細
  • 「安定収益」「リスク分散」といった教科書的な一般論のみの説明

整理例:

基準は、取引が継続することと、特定の取引先や市場に偏らないことである。8割近くを占めた主力取引先が事業縮小に見舞われ、継続取引型の複写機関連も市場縮小で頭打ちとなったためで、LED照明等から選ぶ。

次の第3問では、複写機関連製品事業が先細り傾向になった頃にA社がすでに行っていた組織改編に、どのような目的があったのかを見ていきます。

8. 第3問

【設問文】 A社の組織改編にはどのような目的があったか。100字以内で答えよ。

【配点】 第3問(配点20点)

【出題の趣旨】 A社の組織改編が、どのような目的をもって実施されたかについて明らかにする能力を問う問題である。

8.1 この設問で問われていることの一言整理

答えの重心は、戦略を実行に移すため製品別編成と混成チームを最優先に置き、横串化と役員兼任をその運用面の補完として位置づける点にあります。

8.2 設問要求の分解

この設問が求めているのは、部門編成の変化そのものではありません。機能別だった編成を製品別・混成チーム型へ組み替えたことで、何を実現しようとしたのかという目的です。答える視点は経営判断の視点です。体制の呼び方を並べるのではなく、なぜそう変えたのかという因果を示します。字数は100字以内であり、複数ある変更点に優先順位をつけて圧縮することも求められます。

8.3 与件文の根拠

製品開発部門は、環境エネルギー事業の開発を推進するグループ、法人顧客向けの精密機械を開発するグループ、LED照明関連製品を開発するグループに分けられ

専門知識別だった部門を、製品・市場の切り口でグループ化し直したことを示しています。市場変化への対応強化という目的の、直接の根拠になります。

電子回路技術、精密機械技術、ソフトウェア技術などの専門知識を有する技術者をほぼ同数配置した混成チームとした

異なる専門分野の技術者を、一つのチームに同数配置したことを示しています。専門知識の融合による開発力向上という目的の、根拠になります。

品質管理部門と生産技術部門には、数名の技術者が配属され、製品開発部門の業務をサポートすると同時に、複数の生産委託先との調整業務を担っている

品質管理と生産技術の二部門が、製品開発部門を横断的に支えていることを示しています。複数の委託先調整も引き受けており、横串機能による効率化の根拠になります。

製品開発部門、品質管理部門、生産技術部門に編成替えをし、各部門を統括する部門長を役員が兼任した

新設した各部門の長に、役員が就いたという事実を示しています。製品別に分かれたことで生じやすい意思決定の遅れを、経営層が直接補う目的の根拠になります。

8.4 因果のメカニズム

8.4.1 製品別編成と市場対応

従前の電子回路・精密機械・ソフトウェアという専門知識別の部門編成では、どの部門も特定の製品や市場に責任を持つ立場になく、市場の変化を捉える窓口も組織の中にありませんでした。そのためA社は、環境エネルギー・精密機械・LED照明という製品グループへと編成を組み替えています。この組み替えにより、各グループは自らの担当製品が置かれた市場の動向を直接受け止める体制になります。市場変化への対応スピードが上がるという帰結につながります。

8.4.2 混成チームと開発力

電子回路技術・精密機械技術・ソフトウェア技術という専門知識ごとに、人員は部門単位で分かれていました。一つの製品に必要な複数分野の知見を集めるたびに部門間の調整を挟む必要があり、開発のスピードや発想の幅が制約されていたと考えられます。そこで各製品グループに、技術者をほぼ同数配置した混成チームを組んだため、専門知識は部門を越えて日常的に触れ合うようになります。この変化が、開発力の底上げにつながると読み取れます。

8.4.3 横串機能と役員兼任によるガバナンス

品質管理と生産技術は、製品グループの外側に共通機能として置かれています。複数の生産委託先との調整も担わせているため、各製品グループは個別に委託先管理を抱え込まずに済みます。新設した各部門の長は、役員が兼任しています。製品別に分かれたことで生じやすい部門間の連携不足や意思決定の遅れを、経営層が直接横串で見る体制によって補うという因果が成り立ちます。

8.5 診断士としての判断:なぜこれが主筋になるのか

この設問の主筋は、体制変更を羅列することではありません。戦略と組織の整合として、何が図られたかを説明することにあります。ニッチ市場に集中し技術力で差別化するという戦略を実行するには、専門知識別の組織のままでは不都合がありました。製品ごとの市場変化を捉える窓口がなく、組織の形と戦略の向きがずれていたと考えられます。製品別グループ化と混成チームという二つの変更は、戦略を実行に移すための最優先の論点として位置づけられます。一方、品質管理・生産技術の横串化や役員兼任は、事業の広がりに伴う運用面の補完にあたります。この二つは、次点の位置づけです。体制を変えたという事実だけを書いて、目的に触れない答案は得点が伸びにくいと考えられます。四つの変更点を、目的なしに並べるだけの答案も同様です。

ここから持ち帰る原則 並んだ複数の材料を、設問の目的に直接効くものと運用面の補完に分け、補完にあたるものは優先順位を下げ、字数が足りなければ補完から削ります。

8.6 よくある浅い理解やズレ

  • 製品別にグループ化したという体制変更の事実だけを述べる答案:「何を変えたか」を説明しても、「何のために変えたか」という設問が求める因果を示せていません。採点基準の中心である目的そのものに届いていません。 直し方は、変更の内容を書いた直後に、それが何を実現するための変更かを一文で続けて書きます。 書き換えると「製品別編成とし各市場の変化への対応を強化した為。」となります。
  • 技術者を混成チームにしたという体制のみを述べる答案:混成チームという体制を挙げるだけでは、専門知識の融合による開発力向上という帰結まで示せていません。加点条件の後半を満たせていません。 直し方は、混成チームを組んだことでどのような知識の融合が生まれるかを続けて書きます。 書き換えると「混成チームとし専門知識を融合させ開発力を高めた為。」となります。
  • 四つの変更点の名称だけを並べ、それぞれの目的を添えない答案:採点基準は各変更に目的が添えられているかを見ます。名称の列挙では、目的の加点に届きません。 直し方は、各変更の直後に目的を短く添え、製品別化と混成チームは目的を具体的に書きます。 書き換えると「製品別化で対応強化、混成で知識融合し開発力を高めた為。」となります。

8.7 100字答案に落とす際の絞り方

残すもの:

  • 製品別グループ化が生む市場対応力の向上
  • 混成チームによる専門知識融合と開発力向上
  • 品質管理・生産技術の横串支援と委託先調整
  • 役員兼任による意思決定の迅速化

思い切って捨てるもの:

  • 環境エネルギー・精密機械・LED照明という個別グループ名
  • 技術者をほぼ同数配置したという人数の内訳
  • 品質管理部門と生産技術部門を別々に書き分ける詳細

整理例:

製品別編成で市場変化への対応を強化し、混成チームで専門知識を融合して開発力を高め、横串の品管・生技で委託先調整を効率化し、役員兼任で統制と意思決定の迅速化を図る為。

製品別×混成チームという体制の狙いが見えたところで、次節の補題では、専門知識別に部門化されていた頃の利点を、編成替えの後もA社がどのような仕組みで保っているのかを考えます。

9. 第3問補題

【補題文】 A社は従前、電子回路技術部門、精密機械技術部門、ソフトウェア技術部門と専門知識別に部門化されていた。編成替えの後もこの編成が持っていた利点を保つために、A社がとっている仕組みは何か。100字以内で述べよ。

【補題配点】 20点

9.1 元設問とのつながり

元設問では、専門知識別の部門から製品別・混成チーム型への組織改編について、市場対応や開発力向上といった狙いを整理しました。もっとも、四つの変更点さえ挙げれば得点に届く面があります。製品別編成・混成チーム・横串の品質管理生産技術部門・役員兼任がその四つです。専門知識別の部門化がそもそも何のための編成だったのかは、目的の列挙には現れません。編成を変えた後もその利点をどう手当てしているのかという、運用の理解までは測れません。補題では、旧編成が持っていた利点を保つためにA社がとっている仕組みを問います。目的の列挙の裏側にある、知識の運用を確かめる設問です。

9.2 この補題で問われていることの一言整理

答えの重心は、専門知識別編成が持つ技術の蓄積という利点を、混成チームへの同数配置と支援部門への技術者配置という二つの手当てで保っている点にあります。

9.3 設問要求の分解

この設問が求めているのは、二つのことです。A社が従前とっていた専門知識別の部門編成に、どのような利点があったのか。製品別・混成チーム型に編成替えをした後も、その利点を保つためにA社がどのような仕組みを設けているか。答える視点は、制度・体制の運用面です。目的や狙いではなく、実際に何をどこへ配置し、どう手当てしているかという事実に基づく説明が求められます。字数は100字以内であり、仕組みそのものを直答する形が定型として合います。

9.4 与件文の根拠

電子回路技術部門、精密機械技術部門、ソフトウェア技術部門と専門知識別に部門化されていた

この記述は、編成替え前の姿を示しています。同じ専門の技術者が、一つの部門にまとまっていたことがわかります。ここに、専門知識を深め蓄積するという旧編成の利点の出発点があります。

電子回路技術、精密機械技術、ソフトウェア技術などの専門知識を有する技術者をほぼ同数配置した混成チームとした

この記述は、製品開発部門の各グループに三分野の技術者をほぼ同数配置したという事実を示しています。専門性を薄めずに知識を融合させる手当てが行われた、直接の根拠になります。

品質管理部門と生産技術部門には、数名の技術者が配属され

この記述は、製品開発部門の外に置かれた品質管理部門と生産技術部門にも、技術者が配属されたことを示しています。専門知識を持つ人材が、開発を横断的に支える形で残された根拠になります。

9.5 因果のメカニズム

9.5.1 専門知識別編成の利点の所在

従前のA社では、電子回路技術部門・精密機械技術部門・ソフトウェア技術部門というように、専門知識別に部門が分かれていました。この編成のため、同じ専門を持つ技術者どうしが日常的に接し、知見を交換しながら技術を深め、部門の中に蓄積していくことができていました。製品別・混成チーム型へ編成を組み替えると、技術者は専門の異なるグループへ分散して配置されます。この専門を軸にした蓄積の仕組みは、そのままでは維持できません。何らかの手当てを組み込む必要が生じます。

9.5.2 混成チームでの手当て

製品開発部門の各グループには、電子回路技術・精密機械技術・ソフトウェア技術の技術者が、ほぼ同数配置されています。そのため、製品別に分かれた後も、それぞれのグループの中に三分野の専門家がまとまって存在する形になります。専門ごとに部門を割らなくても、グループ内で同じ専門を持つ技術者どうしが接する機会は保たれます。専門性を薄めることなく、異なる分野の知識をグループの中で融合させることができます。

9.5.3 支援部門での手当て

品質管理部門と生産技術部門には、数名の技術者が配属されています。製品開発部門の業務を横断的に支援する体制になっているため、専門知識を持つ人材は製品別グループの外にも確保されています。各グループが抱える技術課題に対して、部門を越えた技術的な支援を受けられる経路が残ります。専門知識別編成が持っていた技術面の厚みは、形を変えながらも失われずに機能し続けます。

9.6 診断士としての判断:なぜこれが主筋になるのか

この設問の主筋は、専門知識別編成が持っていた利点の中身と、それを保つためにA社が実際に組み込んだ仕組みの二点を、事実に即して結びつけることにあります。専門知識を深め蓄積するという利点は、同じ専門の技術者を集めることで生まれていました。まず、この利点の所在を示す必要があります。そのうえで、各グループへの三分野の技術者のほぼ同数配置と、品質管理部門・生産技術部門への技術者配属という、二つの手当てを仕組みとして具体的に書くことが求められます。一方、役員が部門長を兼任したという事実や、生産委託先との調整業務は、別の論点です。意思決定の迅速化や横串の効率化にあたり、専門知識別編成の利点を保つ仕組みとは直接結びつきません。落とす候補になります。目的の列挙に終始する答案や、体制名だけを挙げて配置の中身に触れない答案も、仕組みを問う設問には届きにくいと考えられます。

ここから持ち帰る原則 同じ与件の事実でも、設問が問う目的とは別の目的に紐づくものは、材料から外します。

9.7 よくある浅い理解やズレ

  • 元設問の答えである組織改編の目的の列挙をそのまま書く答案:旧編成の利点や、その利点を保つための具体的な配置に触れていません。設問が問う仕組みを答えたことになりません。 直し方は、まず旧編成の利点を一文で示し、続けてどの部門にどう技術者を配置したかを書きます。 書き換えると「専門を深め蓄積する利点を保つため、各グループへ技術者を同数配置していること。」となります。
  • 機能別組織や混成チームといった用語だけを並べる答案:体制の名前を挙げるだけでは、同じ専門を集める利点や配置の中身という採点基準が見ている事実に届いていません。 直し方は、用語の後に、誰をどこにどれだけ配置したかという具体的な事実を続けて書きます。 書き換えると「各グループに三分野の技術者をほぼ同数配置していること。」となります。
  • 混成チームだけを答え、品質管理部門と生産技術部門への技術者配属に触れない答案:採点基準では、混成チームでの手当てと、品質管理部門・生産技術部門という支援部門での手当てが、それぞれ独立した観点として扱われています。支援部門に触れないと、その観点分の評価に届きません。 直し方は、混成チームに続けて、品質管理部門と生産技術部門にも技術者を配属した事実を書き加えます。 書き換えると「品質管理部門と生産技術部門にも技術者を置き開発を支援させていること。」となります。

9.8 100字答案に落とす際の絞り方

残すもの:

  • 専門知識別の部門化が持つ、技術を深め蓄積する利点
  • 各グループへの三分野の技術者のほぼ同数配置
  • 品質管理部門と生産技術部門への技術者配属による開発支援

思い切って捨てるもの:

  • 環境エネルギー・精密機械・LED照明という個別グループ名
  • 配属された技術者の具体的な人数
  • 製品別編成による市場対応強化や役員兼任といった元設問側の目的論点

整理例:

仕組みは、専門知識別の部門化が持つ技術を深め蓄積する利点を保つため、各グループに三分野の技術者をほぼ同数配置し、さらに品質管理部門と生産技術部門にも技術者を置いて開発を支援させることである。

専門知識を保つ仕組みが見えたところで、次は第4問に移り、A社が金銭的・物理的インセンティブ以外の方法で、社員のチャレンジ精神や独創性をどう維持していくのかを見ていきます。

10. 第4問

【設問文】 A社が、社員のチャレンジ精神や独創性を維持していくために、金銭的・物理的インセンティブの提供以外に、どのようなことに取り組むべきか。中小企業診断士として、100字以内で助言せよ。

【配点】 第4問(配点20点)

【出題の趣旨】 従業員の大半を占める技術者のチャレンジ精神や独創性を維持していくために、A社はどのような施策に取り組むべきか、助言する能力を問う問題である。

10.1 この設問で問われていることの一言整理

答えの重心は、技術者に裁量を渡す権限委譲と、失敗を学習に変える提案の仕組みを、あわせて制度化する点に集約されます。

10.2 設問要求の分解

この設問が求めているのは、社員のチャレンジ精神や独創性を維持するために何に取り組むべきかという助言です。答える視点は、中小企業診断士としての人事施策の視点です。制約語として明示されているのは「金銭的・物理的インセンティブの提供以外に」という一文です。報奨金や賞与、福利厚生といった既存の制度は、答案の軸に据えられません。字数は100字以内であり、限られた字数の中で施策に優先順位をつけて示すことが求められます。

10.3 与件文の根拠

技術者による申請特許に基づく装置が売れると、それを表彰して売上の1%を報奨金として技術者が受け取ることができる制度を整備し運用している

技術者への特許報奨金制度が、すでに整っていることを示す記述です。設問が「金銭的・物理的インセンティブの提供以外に」と限定した理由を裏づける根拠になります。

社員持株制度や社員全員による海外旅行などの福利厚生施策を充実させている

持株制度や海外旅行という物理的な福利厚生が、すでに手厚く用意されていることを示す記述です。設問の制約条件である「物理的インセンティブ以外」という除外範囲を裏づける根拠になります。

電子回路技術、精密機械技術、ソフトウェア技術などの専門知識を有する技術者をほぼ同数配置した混成チームとした

専門分野の異なる技術者が同じチームに配置されている事実です。権限委譲や提案の場を整えれば、挑戦の機会が組織的に広がりやすい土壌がすでにあることの根拠になります。

技術者が9割近くを占めている

社員の大半が技術者であるという事実です。施策の対象がほぼ技術者に絞られることと、独創性の維持の巧拙が事業全体に直結することの根拠になります。

10.4 因果のメカニズム

10.4.1 権限委譲による挑戦機会の創出

A社は技術者が社員の9割近くを占め、技術力そのものが競争力の源泉です。現場の技術者が研究開発のテーマや進め方をどこまで自分の裁量で決められるかが、独創性の発揮に直結します。指示された範囲だけで仕事をする働き方では、新しい発想が生まれにくいためです。テーマ選定や進め方の一部を技術者自身に委ねれば、失敗を恐れず試す挑戦機会が組織の中に増えると考えられます。

10.4.2 提案制度・失敗学習による独創性の制度化

A社はこれまで、受け身の製品開発から自社技術を応用した新製品開発へと転換してきました。開発した製品のすべてが市場に受け入れられたわけではなく、挑戦には失敗がつきものだったという経緯があります。挑戦した結果の失敗を個人の評価だけに結びつける運用では、次第に無難な提案しか出てこなくなります。アイデアを募る提案制度を設け、失敗を学習の機会として扱う運用を仕組み化すれば、独創的な発想を継続的に引き出す土壌が制度として根づくと考えられます。

10.4.3 研修・適正配置による長期的な土台づくり

A社は戦力である技術者に新卒者を原則採用せず、中途採用者に絞ってきました。そのため、一人ひとりの技術者が持つ専門性や経験の幅が、そのまま組織の独創性の土台になっています。学び直しの機会や配置の見直しがないまま同じ持ち場に固定されると、視野が狭まり発想が硬直しやすくなります。研修や自己啓発の支援、適性に応じた配置転換やキャリア形成の仕組みを重ねて用意すれば、長期的にチャレンジ精神を支える土台が育つと考えられます。

10.5 診断士としての判断:なぜこれが主筋になるのか

この設問の主筋は、金銭的・物理的インセンティブという制約の外側で、技術者中心の組織が挑戦し続けるための仕組みをどう設計するかにあります。本記事の採点基準(付録)でもっとも重く扱われているのは、研究開発のテーマや進め方を技術者自身に委ねる権限委譲・裁量拡大と、アイデアを募り失敗を学習として扱う提案制度の二つです。この二つは、技術者偏重の組織能力と混成チームという運用の両方を人事の面から支える位置にあるため、骨子の終点として採点基準の中心に置かれています。

研修・自己啓発支援や適正配置・CDPも独創性を支える施策ですが、効果が現れるまでに時間がかかり、直接性が相対的に弱いため、次点の扱いにとどまります。一方、報奨金制度の拡充や福利厚生の追加といった金銭的・物理的な施策は、設問の制約条件そのものに反するため、候補から外れます。施策名を挙げるだけで対象や運用が見えない答案も、加点の中心である「何に対する裁量か」「何をどう学習に変えるか」という具体性を欠くため、得点が伸びにくいと考えられます。

ここから持ち帰る原則 設問が特定の手段を除外する制約を付けているときは、その手段に当てはまる候補を落とします。

10.6 よくある浅い理解やズレ

  • 報奨金制度の拡充や持株制度・福利厚生の強化など、金銭的・物理的インセンティブに触れてしまう答案:設問が「金銭的・物理的インセンティブの提供以外に」と明示しており、この制約条件に反する施策を書くと、加点の対象そのものから外れてしまいます。 直し方は、報奨金や持株制度、福利厚生などの既存策には触れず、権限委譲や提案制度など運用面の施策に絞って書きます。 書き換えると「研究テーマの裁量を広げ、失敗を許容する提案制度を設ける。」となります。
  • 「権限委譲を行う」「提案制度を設ける」とだけ書き、対象や運用が見えない答案:施策名だけでは、何の裁量をどう広げるのか、どのアイデアをどう学習に変えるのかという運用の具体性が示せておらず、部分点の上限にとどまってしまいます。 直し方は、権限委譲なら何の裁量を広げるか、提案制度なら失敗をどう学習に変えるかまで一文で続けて書きます。 書き換えると「研究テーマの選定と進め方の裁量を技術者に委ねる。」となります。
  • チャレンジ精神の維持だけを述べ、独創性の維持という設問のもう一方の軸に触れない答案:設問は「チャレンジ精神や独創性」の両方の維持を求めており、片方だけに偏ると要求の半分にしか応えられていないことになります。 直し方は、権限委譲は挑戦機会、提案制度は独創性の制度化というように、二つの軸にそれぞれ施策を対応させて書きます。 書き換えると「裁量拡大で挑戦機会を広げ、提案制度で独創性を制度化する。」となります。

10.7 100字答案に落とす際の絞り方

残すもの:

  • 権限委譲・裁量拡大による挑戦機会の創出
  • 提案制度と失敗学習の仕組み化による独創性の制度化
  • 研修・自己啓発支援と適正配置・CDPによる長期的な土台づくり

思い切って捨てるもの:

  • 報奨金や持株制度、社員旅行などの福利厚生といった既存の金銭的・物理的インセンティブの詳細
  • 技術者の中途採用の経緯など人事制度全体の背景説明

整理例:

研究開発のテーマや進め方の裁量を技術者に委ねて挑戦機会を広げ、提案制度と失敗学習の仕組みで独創性を制度として支えると共に、研修や適正配置で長期的な土台をつくる。

この人事施策は、いまいる社員一人ひとりの挑戦を後押しするものですが、A社にはこれから何を託すかという別の課題も残っています。次節の補題では、新規事業や製品の開発を後進に委ねられる状態にするために、A社がどのようなことに取り組むべきかを考えます。

11. 第4問補題

【補題文】 A社長は、新規事業や製品の開発を後進に委ねることを検討している。委ねられる状態にするために、A社はどのようなことに取り組むべきか。100字以内で助言せよ。

【補題配点】 20点

11.1 元設問とのつながり

元設問では、金銭的・物理的インセンティブ以外の方法で、権限委譲や提案制度、研修や適正配置といった人事施策によって社員のチャレンジ精神や独創性を維持する施策を導きました。補題では、新規事業の開発の方向づけをいまも自ら担い続けているA社長が、その役割を後進へ移すために何を整えるべきかという実行の条件を問います。元設問の満点答案は裁量の拡大や提案制度、研修や配置といった社員一般への人事施策で書けますが、時流を先読みして新規事業や製品の開発の方向を決めるという、A社長ひとりがいまも担い続けている役割をどう移すのかという工程は、元設問では測れません。

11.2 この補題で問われていることの一言整理

答えの重心は、A社長に集中する役割の中身を特定し、与件にある移す先へ具体的に任せる点に集約されます。

11.3 設問要求の分解

この補題が求めているのは、A社長が新規事業や製品の開発を後進に委ねることを検討している状況を踏まえ、実際に委ねられる状態にするために何に取り組むべきかという助言です。答える視点は、事業承継の手続きそのものではありません。A社長がいま自ら担っている役割の中身を特定したうえで、その役割を誰にどう移すのかという実行の工程を設計する視点です。制約語として意識すべきは「委ねられる状態にする」という表現であり、権限を渡すことだけでなく、渡した後も機能する状態まで描くことが求められます。字数は100字以内であり、移す役割・移す先・移し方に優先順位をつけて書くことが求められます。

11.4 与件文の根拠

A社長は、後進に事業を委ねる条件が整うまで自らが先頭に立って、新規事業や製品の開発にチャレンジし続けているのである

A社長自身が時流の変化を見越し、後進へ委ねる条件が整うまで新規事業や製品開発を自ら主導し続けてきたことを示す記述です。いまも役割がA社長に集中している根拠になります。

各部門を統括する部門長を役員が兼任した

複写機関連製品事業の先細りを機に、部門長を役員が兼任する体制へ編成替えしたことを示す記述です。役割を移す先として、すでに用意されている受け皿の根拠になります。

環境エネルギー事業の開発を推進するグループ、法人顧客向けの精密機械を開発するグループ、LED照明関連製品を開発するグループに分けられ

製品開発部門が事業領域ごとに複数のグループへ分かれていることを示す記述です。新規事業のテーマ選定や進め方を任せられる単位が、すでに存在している根拠になります。

11.5 因果のメカニズム

11.5.1 A社長に集中している役割の特定

A社は、情報通信技術の急速な進歩によって事務機器市場が大きく変化することを、A社長自身が予測していました。そのため、後進に事業を委ねる条件が整うまでは自らが先頭に立って、新規事業や製品の開発に挑戦し続けるという判断を取ってきました。ここでA社長が担い続けているのは、時流を先読みして新規事業や製品開発の方向を決めるという役割です。この役割の所在をまず特定しなければ、誰に何を移すのかという次の検討に進められないと考えられます。

11.5.2 移す先と移し方

A社はすでに、複写機関連製品事業の先細りを機に、製品開発部門・品質管理部門・生産技術部門へと編成替えを行いました。各部門を統括する部門長を役員が兼任する体制と、事業領域ごとに分かれたグループ体制も整えてきました。この体制があるため、A社長が担ってきた新規事業の方向づけという役割は、部門長を兼ねる役員や各グループへ、開発テーマの選定と進め方の判断を任せる形で移せます。任せられた側は、実務を通じて経験を積むと考えられます。

11.5.3 移し方の留意

後進に移そうとしているのは、A社長が時流の変化を見極めながら重ねてきた判断が土台となる、新規事業や製品開発の方向づけという役割です。この判断は、一度に引き継げる性質のものではありません。いきなり任せきってしまうと、判断の精度が落ちかねないためです。当面はA社長が伴走しながら段階的に権限を移していけば、任せる側と任せられる側の双方にとって無理のない移行になると考えられます。

11.6 診断士としての判断:なぜこれが主筋になるのか

この補題の主筋は、A社長が新規事業や製品開発の方向づけという役割をいまも一人で担い続けているという事実を起点に、その役割を誰にどう移すのかという実行の工程を設計できるかにあります。本記事の採点基準がもっとも重く見ているのは、二つの要素です。一つは、権限委譲や後継者育成という一般的な言葉で済ませず、時流を先読みして方向を決めるという役割の中身をまず特定することです。もう一つは、部門長を兼ねる役員や各グループという与件にある移す先へ、開発テーマの選定と進め方という具体的な中身を任せることです。この二つが、骨子の中心に置かれています。

移し方の留意として、当面は伴走しながら段階的に移す点も採点基準上の重みを持ちますが、役割の特定と移す先の具体化に比べると、位置づけは補助的です。一方、外部からの人材登用を持ち出す案や、事業承継の一般的な手続きだけを述べる案は、与件にある体制や役割の特定という手がかりを使っていないため、候補から外れると考えられます。

ここから持ち帰る原則 与件にある具体的な手がかりを使わず、一般論だけで埋めた材料は、答えの候補から外します。

11.7 よくある浅い理解やズレ

  • 元設問で助言したチャレンジ精神や独創性を維持する人事施策をそのまま書く答案:A社長に集中している役割そのものの特定が無いため、採点基準の要素1には加点されません。 直し方は、元設問の答えを流用せず、A社長が担っている役割の特定から書き始めます。 書き換えると「時流を先読みし方向を決める役割をまず特定する。」となります。
  • 「権限委譲」「後継者育成」「事業承継」といった言葉を並べるだけの答案:誰に何を任せるのかという移す先と移す中身が示されておらず、各要素が部分点にとどまってしまいます。 直し方は、移す先を部門長や各グループなど与件の言葉で特定し、任せる中身まで書きます。 書き換えると「部門長を兼ねる役員に開発テーマの選定を任せる。」となります。
  • 外部からの人材登用など、与件にない仕組みを持ち込む答案:与件にある体制の手がかりを使わない一般論になり、採点基準が求める具体性を示せていません。 直し方は、与件にある部門長や各グループといった既存の体制を移す先として使います。 書き換えると「各グループへ開発テーマの選定と進め方を任せる。」となります。

11.8 100字答案に落とす際の絞り方

残すもの:

  • A社長に集中している新規事業の方向づけという役割の特定
  • 部門長を兼ねる役員や各グループへ移し、開発テーマの選定と進め方を任せること
  • 当面はA社長が伴走しながら段階的に移すという留意点

思い切って捨てるもの:

  • 事業承継や後継者育成という一般的な言い方の詳細
  • 外部からの人材登用や与件にない新しい体制の説明

整理例:

①時流を先読みして新規事業の方向を決めるというA社長の役割を、部門長を兼ねる役員や各グループへ移し、②開発テーマの選定と進め方を任せることで経験を積ませ、そのうえで当面は社長が伴走して段階的に移す。

ここまで4つの設問とその補題を通じて、A社の強みと課題を人事・組織の両面から見てきました。次はこの記事全体の流れを振り返り、まとめに入ります。

12. まとめ

本事例は、A社がニッチ市場で技術力による差別化を選んだ競争戦略から始まります。その戦略を支えてきた技術者中心の人員構成が、最終消費者向け製品開発への注力を妨げてきたという組織能力の偏りへとつながります。さらに、経営危機後に着手した複写機関連製品事業は、売切り型とは異なるリカーリング型の収益構造を持つことになりました。この事業特性の転換が、製品別グループと混成チームを軸とした組織改編を要請しました。そしてこの組織改編を実際の成果につなげるためには、金銭的・物理的インセンティブだけに頼らず、社員のチャレンジ精神や独創性を維持する人事施策が必要になります。戦略が組織のあり方を規定し、組織の変化が人事の設計を求めるという一本の流れの中に、本事例の各設問は位置づいています。

元設問が問うているのは、与件文に書かれた事実から競争戦略・組織能力・事業特性・組織改編・人事施策という各局面を診断士として読み解き、設問の要求どおりに整理する力です。これに対して補題は、元設問の理解を別の角度から確かめる役割を担っています。具体的には、元設問がまだ問うていない先の工程を埋めたり、ある設問で使った事実を別の設問の論点に結びつけ直したりします。1次試験で学ぶ知識をこの事例の具体的な事実に当てはめ直すことも、そのひとつです。元設問と補題を往復することで、表面的なキーワードの当てはめではなく、事例全体を貫く理解を自分の言葉で説明できるようになります。

12.1 この事例から持ち帰る原則

  • 第1問 ある事実が答えの原因にあたるのか、結果として生じたものなのかを見分け、結果にあたる事実は理由の材料から外します。
  • 第1問補題 結論だけを述べて、それがどのような経緯で積み上がったのかに触れない記述は、材料から外します。
  • 第2問(設問1) 設問が視点を指定しているときは、その視点を経由しない事実を理由から外し、視点の言葉に置き換えられる事実だけを残します。
  • 第2問(設問1)補題 二つの事実の関係を問う設問では、どちらがどちらを支えているかを決められない材料を落とし、支える側の中身を示せる事実だけを残します。
  • 第2問(設問2) その事実が対比する特性そのものか、対比を導いたきっかけに過ぎないかを見分け、きっかけに当たる事実は答案から外します。
  • 第2問(設問2)補題 前の設問で使った事実のうち、そのまま結論の言い換えにしかならないものは外し、次の場面でも判断基準として使える事実だけを残します。
  • 第3問 並んだ複数の材料を、設問の目的に直接効くものと運用面の補完に分け、補完にあたるものは優先順位を下げ、字数が足りなければ補完から削ります。
  • 第3問補題 同じ与件の事実でも、設問が問う目的とは別の目的に紐づくものは、材料から外します。
  • 第4問 設問が特定の手段を除外する制約を付けているときは、その手段に当てはまる候補を落とします。
  • 第4問補題 与件にある具体的な手がかりを使わず、一般論だけで埋めた材料は、答えの候補から外します。

次に過去問を解くときは、設問を独立した知識問題として解くのではなく、戦略が組織を規定し組織の変化が人事を求めるという一本の因果のどこに位置づくかを先に確認してから書き始めると、答案の骨格が変わります。

13. 付録:200点満点セルフチェック用プロンプト

以下は、読者がそのままコピーして生成AIに貼り付け、元設問100点+補題100点の合計200点満点で自分の答案を採点できるプロンプトです。「【ここに全問分の答案をまとめて貼り付ける】」の欄に答案を入れる以外の編集は不要です。

あなたは中小企業診断士2次試験の採点者です。以下の答案を、後述の採点基準に厳密に従って採点してください。

## 答案の貼り付け欄

【ここに全問分の答案をまとめて貼り付ける】

貼り付けの形式(見出しごとに答案を書く):
【第1問】(100字以内)
(答案)
【第1問補題】(100字以内)
(答案)
【第2問(設問1)】(100字以内)
(答案)
【第2問(設問1)補題】(100字以内)
(答案)
【第2問(設問2)】(100字以内)
(答案)
【第2問(設問2)補題】(100字以内)
(答案)
【第3問】(100字以内)
(答案)
【第3問補題】(100字以内)
(答案)
【第4問】(100字以内)
(答案)
【第4問補題】(100字以内)
(答案)

## 採点の指示

1. 元設問(合計100点)と補題(合計100点)を合わせた **200点満点** で採点する。
2. 採点は下の「採点基準」の加点要素ごとに積み上げる。基準に書かれていない観点で加点・減点しない。
3. 各加点要素について「該当/部分該当/非該当」を判定し、部分点の目安に照らして点を決める。判定理由は答案の該当箇所を引用して示す。
4. 字数制限を超えた答案は、その設問の得点を上限の8割に抑える。
5. 語句の一致ではなく論点の一致で判定する。同じ論点の言い換えを別の要素として二重に数えない。
6. 出力は次の順で書く。
   - 設問別採点表(設問/要素/判定/得点/理由)
   - 元設問 小計(/100)・補題 小計(/100)・合計(/200)
   - 設問別の講評(各150字程度。良い点を1つ、直すべき点を1つ)
   - 優先改善点(合計得点に最も効く順に3つ。何をどう書き換えるかまで具体的に)

## 採点基準

### 第1問(20点)

設問文:研究開発型企業であるA社が、相対的に規模の小さな市場をターゲットとしているのはなぜか。その理由を、競争戦略の視点から100字以内で答えよ。

### 目的(設問要求の解釈)

* 「なぜ小規模市場なのか」を、競争戦略の言葉で"因果"として説明できているか。
  (採点観点:ニッチ市場リンク/競争戦略想起/大企業との対比/技術差別化)

### 重みづけ(加点要素)


配点合計:**20点**

#### 要素1:経営資源の制約下で大企業との正面競争を回避しニッチ市場に集中する論理を示している… **+12**(最優先)
* **判定条件(論点)**
  * 「小規模市場をなぜ選ぶか」について、①大企業との資源非対称性ゆえの正面競争回避、②それゆえの特定市場(ニッチ)への集中、のいずれか一方の論理が読み取れれば中間点、両方が因果でつながっていれば満点帯を与える。
  * 語句は「ニッチ」「小規模市場」「特定顧客」「特定領域」「集中」「特化」「規模の経済」「大企業」「大手」「競争回避」「同質競争」等、いずれの表現でも可。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **3点**:論点語のみ。例「ニッチ市場に集中した為。」/「大企業を避ける為。」
  * **7点**:決定・根拠のどちらか一方に因果があり、もう一方は言及のみ、または欠落。例「大手が狙わない小規模市場に集中した為。」/「大手との同質競争を避ける為。」
  * **12点**:決定と根拠が因果で閉じている。例「大手との正面競争を避けニッチに集中し優位を築いた為。」(約27字)/「規模の経済で不利な大企業との競争を回避し特定領域に資源を集中した為。」(約33字)

#### 要素2:技術力による差別化を説明できている… **+8**(最優先)
* **判定条件(論点)**
  * 無形資源(技術・知識・ノウハウ)を根拠に、差別化優位が築けることを答案が示していればよい。
  * 「センサー技術」等の具体名でも、「コアテクノロジー」「技術力」「研究開発力」等の一般表現でも可。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **2点**:施策名・論点語のみ。例「技術力で差別化できる為。」
  * **4点**:技術と差別化が因果で結ばれている。例「センサー技術で差別化できる為。」/「コアテクノロジーにより差別化を図れる為。」
  * **8点**:優位の内容まで明確。例「センサー技術等の無形資源を活かし差別化優位を築ける為。」(約26字)/「独自技術で競争優位を獲得できる為。」

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### 第1問補題(20点)

補題文:A社が開発してきた気象衛星画像データの受信機や高精度のイメージセンサーなどの製品分野で、経営資源に勝る大手電子メーカーがA社の地位を脅かしにくいのはなぜか。その理由を100字以内で述べよ。

### 目的


* 小規模市場に集中するという戦略が成り立つ条件を、相手(大手)の採算と自社(A社)の蓄積の両側から説明できるかを見る。
* 「大手は来ない」と結論だけを言う答案と、なぜ来ないのか・来ても勝てないのかを与件の製品と経緯から言える答案を区別する。

### 重みづけ(20点)


#### 要素1:大手の側の事情… **+8**

* **判定条件**
  * 対象の製品分野が小規模であるために、量産による費用低減も大きな販売量も見込めず、大手にとって投資に見合う収益が得られないことを示していること。
  * 「規模の経済」「量産効果」「経験曲線」「採算」「投資に見合わない」等、いずれの表現でも可。用語を使わず仕組みを言い換えていてもよい。
  * 「市場が小さいから大手は入らない」だけの同語反復は、仕組みを示したものとしない。
  * **A社が大手との競争を避けた・限られた資源を特定領域に集中した、というA社の側の事情だけを述べた記述には加点しない。**本要素で問うているのは大手の側の採算であり、A社が選んだ理由は元設問の答えである。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **2点**: 「市場が小さく大手は参入しない為。」のように、市場規模と結論を並べるだけで、大手にとって何が成り立たないのかを書かない。
  * **5点**: 「規模が小さく量産による費用低減が働かない為。」のように、仕組みの一方には触れるが、大手の採算まで結んでいない。
  * **8点**: 「各市場は小規模で量産効果も販売量も見込めず大手には採算が合わない。」のように、市場規模から費用・販売量を経て大手の採算まで一続きになっている。

#### 要素2:A社の側の蓄積… **+8**

* **判定条件**
  * A社が特注電子機器の開発や大手・中堅メーカーとの共同プロジェクトへの参画を通じて、高精度の製品を作る力と個別の要求に応じる技術を **積み上げてきた経緯** を示していること。
  * **蓄積の経緯(特注電子機器の開発/共同プロジェクトへの参画/高精度の製品開発を重ねてきたこと)に触れていない記述は、技術の中身をどれだけ書いていても2点を上限とする。** 本要素は「技術を持っていること」ではなく「どう積み上がったか」を問う。
  * **「技術力がある」「技術で差別化できる」だけの記述には加点しない。** それは元設問(第1問)の答えであり、本問が問う蓄積の経緯ではない。
  * 技術の名前(センサー技術・コアテクノロジー等)は使っても使わなくてもよい。名前より、経緯と、その技術が何をできるようにしているか(高精度/個別の要求への対応)を見る。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **0点**: 「技術力を活かし差別化優位を築ける為。」のように、技術を持っていることと差別化できることだけを言う。
  * **2点**: 「センサー技術等のコアテクノロジーで高精度の製品を作れる為。」のように、技術の名前と中身には触れるが、それをどう積み上げてきたかの経緯を書かない。
  * **5点**: 「特注電子機器の開発や共同プロジェクトを通じて技術を積み上げてきた為。」のように、蓄積の経緯は書くが、その技術が何をできるようにしているかを書かない。
  * **8点**: 「特注電子機器や共同プロジェクトで高精度製品の開発を重ね個別要求に応じる技術を蓄積する。」のように、積み上げの経緯と技術の中身の両方を書く。

#### 要素3:資源量と優位の関係… **+4**

* **判定条件**
  * 二つの事情を結び、この分野では経営資源の量の差が優位の差に直結しない(技術の蓄積が優位を決める)と言い切っていること。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**: 「A社の方が強い為。」のように、結論だけで理由と結んでいない。
  * **2点**: 「大手は資源が多いが参入しない。」のように、資源の差には触れるが優位との関係を言わない。
  * **4点**: 「資源量でなく技術蓄積が優位を決める為。」のように、資源の量と優位の関係を言い切っている。

* **低評価にする答案の型**
  * 流用: 元設問の答え(資源制約ゆえの競争回避・技術による差別化)をそのまま書いた答案。A社が選んだ理由であって大手が脅かせない理由ではないため要素1には加点せず、蓄積の経緯が無いため要素2は2点を上限とする。
  * キーワード列挙: 「ニッチ」「差別化」「規模の経済」「参入障壁」といった語を並べるだけで、A社のどの製品・どの経緯から言えるのかを書かない答案。各要素は2点までとする。
  * 一般論: 「中小企業は大企業と競争できない」のように、与件の事実へ戻らない答案。

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### 第2問(設問1)(20点)

設問文:A社は創業以来、最終消費者に向けた製品開発にあまり力点を置いてこなかった。A社の人員構成から考えて、その理由を100字以内で答えよ。

### 目的(設問要求の解釈)

* 人員構成(特に技術者比率)から、BtoCに必要な組織能力が弱かったことを因果で示せているか。
* 「人員構成から」と明示されているため、答案の論点は人員のポートフォリオ・配置・それに起因する組織能力の欠如に紐づく必要がある。

### 重みづけ(加点要素)


配点合計:**20点**

#### 要素1:技術者偏重の人員構成が技術志向を生んだ論理… **+10**(最優先)
* **判定条件(論点)**
  * 技術者が大半を占める人員構成を根拠に、組織が技術志向・プロダクトアウト型に傾き、消費者起点の発想が弱くなると説明できていればよい。
  * 数値「9割」の引用は必須ではなく、「大半」「多く」等の表現でも可。
* **判定補足**
  * 設問が「人員構成から」と明示しており、本要素が最直結の中核論点である。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **2点**:事実のみ。例「技術者が9割である為。」/「技術者が大半を占める為。」
  * **5点**:因果がある。例「技術者が大半で技術志向に傾く為。」/「技術者中心ゆえプロダクトアウト型になる為。」
  * **10点**:主因として明確。例「技術者が9割近くを占めプロダクトアウト型で消費者起点が弱い為。」(約30字)/「技術者偏重ゆえ技術志向が固定化し消費者発想が希薄な為。」

#### 要素2:マーケ・販売機能を担う人員が社内に不在である論理… **+6**(次点)
* **判定条件(論点)**
  * 人員構成の観点から、BtoCに必要なマーケ・販売機能を担う人員(営業・マーケ担当者・販売員)が社内に不足しており、消費者接点・顧客理解の蓄積が得にくいことを示していればよい。
  * **人員構成と結びつけて書かれていることが必須**(外部委託の事実のみ・事業特性のみでは加点対象外)。
  * 「営業兼務」「マーケ担当不在」「販売員不在」「消費者接点担当者なし」等いずれも可。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **2点**:事実のみ。例「営業が兼務で専任がいない為。」
  * **4点**:機能面へ接続。例「マーケ担当が社内におらず顧客接点が薄い為。」
  * **6点**:因果が具体化。例「販売・マーケ担当者が社内におらずBtoC対応力が育たぬ為。」(約25字)

#### 要素3:受け身型開発姿勢が消費者市場探索を阻害する論理… **+4**(次点)
* **判定条件(論点)**
  * 技術者中心の人員構成の結果として、顧客要望を受けて開発する受け身型の行動様式が組織に根付き、主体的に消費者市場を開拓する発想が生まれにくいことを示していればよい。
  * **人員構成と結びつけて書かれていることが望ましい**(単なる事業特性の指摘にとどまらない)。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**:受け身性のみ。例「顧客要望依存型の為。」
  * **2点**:発想面へ接続。例「受け身開発で市場開拓力が弱い為。」
  * **4点**:人員構成との接続が具体化。例「技術者中心で受け身型開発に終始し消費者市場探索が育たぬ為。」(約27字)

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### 第2問(設問1)補題(20点)

補題文:A社が、社員の9割近くを技術者が占める人員構成を保ち、生産を他社に、販売を複数のパートナー企業に委託してきたことは、A社の競争上の強みをどのように支えているか。100字以内で述べよ。

### 目的


* 人員構成と外部委託という組織の事実と、小規模市場での技術による差別化という戦略を、「どちらがどちらを支えているか」の向きつきで結べるかを見る。
* 二つを並べて述べるだけの答案と、支える向きを言い切った答案を区別する。

### 重みづけ(20点)

#### 要素1:支える向きの明示… **+4**

* **判定条件**
  * この体制が、大手が狙わない小規模市場で技術により差別化するという競争上の強みを支えている、という向きを言い切っていること。
  * 組織と戦略を並べるだけで、どちらがどちらを支えるのかを書かない答案には満点を与えない。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**: 「ニッチ市場で差別化している。」のように、戦略の側だけを述べる。
  * **2点**: 「人員構成と戦略が一致している。」のように、関係があるとは述べるが向きを書かない。
  * **4点**: 「これが小規模市場で技術により差別化する強みを支えている。」のように、体制が戦略を支える向きを書いている。


#### 要素2:開発への人員の集中… **+8**

* **判定条件**
  * 生産と販売を外部に委ねることで、約50名という限られた人員を研究開発に振り向けられていることを示していること。
  * 委託の事実をなぞるだけで、それが何を可能にしているかを書かない答案は中間点までとする。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **2点**: 「生産と販売を委託している。」のように、事実をなぞるだけ。
  * **5点**: 「外部委託により固定費を抑えている。」のように、一般的な効果は述べるが、人員が開発へ向かうことを書かない。
  * **8点**: 「生産設備や販売人員を抱えない分、限られた人員を開発に集中できる。」のように、委託から人員の集中までが結ばれている。


#### 要素3:技術者を社内に抱えることの効き方… **+8**

* **判定条件**
  * 社員の大半が技術者であることにより、自社技術を応用して電子機器の部品から完成品に至る多様で幅広い製品を生み出せていることを示していること。
  * 専門の異なる技術者が揃っている点に触れていてもよい。人員構成の事実だけを書く答案は中間点までとする。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **2点**: 「技術者が9割近くを占める。」のように、人員構成の事実だけ。
  * **5点**: 「技術者が多いので開発力が高い。」のように、開発力という一般的な言い方にとどまり、何を生み出せているかを書かない。
  * **8点**: 「専門の異なる技術者が自社技術を応用した多様で幅広い製品を生む。」のように、人員構成から製品の広がりまでが与件に即して結ばれている。
* **低評価にする答案の型**
  * 流用: 元設問の答え(技術者偏重・マーケティング担当の不在・受け身の開発)を書いた答案。強みを支える向きを書いていないため、要素1・要素2には加点しない。
  * キーワード列挙: 「選択と集中」「外部委託」「固定費削減」「差別化」といった語を並べるだけで、A社の事実に結ばない答案。各要素は2点までとする。
  * 一般論: 外部委託の一般的な利点の説明に終始し、A社が何を続けるための体制かを書かない答案。

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### 第2問(設問2)(20点)

設問文:A社長は経営危機に直面した時に、それまでとは異なる考え方に立って、複写機関連製品事業に着手した。それ以前に同社が開発してきた製品の事業特性と、複写機関連製品の事業特性には、どのような違いがあるか。100字以内で答えよ。

### 目的(設問要求の解釈)

* 設問の題意は **「違い」の対比構造**。両事業の事業特性が対比として成立しているかが採点の核。
* 転換の契機(経営危機)は「違い」の論点ではないため採点対象としない。

### 重みづけ(加点要素)


配点合計:**20点**

本設問は「違い」を問うため、対比構造が成立していることが答案の骨格となる。対比を示す語彙(「リカーリング型」「売切り型」「継続収益」「販売時点完結」「対照的」「一方」等)はいずれの表現でも可。対比が読み取れる論理構造であれば満点帯を与える。

#### 要素1:複写機関連事業が継続安定収益を生む構造を押さえている… **+10**(最優先)
* **判定条件(論点)**
  * 消耗品・再生品・部品等により継続的に収益が発生する収益モデル(リカーリング型・ストック収益型)であることを示していればよい。
  * 「リカーリング」「継続収益」「ストック型」「消耗品による継続取引」等いずれの表現でも可。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **3点**:特性のみ。例「継続収入型である。」
  * **6点**:根拠がある。例「消耗品等で継続収入を得る事業。」/「トナー等の継続取引が収益基盤。」
  * **10点**:対比が読み取れる。例「消耗品等で安定収入を得るリカーリング型で売切と対照的。」(約27字)/「部品・消耗品による継続取引で安定収益を確保する事業。」

#### 要素2:以前の事業が売切り型・単発取引型であった構造を押さえている… **+10**(最優先)
* **判定条件(論点)**
  * 以前の事業(特注電子機器・検品装置等)が販売時点で収益が完結する単発取引型・売切り型であり、継続収益になりにくかったことを示していればよい。
  * 「売切り型」「単発取引」「フロー収益」「受注完結型」「案件単位」等いずれの表現でも可。**「受け切り型」「受注型」など答案側の独自表現でも、単発で収益が完結する構造が読み取れれば満点帯を与える**。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **3点**:特性のみ。例「以前は売切り型だった。」/「単発取引だった。」
  * **6点**:収益構造を説明。例「以前は販売時点で完結する売切り型。」/「受注完結で継続収入にならない事業だった。」
  * **10点**:対比が読み取れる。例「以前は売切り型で販売時点完結し継続性無く対照的。」(約24字)/「以前は案件単位の単発収益で継続性に欠ける構造だった。」

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### 第2問(設問2)補題(20点)

補題文:A社長は、複写機関連製品事業に続く新たな事業の柱を育てることを検討している。これまでにA社が経験してきた浮き沈みを踏まえ、柱となる事業を選ぶ際に重視すべき判断基準を100字以内で述べよ。

### 目的


* 複写機関連製品事業への転換から得られる教訓を、「継続して取引が生じるか」だけでなく「特定の取引先や市場に依存しないか」という基準に引き上げられるかを見る。
* 教科書的な「安定収益」「リスク分散」の一般論と、A社の具体的な経験に裏づけられた判断基準を区別する。

### 重みづけ(20点)

#### 要素1:判断基準への引き上げ… **+8**

* **判定条件**
  * 取引が継続して生じることと、特定の取引先や市場に偏らないことの二つを、柱を選ぶ基準として併せて示していること。
  * 継続取引の基準だけでは元設問の言い換えにとどまるため、中間点までとする。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **2点**: 「安定した事業を選ぶ。」のように、基準が抽象的で何を見るのか分からない。
  * **5点**: 「売切り型ではなく継続的に取引が続く事業を選ぶ。」のように、継続取引の基準だけを述べる。
  * **8点**: 「取引が続き、かつ特定の取引先や市場に偏らない事業を基準とする。」のように、二つの基準を併せて示す。


#### 要素2:依存が招いた落ち込みの経験… **+8**

* **判定条件**
  * 売上の8割近くを主力取引先に依存していた時期にバブル崩壊で売上が大きく落ち込んだこと、または継続取引型の複写機関連製品事業が市場の縮小で頭打ちになったことの、少なくとも一方を経験として示していること。
  * 両方を挙げ、依存の度合いまで書いていれば満点帯を与える。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **2点**: 「過去に売上が落ち込んだ経験がある。」のように、出来事を特定しない。
  * **5点**: 「主力取引先の縮小で売上が落ち込んだ。」のように、一方の経験を具体的に書く。
  * **8点**: 「主力取引先が売上の8割近くを占めた頃にその取引先が事業縮小に見舞われて売上が落ち込み、継続取引型の複写機関連も市場縮小で頭打ちとなった。」のように、依存の度合いと二つの局面を書く。


#### 要素3:現在の製品分野への当てはめ… **+4**

* **判定条件**
  * 基準を、環境エネルギー・法人顧客向け精密機械・LED照明関連といった現在の製品分野に当てはめる形まで書いていること。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**: 「今後の事業選択に活かす。」のように、当てはめ先が抽象的。
  * **2点**: 「事務機器市場の変化を踏まえて選ぶ。」のように、局面には触れるがどの分野から選ぶかを書かない。
  * **4点**: 「LED照明等の分野から柱を選ぶ。」のように、現在の製品分野に当てはめている。
* **低評価にする答案の型**
  * 流用: 元設問の答え(売切り型と継続取引型の対比)をそのまま書いた答案。要素1は2点までとし、要素2・要素3には加点しない。
  * キーワード列挙: 「分散」「安定収益」「リカーリング」といった語を並べるだけで、A社のどの経験から導いた基準かを書かない答案。
  * 一般論: 与件に登場しない事業・技術・制度を持ち出して新事業を提案する答案。本問は事業の提案ではなく判断基準を問うている。

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### 第3問(20点)

設問文:A社の組織改編にはどのような目的があったか。100字以内で答えよ。

### 目的(設問要求の解釈)

* 組織構造の変更(何を変えたか)を踏まえ、目的(何のためか)を因果で説明できているか。
* 与件上、目的は複数(2〜3個)挙げた方が強い。

### 重みづけ(加点要素)


配点合計:**20点**

#### 要素1:製品別グループ化による市場変化対応の強化を示している… **+7**(最優先)
* **判定条件(論点)**
  * 技術専門別(機能別組織)の弱みを解消し、製品別編成によって市場変化への対応を迅速化・強化する目的を示していればよい。
  * 「製品別化」「事業部化」「3グループ化」「市場別化」等いずれの表現でも可。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **2点**:変更事実のみ。例「製品別にグループ化した為。」
  * **4点**:対応目的を示す。例「製品別化で各市場への対応強化。」/「製品別編成で顧客起点の意思決定を可能にする為。」
  * **7点**:目的が具体化。例「製品別編成で市場環境変化への対応を迅速化する為。」(約24字)/「3グループに分け市場・顧客起点の開発を実現する為。」

#### 要素2:混成チームによる専門知識融合・開発力向上を示している… **+7**(最優先)
* **判定条件(論点)**
  * 電子回路・精密機械・ソフトウェアの技術者をほぼ同数配置した混成チームにより、専門知識の融合で開発力を高める目的を示していればよい。
  * 「混成チーム」「技術融合」「シナジー」「横断チーム」等いずれの表現でも可。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **2点**:体制のみ。例「技術者を混成チームにした為。」
  * **4点**:シナジーまで触れている。例「混成チームで専門知識を融合する為。」/「異分野技術を統合し開発スピードを高める為。」
  * **7点**:強化内容が具体化。例「専門別混成チームで知識融合し開発力を高める為。」(約23字)/「技術者混成で分野横断のシナジーを引き出し開発を強化する為。」

#### 要素3:品質管理・生産技術の横串機能による効率化を示している… **+3**(次点)
* **判定条件(論点)**
  * マトリクスの機能別軸として品質管理・生産技術部門が横串配置され、機能的効率の確保と複数委託先の調整集約を図る目的を示していればよい。
  * 「横串」「共通機能」「マトリクス機能側」「委託先調整」等いずれの表現でも可。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**:体制のみ。例「品管・生技を置いた為。」
  * **2点**:役割を示している。例「品管・生技で委託先調整を担う為。」
  * **3点**:横串機能として整理。例「横串の品管・生技で委託調整を集約。」(約16字)/「機能横串で品質確保と委託先調整を効率化する為。」

#### 要素4:役員兼任によるガバナンス強化・意思決定迅速化を示している… **+3**(次点)
* **判定条件(論点)**
  * 役員が部門長を兼任することで、マトリクス特有の指揮系統曖昧化を緩和しガバナンスを強化し、意思決定を迅速化する目的を示していればよい。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**:事実のみ。例「役員が兼任した為。」
  * **2点**:目的へ落とす。例「役員兼任で意思決定を迅速化。」
  * **3点**:マトリクス統制まで示す。例「役員兼任で迅速化と統制を図る為。」(約16字)/「兼務でマトリクスの指揮系統曖昧化を緩和する為。」

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### 第3問補題(20点)

補題文:A社は従前、電子回路技術部門、精密機械技術部門、ソフトウェア技術部門と専門知識別に部門化されていた。編成替えの後もこの編成が持っていた利点を保つために、A社がとっている仕組みは何か。100字以内で述べよ。

### 目的


* 専門知識別の部門化(機能別の編成)が何のための形だったのかという1次の知識を、A社の部門名と配置の事実に当てはめられるかを見る。
* 新しい編成の狙いを並べる答案と、旧編成の利点が失われないようにどう手当てしているかまで言える答案を区別する。

### 重みづけ(20点)


#### 要素1:専門知識別の部門化の利点… **+8**

* **判定条件**
  * 同じ専門の技術者を一つの部門に集めることで、その技術を深め社内に蓄積できるという利点を示していること。
  * 「機能別組織」「専門化」等の用語は使っても使わなくてもよいが、用語だけで利点の中身を書かない答案は中間点までとする。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **2点**: 「機能別組織であった。」のように、編成の名前を言うだけ。
  * **5点**: 「専門性を高めやすい編成だった。」のように、利点を一般的な語で述べる。
  * **8点**: 「専門知識別の部門化には各技術を深め蓄積する利点がある。」のように、同じ専門を集めることと技術の深化・蓄積を結ぶ。

#### 要素2:混成チームでの手当て… **+8**

* **判定条件**
  * 製品開発部門の各グループに電子回路・精密機械・ソフトウェアの技術者をほぼ同数配置していることを挙げ、それが専門性を保ったまま知識を融合させる工夫であると示していること。
  * 体制の名前と「融合」の語だけで、どう配置しているかを書かない答案は中間点までとする。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **2点**: 「混成チームで専門知識を融合する。」のように、体制の名前と融合の語だけで、配置の中身を書かない。
  * **5点**: 「各グループに専門の異なる技術者を配置している。」のように、配置には触れるが、ほぼ同数である点も専門性が薄まらない点も書かない。
  * **8点**: 「各グループに三分野の技術者をほぼ同数配置する。」のように、配置の中身を書き、専門性を保ったまま融合させていることを示す。

#### 要素3:支援部門での手当て… **+4**

* **判定条件**
  * 品質管理部門と生産技術部門にも技術者を配属し、製品開発部門を横断して支援させていることを挙げていること。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**: 「品質管理部門と生産技術部門を置いた。」のように、部門の名前だけ。
  * **2点**: 「支援部門が開発を助けている。」のように、役割を一般的に述べる。
  * **4点**: 「品質管理部門と生産技術部門にも技術者を置いて支援させる。」のように、技術者を配属して横断的に支援させている点まで書く。

* **低評価にする答案の型**
  * 流用: 元設問の答え(組織改編の目的の列挙)をそのまま書いた答案。旧編成の利点とその保ち方を書いていないため、要素1には加点しない。
  * キーワード列挙: 「機能別組織」「事業部制」「マトリクス」「シナジー」といった語を並べるだけで、与件の部門名と配置に触れない答案。各要素は2点までとする。
  * 一般論: 組織論の教科書的な説明に終始し、A社がどの技術者をどこに置いたかに触れない答案。

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### 第4問(20点)

設問文:A社が、社員のチャレンジ精神や独創性を維持していくために、金銭的・物理的インセンティブの提供以外に、どのようなことに取り組むべきか。中小企業診断士として、100字以内で助言せよ。

### 目的(設問要求の解釈)

* 制約条件("金銭的・物理的インセンティブ以外")を守りつつ、
  チャレンジ精神・独創性の維持に効く施策を具体的に助言できているか。
* 切り口は「チャレンジ×独創性」でも「能力×モラール」でも可、施策は定番でOK。

### 重みづけ(加点要素)


配点合計:**20点**

#### 要素1:権限委譲・裁量拡大による挑戦機会創出を提示している… **+7**(最優先)
* **判定条件(論点)**
  * 研究開発テーマや方法における権限委譲・裁量拡大により、社員のチャレンジ精神を支える施策を示していればよい。
  * 「権限委譲」「裁量拡大」「自主性尊重」「自由度付与」等いずれの表現でも可。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **2点**:施策名のみ。例「権限委譲を行う。」
  * **4点**:対象が見える。例「研究開発テーマの裁量を広げる。」/「技術者に業務遂行の自由度を与える。」
  * **7点**:施策が具体化。例「研究テーマと進め方の裁量拡大で挑戦機会を増やす。」(約24字)/「技能に応じて重要業務を任せ個人の工夫で取り組ませる。」

#### 要素2:提案制度・失敗学習運用による独創性制度化を提示している… **+7**(最優先)
* **判定条件(論点)**
  * 提案制度やアイデア創出の仕組みに加え、失敗を学習として扱う運用まで含めて独創性の場を制度化する施策を示していればよい。
  * 提案制度・アイデア会議・失敗学習・心理的安全性確保・失敗の許容等、いずれの表現でも可。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **2点**:制度名のみ。例「提案制度を設ける。」
  * **4点**:挑戦の場として言える。例「提案制度でアイデア創出の場を作る。」/「失敗を許容する風土を作る。」
  * **7点**:運用面まで触れる。例「提案制度を整え失敗も学習とし独創の場を制度化する。」(約24字)/「アイデア提案と失敗学習を仕組み化し挑戦を継続的に支える。」

#### 要素3:研修・自己啓発支援による独創の土台づくりを提示している… **+3**(次点)
* **判定条件(論点)**
  * 研修や自己啓発支援を、能力開発と独創性の土台として位置付ける施策を示していればよい。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**:施策名のみ。例「研修を行う。」
  * **2点**:狙いがある。例「研修や自己啓発で能力を高める。」
  * **3点**:土台作りが示される。例「研修・自己啓発で独創の土台を作る。」(約17字)/「学習支援で長期的な専門性開発を図る。」

#### 要素4:適正配置・CDPによる成長実感支援を提示している… **+3**(次点)
* **判定条件(論点)**
  * 能力や希望に応じた配置、CDP、横断経験設計などで挑戦を続けやすくする施策を示していればよい。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**:施策名のみ。例「適正配置を行う。」
  * **2点**:狙いまで示す。例「配置とCDPで成長を促す。」
  * **3点**:長期視点が示される。例「適正配置とCDPで成長を支える。」(約16字)/「キャリアパス設計で長期的な挑戦環境を整える。」

### 第4問補題(20点)

補題文:A社長は、新規事業や製品の開発を後進に委ねることを検討している。委ねられる状態にするために、A社はどのようなことに取り組むべきか。100字以内で助言せよ。

### 目的


* 施策を助言する前に、いま誰が何を担っているのかを与件から特定し、その役割の移し先と移し方まで設計できるかを見る。
* 「権限委譲」「後継者育成」という一般的な言葉で済ませる答案と、A社長の役割の中身と移す相手を特定した答案を区別する。

### 重みづけ(20点)


#### 要素1:A社長に集中している役割の特定… **+8**

* **判定条件**
  * 時流を先読みして新規事業や製品の開発の方向を決めるという役割を、A社長が自ら先頭に立って担い続けていることを特定していること。
  * 「権限が集中している」という一般的な言い方だけでは足りず、何の役割かまで書かせる。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **2点**: 「A社長に権限が集中している。」のように、集中の事実だけで役割の中身を書かない。
  * **5点**: 「A社長が新規事業の開発を主導している。」のように、役割には触れるが、時流の先読みによる方向づけであることまで書かない。
  * **8点**: 「時流を先読みして新規事業や製品開発の方向を決める役割をA社長が先頭に立って担い続けている。」のように、役割の中身と担い手を書く。

#### 要素2:移す先と移し方… **+8**

* **判定条件**
  * 部門長を兼任する役員や製品開発部門の各グループに、開発テーマの選定や進め方の判断を任せ、経験を積ませることを示していること。
  * 移す先を与件の役職・単位で特定していない答案は中間点までとする。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **2点**: 「権限委譲を進める。」のように、施策名だけで移す先を書かない。
  * **5点**: 「役員や各グループに権限を委譲する。」のように、移す先は書くが、何を任せるのかを書かない。
  * **8点**: 「部門長を兼ねる役員や各グループに開発テーマの選定と進め方を任せて経験を積ませる。」のように、移す先と任せる中身を書く。

#### 要素3:移し方の留意… **+4**

* **判定条件**
  * 一度に移さず当面はA社長が伴走しながら段階的に移すこと、または任せた判断の結果を短期の成否だけで評価しないことを示していること。
* **部分点の目安(答案例)**
  * **1点**: 「時間をかけて進める。」のように、一般的な言い方にとどまる。
  * **2点**: 「後継者を育成する。」のように、育成には触れるが移し方を書かない。
  * **4点**: 「当面は社長が伴走し段階的に移す。」のように、移し方の段階を示す。

* **低評価にする答案の型**
  * 流用: 元設問の答え(チャレンジ精神・独創性を維持する人事施策の助言)を書いた答案。A社長の役割の特定が無いため、要素1には加点しない。
  * キーワード列挙: 「権限委譲」「後継者育成」「事業承継」といった語を並べるだけで、誰に何を任せるのかを書かない答案。各要素は2点までとする。
  * 一般論: 与件にない制度や外部からの人材登用を持ち出す答案。

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この記事を書いた人

30代会社員。
理系大学を卒業して以降、新卒からIT業界を渡り歩いてきました。
転職経験は2回。
 ・中小SIerにてプログラマー
 ・BtoB向けサービス事業会社にて社内開発SE
 ・大手総合コンサル会社にてテクノロジーコンサルタント(見習い)
といったキャリアを歩んでいます。

人生100年時代に向け日々精進!
知らない道を歩いたり走ったりするのが好きで、フルマラソン完走するくらいにはジョギングを続けています。

興味のあるトピック
 ・資格勉強
  (主な取得資格)
  ・中小企業診断士
  ・JDLA認定 G検定・E資格
  ・情報処理技術者試験 応用情報処理技術者、ITストラテジスト他複数
 ・競技系プログラミング(Atcoder、kaggle等も含む)
 ・データサイエンス、AI関連の話題
 ・クイズ、謎解き系
 ・読書、映画
 ・ボードゲーム全般(将棋アマチュア2段程度。専ら”見る将”)

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