- 記録内容:
- すべての例外承認申請と承認結果(承認/却下)を詳細に記録します。
- 申請日時、申請者、承認者、承認日時といった時系列情報を明確にします。
- 申請内容の詳細(値引き額、納期短縮日数、理由、関連する製品・顧客情報)も漏れなく記録されるべきです。
- 品質事故発生時の関連情報(原因、影響、対策)は、例外承認との関連性を分析するために重要です。
- KPIの各数値の履歴と、その入力者・変更者情報も合わせて記録することで、データガバナンスを強化します。
- 監査者と目的:
- 定期監査(内部監査部門または財務部門の一部が兼任):週次または月次で例外承認の傾向、却下された案件とその理由、品質事故との関連性などを分析します。目的は、ルールの遵守状況を確認し、プロセスの改善点や不正の兆候を早期に発見することにあるでしょう。
- 経営層:四半期に一度など、より長期的な視点で監査ログのサマリーを確認し、全社的な戦略調整やリスク管理の判断材料とします。
監査ログは、単に記録として残すだけでなく、定期的にレビューし、その結果をフィードバックすることで、プロセスの透明性を高め、組織全体の学習と継続的な改善を促進する重要なツールとなります。
レビュー会議を運用する:部門間連携と戦略調整を実効性のあるものにする方法
KPIセットの進捗確認、例外承認プロセスの有効性評価、そして部門間の調整を行うためには、定例のレビュー会議が不可欠であると言えるでしょう。
これにより、各部門が共通の目標に向かって連携し、迅速かつ適切な意思決定を行うことが可能になります。
- 会議の種類と頻度:
- 月次部門間連携会議:各部門のキーパーソン(営業部長、生産部長、品質管理部長、財務担当者など)が参加し、月次のKPI進捗、特に部門間の連携が求められる指標(例:納期遵守率、粗利益率、クレーム発生数)について議論します。この会議では、各部門の課題を共有し、短期的な調整や改善策を「誰が(どの部門が)何をするか」まで具体的に決定することが求められるでしょう。
- 四半期経営戦略レビュー会議:経営層(社長、各事業部長、CFOなど)が参加し、全社的な戦略目標に対するKPIの進捗、主要な例外承認案件の傾向、品質事故の再発防止策、財務状況などをレビューします。ここでは、必要に応じて戦略の軌道修正や、部門横断的な新たな施策の導入を「誰が何を決めるか」が議論され、最終的な意思決定がなされる場となるでしょう。
- 議題:
- KPIダッシュボードの確認と目標に対する進捗状況を共有します。
- 例外承認案件の報告と分析(件数、内容、承認理由、却下理由、関連する影響)を行います。
- 品質事故発生時の原因分析と対策の進捗状況について深く議論します。
- 顧客フィードバックや市場動向の共有を通じて、外部環境の変化を把握します。
- 各部門からの課題報告と連携が必要な事項を明確にします。
- 意思決定の権限:
- 月次会議:部門間の調整事項や短期的な運用改善に関する決定権は、参加する各部門長に与えられます。合意形成できない場合は、上級会議へエスカレーションされる場合があります。
- 四半期会議:戦略目標の調整、大規模な投資、組織構造の変更など、企業全体に影響を及ぼす決定は、経営層が行うことになります。
これらのレビュー会議を通じて、KPIの数値だけにとらわれず、その背景にある組織行動や市場環境の変化を総合的に評価し、持続的な改善と戦略の柔軟な調整を可能にすることが期待されます。
KPIを戦略的ツールに変える:持続的成長のための設計と運用の要点
今回は、営業KPIの強化が値引きと無理な納期約束、さらには品質事故を引き起こしたケースを例に、戦略制御系としてのKPIセットの再設計と、それを支える運用の具体化について考察しました。
KPIは単なる評価指標ではなく、組織の行動を強力に誘導し、企業全体のパフォーマンスに大きな影響を与えるツールであると認識すべきでしょう。
そのため、短期的な視点や部門最適に陥ることなく、企業の戦略目標と整合した部門横断的なKPIセットを設計することが極めて重要であると言えるでしょう。
そして、そのKPIを実効性のあるものとするためには、例外承認プロセスによる逸脱の適切な管理、監査ログによる透明性の確保と学習、そしてレビュー会議を通じた部門間の連携と継続的な意思決定が不可欠です。
これらの要素が有機的に連携することで、企業は意図せざる副作用を抑制しつつ、持続的な成長と発展を実現していくことが可能になるものと考えられます。
戦略は生きたものであり、一度設定したら終わりではありません。
常に環境の変化に対応し、KPIと運用を改善し続ける「学習する組織」こそが、競争優位を築く鍵となるでしょう。
- 対象:規定以上の値引き、標準納期を下回る納期設定、特別な製品仕様変更など、事業に影響を及ぼす可能性のあるあらゆる例外事項が該当します。
- 申請者:顧客からの要望を受け、例外承認の必要性を認識した営業担当者が申請を行います。
- 承認ルートと責任:
- 第一次承認(営業部長):顧客との関係性、競合状況、営業戦略上の必要性などを評価します。粗利益率への影響を考慮し、承認可否を判断する権限が与えられるべきでしょう。
- 第二次承認(生産部長):納期短縮の可否、生産ラインへの影響、追加コスト、品質リスクなどを評価します。生産計画への具体的な影響を考慮し、承認可否を判断する権限が与えられるべきです。
- 最終承認(経営層または事業部長):第一次・第二次承認を経てもなお、全社的な戦略目標達成に資すると判断される場合、最終的な承認を行います。特に品質事故リスクや財務への影響が大きい案件では、経営層が責任を持って決めるべきと言えるでしょう。
- 承認基準:例外承認に際しては、申請書に以下の情報を明記し、承認者が客観的に判断できる基準を設定すべきです。
- 具体的な例外内容とその理由
- 収益への影響(粗利益率、売上高)
- 生産・品質への影響(納期、品質リスク、追加コスト)
- 代替案の検討状況
- 承認されなかった場合の顧客への影響
このプロセスを通じて、営業部門が安易な値引きや納期約束に走ることを抑制し、部門間の連携と共通認識の下で最適な意思決定が行われることが期待されます。
監査ログを活用する:プロセスの透明性を高め、継続的な改善を促進する
例外承認プロセスが正しく運用されていることを確認し、問題発生時の原因究明や将来の改善に役立てるために、監査ログの記録とレビューは不可欠であると言えるでしょう。
- 記録内容:
- すべての例外承認申請と承認結果(承認/却下)を詳細に記録します。
- 申請日時、申請者、承認者、承認日時といった時系列情報を明確にします。
- 申請内容の詳細(値引き額、納期短縮日数、理由、関連する製品・顧客情報)も漏れなく記録されるべきです。
- 品質事故発生時の関連情報(原因、影響、対策)は、例外承認との関連性を分析するために重要です。
- KPIの各数値の履歴と、その入力者・変更者情報も合わせて記録することで、データガバナンスを強化します。
- 監査者と目的:
- 定期監査(内部監査部門または財務部門の一部が兼任):週次または月次で例外承認の傾向、却下された案件とその理由、品質事故との関連性などを分析します。目的は、ルールの遵守状況を確認し、プロセスの改善点や不正の兆候を早期に発見することにあるでしょう。
- 経営層:四半期に一度など、より長期的な視点で監査ログのサマリーを確認し、全社的な戦略調整やリスク管理の判断材料とします。
監査ログは、単に記録として残すだけでなく、定期的にレビューし、その結果をフィードバックすることで、プロセスの透明性を高め、組織全体の学習と継続的な改善を促進する重要なツールとなります。
レビュー会議を運用する:部門間連携と戦略調整を実効性のあるものにする方法
KPIセットの進捗確認、例外承認プロセスの有効性評価、そして部門間の調整を行うためには、定例のレビュー会議が不可欠であると言えるでしょう。
これにより、各部門が共通の目標に向かって連携し、迅速かつ適切な意思決定を行うことが可能になります。
- 会議の種類と頻度:
- 月次部門間連携会議:各部門のキーパーソン(営業部長、生産部長、品質管理部長、財務担当者など)が参加し、月次のKPI進捗、特に部門間の連携が求められる指標(例:納期遵守率、粗利益率、クレーム発生数)について議論します。この会議では、各部門の課題を共有し、短期的な調整や改善策を「誰が(どの部門が)何をするか」まで具体的に決定することが求められるでしょう。
- 四半期経営戦略レビュー会議:経営層(社長、各事業部長、CFOなど)が参加し、全社的な戦略目標に対するKPIの進捗、主要な例外承認案件の傾向、品質事故の再発防止策、財務状況などをレビューします。ここでは、必要に応じて戦略の軌道修正や、部門横断的な新たな施策の導入を「誰が何を決めるか」が議論され、最終的な意思決定がなされる場となるでしょう。
- 議題:
- KPIダッシュボードの確認と目標に対する進捗状況を共有します。
- 例外承認案件の報告と分析(件数、内容、承認理由、却下理由、関連する影響)を行います。
- 品質事故発生時の原因分析と対策の進捗状況について深く議論します。
- 顧客フィードバックや市場動向の共有を通じて、外部環境の変化を把握します。
- 各部門からの課題報告と連携が必要な事項を明確にします。
- 意思決定の権限:
- 月次会議:部門間の調整事項や短期的な運用改善に関する決定権は、参加する各部門長に与えられます。合意形成できない場合は、上級会議へエスカレーションされる場合があります。
- 四半期会議:戦略目標の調整、大規模な投資、組織構造の変更など、企業全体に影響を及ぼす決定は、経営層が行うことになります。
これらのレビュー会議を通じて、KPIの数値だけにとらわれず、その背景にある組織行動や市場環境の変化を総合的に評価し、持続的な改善と戦略の柔軟な調整を可能にすることが期待されます。
KPIを戦略的ツールに変える:持続的成長のための設計と運用の要点
今回は、営業KPIの強化が値引きと無理な納期約束、さらには品質事故を引き起こしたケースを例に、戦略制御系としてのKPIセットの再設計と、それを支える運用の具体化について考察しました。
KPIは単なる評価指標ではなく、組織の行動を強力に誘導し、企業全体のパフォーマンスに大きな影響を与えるツールであると認識すべきでしょう。
そのため、短期的な視点や部門最適に陥ることなく、企業の戦略目標と整合した部門横断的なKPIセットを設計することが極めて重要であると言えるでしょう。
そして、そのKPIを実効性のあるものとするためには、例外承認プロセスによる逸脱の適切な管理、監査ログによる透明性の確保と学習、そしてレビュー会議を通じた部門間の連携と継続的な意思決定が不可欠です。
これらの要素が有機的に連携することで、企業は意図せざる副作用を抑制しつつ、持続的な成長と発展を実現していくことが可能になるものと考えられます。
戦略は生きたものであり、一度設定したら終わりではありません。
常に環境の変化に対応し、KPIと運用を改善し続ける「学習する組織」こそが、競争優位を築く鍵となるでしょう。
こんにちは。ろっさんです。
企業の戦略実行において、KPI(重要業績評価指標)は目標達成を加速させる強力なツールとなるでしょう。
しかし、その設計や運用を誤ると、KPIは思わぬ副作用を引き起こし、かえって組織の目標達成を阻害してしまう可能性もあります。
実際に「営業KPIを強化したら、値引きや無理な納期約束が増え、結果として品質事故が発生した」という、多くの企業で起こりうる課題に直面したケースを題材に、本記事では戦略制御系としてのKPIセットの再設計と、それを支える運用の具体化について深く掘り下げていきます。
この課題を解決するため、以下の3つの要素を段階的に解説します。
- まず、KPIが引き起こす「意図せざる結果」のメカニズムを現象として捉え、その本質を理解します。
- 次に、営業・生産・品質・財務の各部門を横断するKPIセットを再設計する具体的なアプローチを提示します。
- 最後に、設計したKPIを実効性のあるものとするための「例外承認」「監査ログ」「レビュー会議」といった運用の具体化、特に「誰が何を決めるか」に焦点を当てて整理します。
KPIが目標達成を阻害するメカニズム:陥りがちな「意図せざる結果」を解明する
まず、今回の問いが示す状況を改めて深く考えてみましょう。
「営業KPIを強化したら値引きと無理な納期約束が増え、品質事故が起きた」という現象は、多くの企業で陥りがちな、KPI運用上の典型的な課題の一つです。
この状況は、本来「計測すべき指標」であったKPIが「達成すべき目標」へと位置づけが変質し、その達成が組織内の行動を過度に駆動してしまった結果として現れるものと言えるかもしれません。
営業担当者は、与えられたKPI(例えば「売上目標達成率」)を達成するために、顧客からの要望に対して柔軟すぎる対応を取るようになる傾向が見られます。
具体的には、本来は避けるべき値引き交渉に応じたり、実現が困難な納期を約束したりといった行動が増加することが想定されます。
これは短期的な売上には貢献する可能性がありますが、結果として製品の粗利率を圧迫し、生産部門には過度な負担をかけることにもつながるでしょう。
無理な納期での生産は、製造プロセスの手抜きや品質チェックの省略を誘発し、最終的には品質事故として顕在化する可能性が高まります。
そして、品質事故は顧客からの信頼を損ない、長期的な売上やブランド価値に悪影響を及ぼすばかりか、リコールや補償といった追加的な財務コストも発生させることになりかねません。
このように、一つの部門のKPIを単独で強化することは、他の部門に予期せぬ負荷をかけ、最終的には企業全体の目標達成を遠ざけてしまう可能性があるのです。
KPIは組織全体のシステムの一部として機能するため、その設計と運用には全体最適の視点が不可欠であると言えるでしょう。
部分最適を脱却する:戦略目標と部門横断KPIで企業成長を加速させる方法
このような状況を是正するためには、まず企業の戦略目標を明確にし、その目標達成に貢献する部門横断的なKPIセットを設計することが不可欠であると言えるでしょう。
各部門がそれぞれ独立したKPIを追求する「部分最適」ではなく、企業全体としての「全体最適」を目指す視点が強く求められます。
ここでは、問題に直面している架空のB社を例に、具体的なKPIセットの再設計を考えてみましょう。
B社は、高付加価値製品の製造販売を手掛ける中堅メーカーです。市場での競争が激化する中、短期的な売上拡大を目指して営業部門の売上高達成率を重点KPIとして設定しました。
しかし、その結果として前述の通り、値引き販売の増加、無理な納期による生産ラインの混乱、そして品質事故の頻発という事態に陥っています。
このB社が、短期的な売上高の追求から一歩踏み込み、「顧客からの信頼に基づく長期的な利益成長」と「高品質な製品提供によるブランド価値向上」を新たな戦略目標として再定義したと仮定します。
この戦略目標に基づき、各部門に以下のようなKPIセットが考えられるでしょう。
営業部門のKPIを再設計する:短期的な売上を超えた指標設定
- 売上高(絶対額):目標として設定されますが、単独で評価されることは避け、他の指標と組み合わせて評価されるべきです。
- 粗利益率:値引き販売の抑制と、高付加価値製品の販売を促進する重要な指標となります。
- 新規顧客獲得数:持続的な事業成長のための源泉であり、未来への投資を示す指標です。
- 既存顧客維持率:顧客満足度と長期的な関係性を重視し、ストック型の収益基盤を評価する指標と言えます。
- 納期遵守率(顧客側からの評価):無理な納期約束を抑制し、顧客への信頼を確保するために営業部門が責任を持つべき指標です。
- 品質クレーム発生数(営業部門経由):顧客からの品質に関する声に真摯に対応し、その情報を適切に社内にフィードバックする姿勢を促します。
生産部門のKPIを再設計する:品質と効率の両立を目指す指標
- 生産計画達成率:無理のない生産計画の立案と実行を促し、サプライチェーン全体の安定化に貢献します。
- 歩留まり率:原材料の無駄削減と製造プロセスの品質安定化を目指す、効率性を示す指標です。
- 納期遵守率(生産から出荷):営業部門の納期約束が無理でないかをチェックし、生産能力との整合性を保つ役割も持ちます。
- 品質コスト(不良品発生による再加工費、廃棄ロス):品質問題による直接的な損失を可視化し、改善活動の必要性を示します。
- 労働災害発生率:安全な職場環境の維持は、従業員のモチベーション維持と長期的な生産性向上に繋がると考えられます。
品質部門のKPIを再設計する:顧客信頼を高めるための指標
- 製品クレーム発生率:品質問題の根本原因追及と再発防止の徹底を促す、最も重要な指標の一つです。
- 顧客満足度(品質項目):製品の品質が顧客にどのように評価されているかを直接的に測り、改善点を見出すための貴重な情報源となります。
- 不良品率(出荷前):最終出荷段階での品質担保を強化し、市場への不良品流出リスクを低減します。
- 品質監査指摘事項改善完了率:品質マネジメントシステムの有効性を評価し、継続的な改善サイクルが機能しているかを確認します。
財務部門のKPIを再設計する:収益性と健全性を管理する指標
- 営業利益率:粗利益率と販管費のバランスを評価し、企業全体の収益性を総合的に測る指標です。
- フリーキャッシュフロー:企業の資金創出力と健全性を評価し、将来の投資余力を示す重要な指標と言えるでしょう。
- 売掛金回収期間:営業部門の債権管理状況を間接的に評価し、資金繰りの安定化に寄与します。
- 製品別・顧客別収益性:値引き販売の影響を具体的に把握し、営業戦略や製品ポートフォリオの調整に役立つ分析指標です。
このように各部門のKPIを相互に関連づけることで、例えば「営業部門が無理な値引きをすれば粗利益率が下がり、それが財務部門の営業利益率に悪影響を及ぼす」といったトレードオフが可視化されるでしょう。
また、「無理な納期で受注すれば生産部門の納期遵守率や歩留まり率が悪化し、品質部門のクレーム発生率に繋がり、ひいては財務部門の品質コストを増加させる」といった一連の連鎖も明確になります。
これらのKPIは、単独で評価されるのではなく、常に他のKPIとの関連性の中で解釈され、部門間で連携しながら全体最適を目指して最適化されるべきものとして機能することが期待されます。
KPIを機能させる統治メカニズム:例外承認・監査ログ・レビュー会議で「誰が何を決めるか」を明確にする
優れたKPIセットを設計したとしても、それを適切に機能させるための「運用」がなければ、再び意図せざる結果を招く可能性が残ります。
特に、今回の問題のように「値引き」や「無理な納期約束」といった例外的な状況が発生した際に、組織がどのように統治され、意思決定が行われるのかを具体化することが極めて重要です。
ここでは、「例外承認」「監査ログ」「レビュー会議」の3つの要素に焦点を当て、それぞれ「誰が何を決めるか」を明確にし、KPI運用を実効性のあるものにするための仕組みを整理していきます。
例外承認プロセスを設計する:安易な逸脱を防ぎ、最適な意思決定を促す仕組み
値引きや納期短縮といった通常の運用から逸脱する要求に対しては、明確な承認プロセスを設けるべきです。
これにより、部門間の調整を促し、安易な例外対応によるリスクを未然に防ぐことが期待されます。
- 対象:規定以上の値引き、標準納期を下回る納期設定、特別な製品仕様変更など、事業に影響を及ぼす可能性のあるあらゆる例外事項が該当します。
- 申請者:顧客からの要望を受け、例外承認の必要性を認識した営業担当者が申請を行います。
- 承認ルートと責任:
- 第一次承認(営業部長):顧客との関係性、競合状況、営業戦略上の必要性などを評価します。粗利益率への影響を考慮し、承認可否を判断する権限が与えられるべきでしょう。
- 第二次承認(生産部長):納期短縮の可否、生産ラインへの影響、追加コスト、品質リスクなどを評価します。生産計画への具体的な影響を考慮し、承認可否を判断する権限が与えられるべきです。
- 最終承認(経営層または事業部長):第一次・第二次承認を経てもなお、全社的な戦略目標達成に資すると判断される場合、最終的な承認を行います。特に品質事故リスクや財務への影響が大きい案件では、経営層が責任を持って決めるべきと言えるでしょう。
- 承認基準:例外承認に際しては、申請書に以下の情報を明記し、承認者が客観的に判断できる基準を設定すべきです。
- 具体的な例外内容とその理由
- 収益への影響(粗利益率、売上高)
- 生産・品質への影響(納期、品質リスク、追加コスト)
- 代替案の検討状況
- 承認されなかった場合の顧客への影響
このプロセスを通じて、営業部門が安易な値引きや納期約束に走ることを抑制し、部門間の連携と共通認識の下で最適な意思決定が行われることが期待されます。
監査ログを活用する:プロセスの透明性を高め、継続的な改善を促進する
例外承認プロセスが正しく運用されていることを確認し、問題発生時の原因究明や将来の改善に役立てるために、監査ログの記録とレビューは不可欠であると言えるでしょう。
- 記録内容:
- すべての例外承認申請と承認結果(承認/却下)を詳細に記録します。
- 申請日時、申請者、承認者、承認日時といった時系列情報を明確にします。
- 申請内容の詳細(値引き額、納期短縮日数、理由、関連する製品・顧客情報)も漏れなく記録されるべきです。
- 品質事故発生時の関連情報(原因、影響、対策)は、例外承認との関連性を分析するために重要です。
- KPIの各数値の履歴と、その入力者・変更者情報も合わせて記録することで、データガバナンスを強化します。
- 監査者と目的:
- 定期監査(内部監査部門または財務部門の一部が兼任):週次または月次で例外承認の傾向、却下された案件とその理由、品質事故との関連性などを分析します。目的は、ルールの遵守状況を確認し、プロセスの改善点や不正の兆候を早期に発見することにあるでしょう。
- 経営層:四半期に一度など、より長期的な視点で監査ログのサマリーを確認し、全社的な戦略調整やリスク管理の判断材料とします。
監査ログは、単に記録として残すだけでなく、定期的にレビューし、その結果をフィードバックすることで、プロセスの透明性を高め、組織全体の学習と継続的な改善を促進する重要なツールとなります。
レビュー会議を運用する:部門間連携と戦略調整を実効性のあるものにする方法
KPIセットの進捗確認、例外承認プロセスの有効性評価、そして部門間の調整を行うためには、定例のレビュー会議が不可欠であると言えるでしょう。
これにより、各部門が共通の目標に向かって連携し、迅速かつ適切な意思決定を行うことが可能になります。
- 会議の種類と頻度:
- 月次部門間連携会議:各部門のキーパーソン(営業部長、生産部長、品質管理部長、財務担当者など)が参加し、月次のKPI進捗、特に部門間の連携が求められる指標(例:納期遵守率、粗利益率、クレーム発生数)について議論します。この会議では、各部門の課題を共有し、短期的な調整や改善策を「誰が(どの部門が)何をするか」まで具体的に決定することが求められるでしょう。
- 四半期経営戦略レビュー会議:経営層(社長、各事業部長、CFOなど)が参加し、全社的な戦略目標に対するKPIの進捗、主要な例外承認案件の傾向、品質事故の再発防止策、財務状況などをレビューします。ここでは、必要に応じて戦略の軌道修正や、部門横断的な新たな施策の導入を「誰が何を決めるか」が議論され、最終的な意思決定がなされる場となるでしょう。
- 議題:
- KPIダッシュボードの確認と目標に対する進捗状況を共有します。
- 例外承認案件の報告と分析(件数、内容、承認理由、却下理由、関連する影響)を行います。
- 品質事故発生時の原因分析と対策の進捗状況について深く議論します。
- 顧客フィードバックや市場動向の共有を通じて、外部環境の変化を把握します。
- 各部門からの課題報告と連携が必要な事項を明確にします。
- 意思決定の権限:
- 月次会議:部門間の調整事項や短期的な運用改善に関する決定権は、参加する各部門長に与えられます。合意形成できない場合は、上級会議へエスカレーションされる場合があります。
- 四半期会議:戦略目標の調整、大規模な投資、組織構造の変更など、企業全体に影響を及ぼす決定は、経営層が行うことになります。
これらのレビュー会議を通じて、KPIの数値だけにとらわれず、その背景にある組織行動や市場環境の変化を総合的に評価し、持続的な改善と戦略の柔軟な調整を可能にすることが期待されます。
KPIを戦略的ツールに変える:持続的成長のための設計と運用の要点
今回は、営業KPIの強化が値引きと無理な納期約束、さらには品質事故を引き起こしたケースを例に、戦略制御系としてのKPIセットの再設計と、それを支える運用の具体化について考察しました。
KPIは単なる評価指標ではなく、組織の行動を強力に誘導し、企業全体のパフォーマンスに大きな影響を与えるツールであると認識すべきでしょう。
そのため、短期的な視点や部門最適に陥ることなく、企業の戦略目標と整合した部門横断的なKPIセットを設計することが極めて重要であると言えるでしょう。
そして、そのKPIを実効性のあるものとするためには、例外承認プロセスによる逸脱の適切な管理、監査ログによる透明性の確保と学習、そしてレビュー会議を通じた部門間の連携と継続的な意思決定が不可欠です。
これらの要素が有機的に連携することで、企業は意図せざる副作用を抑制しつつ、持続的な成長と発展を実現していくことが可能になるものと考えられます。
戦略は生きたものであり、一度設定したら終わりではありません。
常に環境の変化に対応し、KPIと運用を改善し続ける「学習する組織」こそが、競争優位を築く鍵となるでしょう。
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